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自由進度学習への歩み③【3学期実践&今年度のふりかえり】

はじめに

この記事は前回の記事「自由進度学習への歩み②」の続きです。
まだ前回の記事を読んでいない方は、そちらから読むことをおすすめします。

さて、3学期が終わり、春休みを迎えました。
修了式の日に流した思い出ムービーの挿入歌として使用した、かりゆし58の『オワリはじまり』の曲に「もうすぐ今日が終わる」「またすぐに明日に変わる」という歌詞がありますが、またすぐに新年度がやってきます。

短い春休みの間に次年度の準備を進めることはもちろんですが、今年度の実践をしっかりと分析し、自分自身の課題を洗い出しておきたいと思います。

まずは、3学期最後の単元である「角柱と円柱」で、何を意識して、どのような流れで行ったのか、これまでと変更した部分はどこかということについて記述していきます。

そして、その単元を終えて、今年度の取り組みを振り返って、今の自分が直面している課題と向き合います。それこそが、来年度に繋げるべき成長の種です。

グラグラの基礎の上に家を建てることができないのと同じように、頭の中だけでフワフワっと分析をしても、学びを積み上げることはできません。文字に起こして、内言を外言として抽出し、情報として整理するからこそ、その上に次の学びを積み上げていくことができるのです。



1.5年生最後の単元 「角柱と円柱」

5年生の算数最後の単元は、「角柱と円柱」です。
ここでの実践で、これまでと大きく変更した点は、下の2つです。

この2つを中心に話をしていきます。

・自作の授業動画
・一斉授業の完全な廃止

1-1.課題意識

前回の記事(自由進度学習への歩み②「三角形や四角形の面積」)では、eboardを活用することにより、準備時間を削減し、実践を持続可能な形に近付けることができたということを話していました。

しかし、その次の単元「正多角形と円」の中で、
・教科書と完全にリンクしない
・結局、授業前半10分で一斉授業の時間が発生してしまう
という2点において、本単元における知識伝達のメイン手段として据えるのをやめ、予習や復習のために活用するという位置付けにしました。

※eboard自体は素晴らしい教材で、公教育においても家庭教育においても活用していく価値はおおいにあります。

現在行っている授業において、あくまで主たる教材は教科書であることから、基本の学習スタイルとして、「教科書を自分で進めていく」という形を変えるつもりはありません。

その補助(知識伝達)の手段として、eboardと授業前半の10分の一斉授業がありました。

しかし、eboardで説明される内容と、授業前半10分の一斉授業で説明する内容は被っている部分もたくさんあります。

そのため、子ども達の中では「eboardで学習できるから話を聞かなくても問題ない」「授業前半10分の一斉授業で理解できているからeboardを見なくても問題ない」というような意識が芽生えているようにも感じました。

本当にそう思っていたかはわかりませんが、このように感じるのも当然で、理解できているのならeboardを見る必要はないし、教科書と動画という教材で十分理解できる子どもにとっては、10分間の一斉授業を受ける意味はありません。

子ども達に問題があるのではなく、仕組みに問題があります。


1-2.実践の具体

以上の課題意識から、まず授業前半の一斉授業は完全に廃止しました。

今までは、

①一斉授業(10分程度)
②個別学習(30分程度)
③ふりかえり(5分程度)

というような流れでした。これを

①個別学習(35分)
②確認問題(5分)
③ふりかえり(5分)

という流れに変えました。

一斉授業だろうが、個別学習だろうが、教師として「教えるべきこと」は確実に存在します。では、後半の流れの中で、どのように「教える」を担保しているのか。

それが自作の授業動画の活用です。
しかし、【自由進度学習への歩み①】で紹介していた動画の作り方、共有の仕方とは方法を大きく変えています。

【自由進度学習への歩み①】では、授業前半10分で一斉授業したものを、前で撮影しておき、それをその場でTeamsにアップするというもので、今思えば、めちゃくちゃ効率が悪かったなと感じています。それに、この方法では「一斉授業をなくす」ということができません。

今回の授業動画作成、共有の方法は以下のような手順で行っています。

【作成方法】
①iPadのGoodNotesに保存している教科書を開く。
②画面収録(音声あり)を開始する。
③喋りながら、必要事項をApple Pencilで書き込む。

【共有方法】
①動画を圧縮する(軽い方が見やすいかなと思って)
②YouTubeにアップする(限定公開)
③YouTubeリンクを学習計画表に貼り付ける

文字にすると大変なように感じますが、自分の中では、教科書への書き込みも画面収録もYouTubeへのアップも、大変な作業ではないので、これまで行っていた方法と比べると作業量への負担感はかなり軽減されています。

その上、既存の動画を使わずに、教科書に直接書き込みながら説明を行っているので、子ども達が「わからない」と感じた時の直接的な手助けとなります。

※教科書を用いているので、note上で動画を共有することはできません。


1-3.学習の大まかな流れ

※動画は教科書に直接書き込むという形のため、共有することはできません。

学習計画表も徐々にシンプルな形になってきました。
なんなら、「計画表」というよりも、学習の全体像を把握するための「説明書」という役割が色濃くなってきました。

今回の単元も学習の大まかな流れは変わりません。
この学習計画表をもとに、自分のペースで学習を進めていきます。

基本的には毎日ノートをチェックするので、各ステップごとに細かく締め切りは設けています。計算ドリルも、宿題としてではなく自分のペースで進める代わりに、進度が遅れている場合は、家庭で行い、締切日までにノートを提出する必要はあります。

そして、全ステップを終えたら、課題選択という形で、自分自身の課題にあった学習を進めていくという形に変わります。
※これの詳細ついては、前回の記事「自由進度学習への歩み②」で記載しています。


2.今年度の実践を振り返って

2−1.今年度の課題意識

さて、今回の記事で本当に書きたいのはここからです。
今年度、本腰を入れて、自分自身の授業のあり方を根本から見直していきました。

山口裕也氏が2021年1月に出版された書籍『教育は変えられる』の中に、

" 授業改善から学びの構造転換へ "

という言葉が出てきます。
この書籍を読んでいた3年前は、自分の中で公教育や授業のあり方に疑問を抱いていた時期でした。しかし、教育委員会の指導主事になり、現場を離れる時期でもあったので、現場の教員として、具体的な行動に移していくまでに随分と時間が経ってしまいました。

教育委員会の指導主事、また現場に戻ってから加配教員という立場を経験することで、より広い視野から公教育や授業について考えることができたので、この時間も無駄ではなかったなと思っています。

1年前のInstagramでこんな投稿をしました。

これが、1年前の自分が立てた目標です。1年前の現在地です。

これまでにも様々な研究会に足を運び、授業づくりについて学んできました。しかし、どんな授業を参観しても、その場にいる「全員」が、目指すべき本時のゴールに到達していないのではないかというのが、自分の中での根本的な疑問でした。

板書について、発問について、授業展開について、どの授業も工夫・改善されている部分はたくさんあり、学ぶべきことはたくさんあります。自分の授業とは比べ物にならないほど子ども達の手が挙がっていると感じることも多々あります。しかし、「全ての子ども」ではない。

盛り上がってるように見ても、それは「一部」の子どもなのです。

そんな課題意識から、上記のような目標を立て、授業改善ではなく、学びの構造を転換していきました。一授業の成否を見るのではなく、一人ひとりの子どもにしっかりと目を向けていくことにしました。


2−2.自由進度学習の一側面

そのための手段として、「自由進度学習」という方法を選びました。GIGAや中教審答申「令和の日本型学校教育..」以降、実践や考え方が広がり、自分で実践を行う際のヒントになる情報も増えてきました。

※具体的な実践は、これまでのnote「自由進度学習への歩み①〜③」で記載しています。

今年度力を入れたところを一言で表すならば、「環境整備」です。
今まで一斉授業しかしたことがなかったものを、根本から変えていくため、不安しかありません。子どもは学習内容を理解できるのか、子どもに主導権を委ねてグダグダにならないか、と..

「自由なペースで学んでいいよ」というだけでは、単なる放任です。それで自分で学びを進められるなら苦労はしません。

そのため、子どもが自分で学びを進められる環境(仕組み)を整えることが重要になってきます。この環境整備をもう少し具体化すると、

・知識伝達手段の確保 →  授業動画
・文脈情報の開示 → 学習計画表
・自己選択できる教材の充実 → クラウド共有&Webドリル
・学習の進捗把握  →  Numbersのチェック表

というようなイメージです。
それぞれの詳細はこれまでに、説明してきているので省略しますが、これら最低限の環境が整っていないと、学習は成立しません。

ただ、これも実践しながら気付いたことです。最初は知識伝達手段についても、「授業前半10分で」ぐらいにしか考えておらず、子ども達からの「質問ラッシュ」で手に負えないというような失敗もありました…

文脈情報の開示についても、学習計画表の形を細かく変えながら、よりよい方法を模索してきました。

ひたすらトライ&エラーを繰り返す中で、自分の中で自由進度学習に必要な環境を具体化していくことができました。


2-3.もう一つの側面

こうしたトライ&エラーを繰り返し、環境整備という側面については、かなりクリアになってきました。

しかし、それと同時に、新たな課題も見えてきました。

それが、「学び方」です。

環境整備という側面のみをこれ以上考えても、前に進むことはできません。
環境の整備は、あくまで子ども達が自分の課題に沿って、自分のペースで学びを進められる環境を整えただけ。

その環境の中で、どのように学べばよいのかという「学び方」については、まだまだ自信を持って教えられたと言うことができません。

ゴール型の学習をするために、サッカーのコートを作り、ルールの説明はしました。いきなり公式ルールと同じ環境でサッカーをするのは難しいので、グリッドサッカーにしたり、ラインサッカーにしたり、環境面での工夫・改善を試みました。

しかし、パスの仕方やドリブルの仕方、試合でのゴールの奪い方を教えていないのと同じです。


2-4.次年度の目標

今年度、本気で実践して、改善のサイクルを何周も何周も回し続けてきたからこそ、次年度に向けた新たな課題が見えてきました。

これは、本を読んで「これが大切なのか」「自分もやってみよう」という浅いものではなく、理論と実践を往還する中で得た、本物の課題意識です。

次年度は、自由という環境を生かして、よりよく学びを進めていくための「学び方」を子ども達が獲得できることが目標です。

それが、1年前に立てた「履修から修得へ」という目標にも繋がっていきます。ずっと考えている、公教育や授業のあり方を根本から見直すことにも繋がります。


まとめ

自由進度学習という言葉自体は広がってきたのではないかなと思います。
しかし、自由進度学習という方法を含む、「子ども主体の学習」へと、学びの在り方を根本から転換していっている人は、まだ、かなり限られているのではないでしょうか。

※ここで言う「子ども主体」とは、教師中心の一斉授業の中に、ペアトークやグループ活動で、子どもが活動する時間を組み込むような部分的なものではなく、一時間や単元、カリキュラムを通して、子どもが自分の課題に沿って、自分のペースで学んでいく方法を指しています。

これから「自由進度に挑戦したい」「自分の授業を変えていきたい」と思ってこの記事を読んでくれている人に伝えたいことは、本気でやるということです。

ネットで情報を得ようとすると、平均点が上がったり、子どもが主体的に学びに取り組むようになったりと、良い面に目がいくと思います。そんな期待を持って実践に取り組むと思います。

しかし、そんなうまくはいきません。最初はグダグダです。失敗ばかりです。(今もですが…)

ただ、それは当たり前のことです。多くの人が教育実習で初めて「一斉授業」を行うと思います。その時に、納得のいく授業ができたでしょうか。

初任研の授業を今思い出して、「完璧だったな」と思うでしょうか。

何年もトライ&エラーを繰り返す中で、板書が上手くなり、発問が精査され、授業展開が精緻化され、一斉授業が上達してきたのです。

授業のあり方を根本から変えていくためには、そのような今まで積み上げてきたものを一度全て壊す必要があります。そしてベクトルを調整して、新たに積み上げていかなければなりません。

自己破壊の先に成長があります。

さて、これで今年度のふりかえりは終わりです。
1年前と比べて少しは成長できたかなと思う部分もありますが、まだまだ。

次のnoteの記事は、次年度の実践を踏まえた形になるかなと思います。
自分の現在地を把握できたところで、春休みにしっかりとインプットしていきたいと思います!



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