和。
凍て刺すような風が体を吹き抜ける。
もう一度だけ。
せめて夢の中でもいいから。
何度願ったって叶わないこと。
今年の冬は痛いくらいに寒い。
そういえば去年まではこんなこと感じなかったな。
俺に伝染った口癖も。
愛おしくなるような仕草も。
その一つひとつが、寒さを消してくれていたんだ。
忘れてしまいたいくらいの恋なのに。
どうしてだろうか、君には忘れて欲しくないんだ。
あぁ、そうだ。
君は俺のこんな我儘な所が嫌いだったんだっけ。
初めて喧嘩した日のことを覚えているだろうか。
まだ怒り慣れてなかった俺たちは、まだ優しい言葉を浮かべて未来を信じていた。
じゃあ、最後に喧嘩した日のことは?
もう、過去を信じられなくなった俺たちからは、悲しい言葉ばかりが並んでいた。
そして、君からの最後の言葉。
『○○、ごめんね。』
そうじゃない。
俺は謝ってほしかったんじゃない。
そんな言葉は要らなかった。
どれだけ傷付け合っても、虚しさで胸が支配されても。
二人の未来だけは信じていたかった。
こんなつもりじゃなかったのに。
俺は二人で初めて訪れた場所にいた。
『見て見て、○○。にゃんにゃんにゃぎ〜』
こうして楽しい思い出が甦ってくるのは。
まだ自分の心が嘘をついているから。
『私、嘘をつく人が大っ嫌いなの。だから…』
君との日々だけは嘘にしたくなかった。
それだけだったのに。
もし、あの時の言葉が違っていたら。
もし、あの時の君の涙の理由が解っていたら。
君は俺の所に戻ってきてくれるのだろうか。
『ねぇ、私ね。○○と一緒にいる時が一番幸せなんだー。…これからもずっと傍にいてくれる?』
なんだ、君も嘘つきじゃないか。
教えてくれ。
二人の好きと好きはどうして足し算にならなかったんだろう。
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