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Strawberry.


夕焼けの下、アスファルトを鳴らすメロディーが4つ。

過去と未来の通り道で歌っている。




「おーい、芽依!走ると危ないぞ!」


「へへへ〜大丈夫~」


前を走る小さな女の子に追いつこうと、俺は重いエコバッグをぶら下げ走る。



「あ!見て○○!猫がおる〜!」


「ホントだ。首輪してないから野良猫かね。」


「にゃ〜」


「…ったく、ほんとに大丈夫か?これから芽依はお母さんになるんだぞ?」



「へへ、楽しみやなー」


妻である芽依は、少し膨らんだお腹を擦りながら微笑む。


「あと、走るの禁止。お腹の子に何かあったらどうすんだよ。」


「はーい…」


「ん、じゃあ早く帰るぞ。」


汚れた猫に手を振ると、世界の中心を作りながら再び歩き出す。


すると、夕刻を告げるチャイムが鳴る。


「おなかすいたー。」


「芽依があっちこっちに行っちゃうから遅くなったな。」


「だって○○とデートするの楽しいねんもん。」


「デート…か。俺たちいつまでラブラブでいられるのかねぇ。」



「芽依がいいって言うまで!」


「なんだそれ…」


芽依との毎日は、本当に刺激が多い。


危なっかしいし、目を離したらもう視界から居なくなっている。


気まぐれな猫のような子だ。


「なーなー、芽依ブランコ乗りたい。」


「腹減ったんじゃなかったのかよ。」


「お願いー、これやったら帰るからー。」


「はいはい。あんまり高く漕ぎすぎんなよ。」


家の近くの公園で、2人並んでブランコに乗る。


「ひゃー!」




何も考えていないように見えて、人一倍気を遣って生きていることも。


フワフワとしているように見えて誰よりも芯の通った生き方をしていることも。



血の滲むような努力を見えないところで続けていたことも。


全部全部、俺だけが知っている。



この世界で、誰よりも自由な芽依の人生に。



これから生まれてくる新しい理由が芽生えて。



俺が守るべき意味もまた、増えるのだろう。



「○○~!」



「ん?どうした?」



「好きやで~!」


「……俺も!」


「これからは、3人で幸せになろうな〜!」


勢いをつけ、高く舞い上がる。


その度に、幸せも駆け上がっていく。


いつだって、俺達の未来がどこへ向かったって。


芽依の描く夢の方向へ想いを馳せて。



これからの芽依の人生が、誰より"自由"でありますように。








夕焼けの下、アスファルトを鳴らすメロディーが6つ。



幸せと幸せの通り道で歌っている。

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