自分が正しいと思っている人が苦手だ

僕は今研修医2年目として働いている。
研修医のメインの仕事はERと呼ばれる救急外来で働くことだ。週に一度くらいのペースで通常の業務とは別に当直に入る。17時から翌日8時までERで救急車や自分の足で来た患者を診る。
研修医が出来ることは問診を取って身体所見を取って検査をオーダーして、採血やら点滴をとったりエコー検査を行う。一通り結果が出揃ったところで上級医と呼ばれる医者3年目以上の医者に報告をして方針を決める。
僕はその報告する医者で苦手な人がいる。
少しでも迷いがあるような発言やトンチンカンな発言をすると、死んだような目になってこちらを見てくる医者だ。
そんな視線を受けるたび、こちらも話す気が失せるしその場をやり過ごすことしか考えられなくなる。
でも、しゅんとした態度を見せるのは負けた気がするから、そういう時こそハキハキ喋って「元気のあるバカなやつ」になる。
その医者が当直医のときはそうやって一晩を乗り切る。
たしかに冷たい視線を送られることもあるが、一応質問をすれば、その病気のことや対応の仕方、手技の仕方を教えてくれる。勉強にはなるがやはり心労は募る。
自分が知識をもっと蓄えられれば心労もない一晩を過ごせるのは自明だが、やはりまだ分からないことは多い。

ある夜、研修医一年目でキョドりがちな後輩と例の上級医と一緒に当直の日があった。

CVポートという人工物を体に埋め込んでいる人が発熱を主訴に来院した。その一年生が診療にあたることになった。「発熱しているからとりあえず血液培養はとったほうがいいですよね。」僕に質問してきた。「高齢で高熱だし人工物入ってるから、そこが感染してる可能性あるよね。血液培養はもちろん取ろう!」とかえした。

「CVポートが入ってるところが赤くて熱いです。ここが感染してそうです。」僕に彼が教えてくれた。

「これって、この人工物が感染源だから抜いたほうが良いんですかね。すぐに放射線科のオンコールの先生に電話したほうがいいですかね。」と僕に言った。時刻は22時くらいだった。
僕はなんとなく、「感染してるにしても、めちゃくちゃ急いで取らなきゃ行けないわけではないよな。もしかしてコイツはコレを急いでやらなきゃ行けないことだと勘違いしてるのか。まだ研修医になって半年くらいだし、そう考えるのも有り得る話だな」と思ったが「いや、そんな急ぎじゃないからとりあえず抗菌薬だけ初めてまた抜くかどうかは別日に考えるんじゃないかなー」とだけ言った。
でも所詮この発言は彼より1年間だけ経験が多いだけのペーペーの意見。
「一応、上の先生にも聞いてきます!」と僕に言って近くにいた例の医者に相談に行った。
するとその医者は「は?何言ってんの。放射線科?意味わからんねえ。」といいながら、犯罪者を見るような目で後輩を舐めるように睨みつけ去っていた。

僕はそれを見てドン引きしてしまった。
その日の当直が終わってから僕は眠気がすごいのに、その光景を思い出して3時間くらい目をつぶってるのに眠れなかった。「なんであんな対応ができんだろう。間違ったことを言ってる人にはあんな対応をしていいのか?」あの目が怖くて仕方がなかった。
あれ以降、運良く当直は一緒になってないが来月、再来月一緒に入った時どうしよう。
「元気がいいバカなやつ」を出来るだろうか。多分できる。でも心労が凄そうだ。その日の当直に向けてなるべく勉強しよう。でもめんどくさい。一緒の当直じゃないことを願う。

僕は絶対おっさんになってもあんな視線は向けたくない。心に余裕を、どんなに歳下でも一定のリスペクトを持ちたい。

研修が終わるまであと4ヶ月を切った。早く終わらないかなあ。


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