その町で、『最も子供に優しい商店街』はイオンモールの通路
3児の父になって、まざまざと感じたことは
多くの地方都市において、
【その町で、『最も子供に優しい商店街』はイオンモールの通路】
だということです。
・ベビーカーでもすれ違い余裕、全く段差を感じないバリアフリーな通路・概ね3分も歩けば利用できる頻度で現れるトイレ、男性用にも充実のおむつ台
・7人乗りファミリーカーでも余裕の幅で、バックドアも跳ね上げられる駐車場
・そして、建物内は、雨に濡れることはなく、車に轢かれる心配もない
・フードコートでは、座敷スペースや、お子様サイズのテーブルが、1個や2個でなく、ゾーンとしてある・適度な頻度で現れる、子供の気を引くアスレチックスペース、イベントスペース、店舗によっては保育士が預かってくれる
・周りは皆子連れ、子連れを危ない目に負わなくて良い心理的安全性
これに対し、商店街はどうでしょうか
・ベビーカーには難所のでこぼこ段差
・トイレは商店かコンビニを借りるしかない。大人用の便器、下手すると和式、「おむつ台、授乳所はどこ?」
・5ナンバー前提設計の古い駐車場
・子連れOKの店。OKなだけでお子様メニューや椅子などはなし
・グズった時や、親の買い物に飽きたとき、動いて発散させるにはどうしたら?
・そしてなにより、子連れでご迷惑をかける先々で「すみません」と言わなければいけない心理的安全性の低さ
・雨が降ったら濡れる、歩道を自転車が通り、シームレスな車道では車がビュンビュン
そりゃ、『中心市街地の商店街』より、『イオンモールの通路』に集まるよなと思います。
本当にファミリーに便利。便利になることを徹底的に追求して、そして全国100以上の店舗の『お客様の声』というビッグデータが集約され、ハード、ソフトともノウハウが溜まっていく脅威の場所
それが『イオンモール』ではないでしょうか
郊外モールに、育つ愛着
さて、ここで別角度。 結局、故郷の風景とか、愛着というのは、かなりの部分、『頻度』で決まると思っています。 子どもの頃よく行った場所が、自分の原風景になる。 愛着があるから高頻度で訪れるのではない、 高頻度で訪れるから愛着が育つのだろうと。
対して、郊外モールに客を取られている中心市街地は「どうやって、我がまちに愛着を持ってもらうか」と考えています。「愛着を教えればファミリー連れが帰ってくる」と思っているわけです。
違います。
「ファミリー連れにとって、モール以上に超便利で快適」になれば、掘っておいても、勝手に戻ってくるでしょう。
私が父親になったのはこの5年ぐらいです。しかし、全国各地にイオンをはじめショッピングモールが立ち並びはじめて、もう20年以上は経ちます。
ショッピングモールにこそ、幼少期の家族との思い出も、思春期の甘酸っぱい思い出も、詰まっている世代が、いよいよ、子育て世代になってきています。
彼らの『愛着や思い出の原風景』は、キャラクターアトラクションを見ていたモールの中の広場や、親におやつを買ってもらった食品売り場、部活の友達と一緒にパフェを食べていたフードコートかもしれません。
そこに、「まちなかの商店街」は割り込めるのでしょうか。
恐らく、多くの地方都市では、私たちの世代が、最後の『商店街』を知っている世代でしょう。これからは、ハード面の便利さでも、ソフト面の愛着でも、郊外ショッピングモールの方が優勢になります。本当に郊外都市の『まちなかの商店街』はきつくなっていきます。
郊外ショッピングモールを利用する時代へ
「郊外ショッピングモールの方が愛着を集めている」こと自体を否定的に捉えるのではなく、 それを効果的に利用するステージに入ったのではないでしょうか。 その視点で見れば、一見全国画一的に見えるモールにも、その店舗と周辺住民に独自の意味づけ、文脈があります。
例えば、私の地元で、専門店テナントも多数抱えるヨーカドーが閉店する時、惜しむ人々から6000通ものメッセージが届いたことがあります。
リンク先、最終営業日、店長の挨拶が心を打ちます。
ハード面で不利であっても、「向こうはお金がかけてるけど、こっちは地元住民の心を掴んでいる」が、商店街の強みの拠り所でした。
その拠り所でも、いよいよ郊外モールが、市民の心を掴み始め、人生の原風景になり始めてきました。
さあ、どうする、商店街。と言うステージ。
特に駅前の商店街などは、原風景として、老若男女で賑わうということをイメージするし、今なお、期待されているでしょう。
しかし、そこはもうハード面の利便性では超えられません。今更、段差を全部直すとか予算的にも厳しいものがあります。
ではどうするか、それはもう「親子連れは捨てる」が最適解ではないでしょうか。
商店街が闘う戦場は、ハード面の不利が、そこまで気にならない年代層。
つまりは、『子どもが出来るまえの体力ある独身世代』
ここに、どう魅力のある街になるか、そこに特化していくことが、これからの商店街の生き残りの道なのだと思います。
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