タコ注意報
『――ロンドン市民には地下鉄への避難が勧告されており、周囲の地下鉄入口が――』
「出撃まであと一分、さっさとエンジンを動かせエイプども!」
小隊軍曹の怒鳴り声にせっつかれ、俺達は嫌味を垂れながらエンジンを起動した。戦車のガスタービン機関の喧しい嬌声が余計苛立たせる。
「砲弾は確かめたな、何も異常は無いか」
「うっせえよオッサン! 俺達を幾つだと思ってんだ!」
「健康優良不良男児を舐めんじゃねえ!」
「不良なのはおつむの方だろうが!」
軍曹とガキどもの言い合いを無視して、俺は戦車を勝手に出発させた。無線から聞こえる軍曹の怒鳴り声。
「やる事は分かってんだ! それに――!」
俺の言葉は目の前に降り立った金属の化け物のせいで遮られた、無数の触手が生えたでかいタコに似たロボ――火星人の乗り物だって言う金属のタコの化け物。
「お客さんもノリノリだしなぁ」
舌なめずりをして俺はアクセルを踏み込む。ロンドンは今日も騒がしくなりそうだ。