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今までありがとうございました。


この度僕は、プードルというコンビを解散し、芸人を辞めるという決断をしました。

僕の場合、

「コンビを解散するから芸人を辞める」
のではなく、

「芸人を辞めるからコンビを解散する」
といった感じです。

大学を卒業して、NSCに入ったのが23歳。
そこから10年間、お笑いしかやってこなかった僕が、なぜこの決断に至ったのか。
そもそもなぜこのタイミングなのか。
なぜ「解散」だけではなく「引退」なのか。

そして、これから一体どうするのか。

それらについて書いていきたいと思います。


大前提として、僕は元気です。決して落ち込んではいません。
感傷的といえばそうですが、精神的に病んでいるわけではありません。
むしろ、以前より解放感に満ちあふれています。
ほんまにほんまに。

その辺についても後で書きますし、何より、こういうことを書くこと自体が、自分自身が冷静だという証拠だと思います。

今感じていることや、今しか感じれないことを記録として残しておきたいという思いと、芸人を辞めるというタイミングで、こんなにも詳細な文章として残す人間もなかなかいないなという認識があるので、とりあえず書いていきます。

僕自身は決してそのつもりはなく、ありのままの現実を、割とポジティブに書くつもりですが、内容的にネガティブな気持ちになる人もいるかもしれません。
それでもいいのなら読んでほしいです。

念のために言っておくと。
周囲の人間や周りの環境を揶揄するようなことは一切書きません。
というか、そんなことは一切思わないからです。
全て自分の中にある考えのみを書いていくので、その辺を期待している人は悪しからず。







まず、なぜ辞めるに至ったか。総じて言うと、

熱量が無くなったから。

走るためのガソリンが尽きたからです。

実はここ数年は、そのガソリンが「減っているな~」とは感じながら走っていたのですが、去年のM-1を終えた時点で、ガソリンが尽きた感覚がありました。

ここ何か月かは、騙し騙し活動している自分がいました。
そんな状態がしんどくて、ファンの方からの「頑張ってください」に対して非常に申し訳ない思いがありました。
簡単に言うと自分に嘘をついている気がしていたのです。

僕らは現在芸歴9年目。
来年10年目は、民放の賞レースのラストイヤーなど、区切りの年。

あと一年。

もちろん思いましたし、この決断をした後、「あと一年はやるべきちゃう」と周囲にも言われました。

しかし、もしあと一年やったとして、結果が「出てしまった」場合、そこからまた新たな苦悩や、戦いの日々が始まるんだと考えると、

「あ、無理かも」

と思ってしまったのです。

その時点で、そんなことを考える人間は「辞めるべき」だなと思ったのです。

そして、まだ「売れたい」「頑張りたい」と思っている相方に対して失礼だし、何より貴重な時間を奪っているなと感じたのです。
だから、僕から告げて、勝手なことではあるとわかっていながらも、この選択を取らせてもらいました。





お笑いを始めた当初、まさか自分が辞めるだなんて思っても見ませんでした。「絶対売れるに決まってる」と、自分の才能を信じて疑わなかったからです。

芸歴1~2年目くらい。
劇場に入る前、一緒にオーディションライブや、インディーズライブに出ている40歳手前の先輩芸人たちを見た時、

「なんで才能もないのに続けてるんやろ」
「辞めた方がいいのに」

と、そういう見方をしていました。

ですが、今の僕が思うに彼らは、

「まだいけるんだ」
「絶対に売れるんだ」

という“情熱”があるから続けているのだと思います。
逆に言えば、その熱がある限り、何歳になっても続けるべきなのです。年齢は関係ないです。

人の幸せ不幸せは他人が決めることじゃない。自分自身が決めるものなのだと、今は心の底から思います。

負け惜しみみたいになりますが、僕は急に衰えたわけではありません。頭の回転も平均よりは早いと思います。

ですが、“情熱”が無くなりました。
続けたいという気持ちや、売れたいという欲が無くなったのです。

プロ野球選手やサッカー選手と決定的に違うのは、この世界は、戦力外通告が無いということ。
吉本から「お前、おもんないからクビ」という通達は来ません。

だからこそ、辞めるきっかけを見つけるのが難しい。諦めがつきにくい世界だと思います。

だけど、僕はこの選択をしました。後悔もしていませんし、この世界に何の未練もありません。

そう思えたのは、僕の中に、

「ある程度いろいろ経験出来た」

という考えが少なからずあったからです。

売れている人たちの前にしたら、全然足元にも及びませんし、「何言うてんねん」ですが、芸歴9年、コンビ歴6年半、劇場に所属して丸5年、それなりにいろんな経験が出来ました。

テレビ(全国も関西ローカルも)にも出れたし、単独ライブも出来たし、賞レースの決勝にも出れたし、NGKにも立てたし、新喜劇もさせてもらえたし、営業も行けたし、ロケも行けたし、アイドルイベントのMCも出来たし。

オールザッツとガキ使に出れたことは、高校生の僕が見たら、「マジか!ようやったやん!」て言ってくれると思います。

昔から生粋のテレビっ子の僕からしたら、在阪・在京のテレビ局のほとんどに出れた(テレ朝だけ出れなかった)のは、実はすごく感慨深いことなのです。

芸人人生の9年間、まがりなりにもいろんな景色を見ることが出来ました。

そういったこともあって、正直言うと「もうええかな」という感情が芽生えたのだと思います。


やっと戦いの世界から降りられる___。
今は安堵の気持ちが強いですし、それは同時に、自分の中でやり切ったということを意味していると思います。

「趣味で楽しく」といった感覚であればいくらでも続けられたと思います。
ただ、自分がいる世界はそういう世界じゃない。

「売れたかったから辞める」

一見、意味が分からないと思われるでしょうが、僕としてはそういう感覚なのです。





次に、吉本の所属をどうするのか。
周りの同期などからの勧めもあり、一旦は吉本に籍を置くことになっていますが、基本的には引退の方向で僕の意志は固まっています。

では、なぜ吉本を辞めるのか。
吉本に所属しながら、漫才ではなく他の活動も出来たのではないか、ということ。

これは、僕個人の考え方であって一概には言えないのですが、
吉本という事務所は、漫才師やコント師といった「ネタをやる人間」が一番所属する意義がある事務所だと思っているからです。

あくまで僕個人の考えです。

今後、僕は何かを発信するにしても、人前でネタをする人間になる可能性は限りなくゼロに近いです。
それは、完全に負けを認めたということと、ネタで飯を食っていく人に対するリスペクトが生まれているからです。

なので、「吉本」で「芸人」という形を取らないのであれば、潔くこの世界から身を引いた方が、自分としてもリスタートが切れている気がして気持ちがいいのです。


おそらく僕はカッコつけです。プライドも高いです。

NSCの時は優秀でした。自分は高スペックな芸人だと信じていました。
ですが、時間を追うごとに、理想と現実のギャップに苦しみ始めます。そもそもが自己評価の高い人間ですから。

たまにいただく周りからの「おもしろい」の声はあっても、現実に立ちはだかる「食えない」という壁。

だから、このままズルズル続けると現れるであろう、「落ちぶれた、カッコ悪い自分」を見られたくなくて、そんな自分に自分自身が出会いたくなくて、スパッと芸人を辞めるんだと、冷静に見てそう思います。




そして、なぜこのタイミングなのか。

9年目。10年目まであと一年。
一応劇場にも所属していて、テレビのオーディションや手見せなど、売れるチャンスはまだ充分にあります。

先ほどから書いているように熱が無くなったということに他なりません。

「この賞レースまでとりあえず」と区切りを置くのも大事ですし、最初はそのつもりでしたが、その未来と、今ある現在の気持ちが変わらないようなら、その間の時間に意味が無いように思えたのです。

急ではあったし、相方や、マネージャーや、劇場の社員さんなどには、ご迷惑をおかけしましたし、申し訳なく思っています。

しかし、衝動的に行動に移せたということ自体は、誤解を恐れずに言えば、一番健全な形なのではないかなと思います。

僕のわがままを聞いて、最後の舞台など、終わり方を調整してくれた事に対しては、本当に感謝していますし、本当に自分は恵まれているなと思います。

応援してくださった方々からしたら、唐突かのように思われるでしょうが、自分にとっては衝動的に「やっと言えた」タイミング、それが、2023年の1月下旬だったのです。



「年齢は関係ない」と言っておきながら、その問題も少しありました。
32歳。もう32歳かと思いますが、まだ32歳だも思います。

何かを始めるにしてもまだ32歳なら、なんとかなるんじゃないかという思いもありました。


じゃあ、具体的にこれから一体どうするのか。
何かしたい職業があるのか。進路は決まっているのか。



結論から言うと、、、






何も決まっていません。ばくわら

就きたい仕事が明確にあるから辞めるわけではありません。


大学卒業以来、就職したこともなくお笑いしかやってこなかった僕。
不安が無いといえば噓になりますが、根っこがポジティブ人間。

「なんとかなるやろ」と全力で思っています。
「自分は何が出来るんやろ」とむしろワクワクしています。

趣味が多いので、そういったことも絡めた仕事を選ぶのか。
はたまた趣味は趣味で割り切って、普通の仕事をするのか。

「好きなことを仕事にする」ということの大変さは、この10年で嫌というほど感じました。

ただ、「得意なことを仕事にする」という視点で見ると、また話は変わってくるのかなと思います。



あとしばらくは、シンプルに、芸人生活では出来なかったことをやっていく期間にあてたいと思います。

国内の行ったことのない場所や、人生でまだ一度も行ったことのない海外にも行きたいと考えています。

芸人生活の中でも、それなりにいろんな場所に遊びに行ったりしてましたが、芸人としての調子が悪い時に行っても、なんか楽しくないし、考え事をしてしまう自分が実際いました。

それらをリセットして、思う存分やりたいことをやっていきたいと思います。

サーフィンや、DJや、スケボーや、世界遺産巡りや、古文書を読むなど、まだ経験したことのない、興味のあることを山ほどしたいです。

「いや、遊びたいだけやないか(笑)」
と言われても、
「いや、自分の人生なんで!」
と思うだけです。

「何かのために」とか、「仕事に繋げるために」とかを一切考えずに、ただただ好きなことをしていきます。

まだ見たことのない広い世界を、32歳にしてどんどん見ていこうと思います。

そういった中で、最終的には「生きがい」や「楽しい」と思える日々を見つけていきたいと思います。


「生きがい」とかは、別に仕事だけで感じなくていいとも、今は思っています。
仕事以外の何か。
趣味なのか、家族と過ごす時間なのか。

どこかで、「幸せ」と言えるバランスを取りさえすれば、心の健康は保たれるに違いないはずです。

なんか自己啓発セミナーみたいになってしまいましたね。
そういう道には進む気はありません。

「趣味に時間を費やす」「普通の仕事もする気」とか言いながら、数年後Youtuberになっている可能性もゼロではないですし、こういう人間なんで、何かしらで発信はしていきたいと思います。
SNSもそうですし、このnoteも続けていきます。

そういう活動を専業でやるイメージは今のところありませんが、人生なんてこれから先なにがあるかわからないので、働きながらいろいろやっていこうと思います。





最後に。

僕の芸人活動を応援してくれて、支えてくれた家族、友達、ファンの方々。
いろんな仕事で関わってきた会社の方々、スタッフの皆さん。
一緒に戦い、同じ時間を共に過ごした芸人仲間。
そして、相方のメラちゃん。

今まで本当にありがとうございました。


芸人であったこの10年は、消したい過去でもなんでもなく、むしろ僕の誇りです。人生において最高の、特別な時間でした。

これからの人生どこに行っても、「よしもと漫才劇場で芸人をやっていたのだ」ということに胸を張り、自信を持って生きていきたいと思います。



長文読んで頂きありがとうございました。
また、どこかで。



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