「なにわ筋線」って知ってる?~30年越しに動き出した一大プロジェクト~
皆さんは「なにわ筋線」ってご存じですか?
何かというと、大阪市内に新たに出来る電車の路線の事で、2021年10月に工事が始まり、2031年に開業が予定される、まさに“現在進行形超大型プロジェクト”なのです。
実は、なにわ筋線の構想自体は今から30年以上も前、1989年から存在していました。
水面下で考えられていた計画は、まことしやかに語られるものに過ぎず、僕自身もこの計画自体を知ったのは3~4年前くらいの事です。
その計画が、最近ついに動き出したのです。
今回はそんな「なにわ筋線」について取り上げたいと思います。
なぜ取り上げるのかというと、めっちゃワクワクするからです。
僕は、都市開発や街づくりにも興味があって、専門家ほど詳しくないですが、NHKの特集を録画するくらいには好きです。
渋谷の再開発や、東京オリンピックに関する建設ラッシュなど見ていてたまりません。おもろすぎます。
なにわ筋線開業に関する経済的な側面は分かりませんし、車両や線路のマニアックな知識も持ち合わせてないので、その辺のことについては書けません。
この記事では、知らない人向けに、
なにわ筋線がもたらすものとは一体何なのか。
裏側では何が起きているのか。などをざっくり語っていきます。
大阪市内の土地勘が無い人はちんぷんかんぷんだと思います。
大阪の街が好きな人、生活圏の人、電車に興味がある人はぜひ読んでください。
うめきたに“新駅”がオープン
ついこの間の2023年3月18日。梅田周辺に新たな“駅”が出来ました。
大阪最後の一等地と呼ばれる「うめきた」というエリア(グランフロントの横。もともと梅田貨物駅があった場所)の地下に、新駅を作る計画は早くからありました。
建設段階では「北梅田駅」や「うめきた新駅」などと呼ばれていましたが、蓋を開けてみると、”新駅”は大阪駅の一部としてオープンするのです。
もともとのJR大阪駅は地上、新たなうめきたホームは地下。
違う改札口ですが一つの駅という扱いです。ちょっとややこしい。
ここ何年かで思ったより定着した「うめきた」という名前。
JRの発表によると、今後も表向きの名前としては「うめきた(大阪)地下駅」を使っていくそうです。
これは生で見てみないとわからないな、、というわけで、実際に行ってきました!
出来立てホヤホヤということもあって、めちゃくちゃきれいでワクワクしました。
僕と同じように写真をパシャパシャ撮っている、鉄オタっぽい人たちもちらほらいました。
では、この新たなホームが出来たことによって、現時点で何が変わったか。
京都方面から関西国際空港方面に向かう特急「はるか」や、和歌山方面に向かう特急「くろしお」が停まるようになったのです。
これまでは線路の構造上の問題により、新大阪駅から大阪駅をすっ飛ばして大阪環状線を通っていたのですが、これにより、関空に向かう特急に大阪駅から乗ることが可能になりました。
大阪市内だけを移動する人からしたらあまり実感はないですが、ビジネスマンや観光客からしたらめちゃくちゃ便利になったのです。
陸と空をつなぐ“夢”の路線
さて、なにわ筋線の話に戻ります。
大阪府・大阪市・JR西日本・南海・阪急の5者が共同で取り組んでいるなにわ筋線の事業ですが、今回新たにうめきたに出来たホームは、実はなにわ筋線にとってすごく重要なポイント。
今後、このホームを軸に路線を作っていくことになるのです。
現在発表されているなにわ筋線の駅はというと、
大阪駅・うめきた地下口
↓
中之島駅(仮称)※新駅
↓
西本町駅(仮称)※新駅
↓ ↓
JR難波駅 南海新難波駅(仮称)※新駅
↓
新今宮駅
といった感じです。
ご覧の通り、西本町からJRルートと、南海ルートの2本に分かれます。
大阪駅から西本町までの区間をJRと南海が共有、西本町からJR難波の区間をJR、西本町から新今宮の区間を南海が運営するといった形です。
将来的には、大阪環状線や阪和線、南海本線などを絡めて広がっていく。
この度出来た“うめきた新駅”は、なにわ筋線の先駆け的存在なのです。
いわば、伝説の始まりです。
ここで気になるのはまず、そもそもなぜ、どういった目的でなにわ筋線は作られるのかということ。
一番は、関空へのアクセス向上です。
西日本最大のハブ空港である関西国際空港は、大阪府の南部にありますが、陸の玄関口である大阪駅や新大阪駅は北部にあります。
遠方から大阪にやってきて、そこから電車を乗り継いで関空までやってきて、飛行機に乗って旅に出る。
それだけで一苦労ですが、この移動時間の短縮と他府県からの利便性の向上が一番の目的としてなにわ筋線は作られるのです。
ケースによりますが、最大で約20分ほど短縮される場合もあるそうです。
そらそうですよね。今まで環状線を使ってぐるーーっと市内の外側を回っていたものが、真ん中を縦にぶち抜いて進むわけですから。
たまに地図を眺めて勝手に思う、「ここ通ったら早いやん」が、現実のものとなるわけです。
「陸の玄関口」と「空の玄関口」をよりスムーズにつなぐ夢の路線。
なにわ筋線の開業にはそういった意味合いがあるのです。
計画のキーマン、阪急
関空へのアクセスを語る上で、他府県からの利便性向上という点に触れましたが、これになくてはならない存在が、阪急です。
なにわ筋線本体とは直接関わらないのですが、昨年末の阪急の発表によると、新大阪駅と十三駅を結ぶ「新大阪連絡線」と、十三駅と大阪駅(うめきた)を結ぶ「なにわ筋連絡線」を、2031年になにわ筋線と一緒に開業することが新たに分かりました。
なんと、十三から乗り換えなしで関空に行くことができるのです。すご。
しかも十三駅は、京都線、神戸線、宝塚線を結ぶ駅。
京都や神戸の人からしてもめっちゃ便利になります。
将来的には、終点の京都河原町から関空まで一本で、、なんてことも実現してほしいですが、実際は、線路の規格の問題でおそらく十三からになるとのこと。それでもだいぶ便利です。
もし直通になれば、宝塚の宙組トップも終演後、そのままの足で飛行機に乗って海外に行けるでしょうね。
そら組だけにね。
ていうか、空の便だけではなく、十三から新大阪に行けるという事は、阪急ユーザーからしたらたまりません。
いちいちJRに乗らなくても、すぐに新幹線に乗れるのですから。
いや、マジで十三デカいです。。十三最強。。
あと、マニア的な視点から見ると、おそらく相互乗り入れが起こるので、他社のホームで他社の車両を見る機会が増えるでしょうね。
細かいことはまだ分かりませんが、南海の駅に阪急の車両が、阪急の駅にJRの車両が、、みたいなことも。
え、ちょ、待って待って、、、めっちゃワクワクしません?笑
決して鉄道オタクではないですが、そんな僕でも他社の車両が乗り入れしている光景は好きです。
阪神なんば線で見る、近鉄の車両。
大阪メトロ堺筋線で見る、阪急の車両。
近鉄生駒駅で見る、大阪メトロ中央線の車両。
よそ様のところにお邪魔しながら走っている姿からにじみ出る、何とも言えない背徳感がいいですよね。
車両に対しての、「え?こんなとこ走って大丈夫?すごいな自分。やるやん。」みたいな感じ。
もちろん全然大丈夫なのに。
つ、伝わってる、、?笑
少し話がそれましたが、とにもかくにも車両はもちろん、人の往来の自由度と便利度がこれまでより格段に増す、そんな大改革が阪急の手によって行われるのです。
JR難波、長年の“悲願”
なにわ筋線のことを語る際に、どうしても外せないトピックがあります。
それはJR難波駅についてです。
まずJR難波駅とは何か。
難波の中心を少し西に外れた地下駅で、高速バスのターミナルであり、複合商業施設でもある大阪シティエアターミナル、通称OCAT(オーキャット)と併設されています。
もともとこの周辺には湊町駅という駅が、1889(明治22)年というだいぶ昔からあったのですが、1989年にちょっとだけ移転(南西に約200m。跡地が現在の湊町リバープレイス)、その時にJR難波という駅名に変更し、開業されました(ちなみに「JR」の名を冠した最初の駅)。
なぜこのタイミングで移転したのかというと、もうなんとなくお分かりですよね。
関西国際空港が開業したのが1994年。
その年から、JR難波を始発とする「関空快速」の運行を開始するのです。
JR難波駅は最初から、関空へのアクセス強化を目的として作られた駅だったのです。
そして読み返してみてください。なにわ筋線構想が出てきたのと、JR難波駅が出来たのが同じ1989年。
「なにわ筋線、そんなん急には無理やけど、ゆくゆくは出来るやろうから、最初からこの辺に作っとこーや」
的な感じで作られたのがJR難波駅だったのです。
その歴史から、大阪府の用意周到ぶりが伺えて感心しますよね。
「とりあえずは難波から出る関空快速で、便利にしていこうや!」的な盛り上がりを見せていましたが、2008年、JR難波に悲劇が訪れます。
ご存じの方もいるかと思いますが、関空快速の運用が廃止されるのです。
関空快速は、天王寺駅から環状線で大阪駅などを通って運行されるようになるのです。
それもそのはず。僕も大阪に住み始めてから、「めっちゃ変なとこにあるやん。え、いる?」って思っていたように、JR難波駅はなんばの中心部から外れていて不便なのと、南海難波駅から関空への特急「ラピート」があったので、全然人が乗らなくなったのです。
僕が大阪に来たのが2014年。
「空港とか全く関係ないのに、なんで大阪シティ“エア”ターミナルやねん」
と、ずっと思ってたんですけど、実はそういう背景があったんですね。
空港でしか出来ない手続きとかも当時は出来たんですって。エアすぎ。
(そのかわり現在は、高速バスで関空行きなどがある)
せっかく関空のために作られたのに、いつしか「環状線の内側にちょっとだけ飛び出ているイボ痔みたいな存在」になって、寂しく営業するようになったJR難波駅ですが、ここにきて再び「なにわ筋線」の話が浮上してきました。
実は、JR難波駅のホームって始発駅なのにも関わらず、いわゆる端っこが突き当りになっている頭端式ではなく、その先にまだ線路が続く通過式ホームになっているのですが、なぜかわかりますか?
それは、1989年の開業の時点で、“なにわ筋線がつながる”という未来を想定して、あらかじめこの形で作られたからなのです…!
一時期は、関空へ多くの人を運ぶ出発点として期待されたものの、客足が遠のき、無くなってしまった関空快速。。それからと言うもの、人々に「なんでこんなとこにあるねん」「イボ痔やん」と疎まれる始末。。
それでもあきらめずに、なにわ筋線がつながることを夢見て、ずっと、ずっと、何年もの間待ち続けたのです。
つまり、なにわ筋線の開業は、JR難波駅にとって長年の“悲願”なのです。
と、ついドラマ仕立てで煽ってしまいましたが、こういう見方をしたらめっちゃおもしろくないですか?
JR難波のことが健気で可愛く思えてきません?
大阪府としても少なからず、30年も前から府民の為に、より便利により快適にという思いがあったのは事実。
それが長い時を経て、今ようやく実を結ぼうとしているのです。
おわりに
これが、僕が勝手にまとめた大まかな「なにわ筋線」についての記事です。
大体の事は知ってはいたのですが、調べれば調べるほど、ロマンを感じておもしろかったです。
JR難波の関空快速のくだりとか、Wikipediaで知ったのですが、なんか感動してしまいましたもん。Wikipediaで。
大阪市内に住んでない人でも、周辺に来た時はその辺を意識してみたら面白いと思います。
絶賛工事中なので、結構街中で「なにわ筋線」の文字を見かけることもあります。
2025年の万博には間に合いませんでしたが、8年後、大阪だけではなく近畿一円のネットワークが劇的に変わるであろう「なにわ筋線」。
今からちょっとだけでも頭に入れてみてはいかがでしょうか。
それでは、また!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?