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これまでの人生を一冊の本にするとして、書き出しはどんなシーンにしようかなと考えることがたまにある。上京してきた日の新宿駅でもいいし、先輩を見つめていた体育館でもいい。こっそりラジオを聞いていた深夜でもいいし、放課後の生徒会室でもいい。
でもたぶん私はたくさんあるシーンから、高校1年生の冬、珍しく晴れた日のお昼に、姉にああ言われたシーンを選ぶ。
「あんたが私に勝ってるところひとつでもある?」
まあそんなかんじで姉コンプレックスが酷いんですが、普段はそんなことを忘れて生きている。でもちょっとしたきっかけでワアアと思い出してしまうことがあって、今回のきっかけはこちら!ヤマシタトモコの違国日記です!
主人公の槙生ちゃん35才小説家は姉のことが大嫌いなんだけど、その姉夫婦が事故で急死してしまう。成り行きで姪っ子中学生を引き取ってしまうことになった槙生ちゃん、嫌いだった姉の子供と一緒に住むなんてこれからどーなっちゃうの〜!っていう漫画でして、これがめっちゃおもしろい。
話の主軸はそこじゃないにしてもやっぱり姉とのシーンがある。姉とのシーンというか、姉のシーン。ワンカットっていうのかな。「あんたが間違ってるから私が教えてあげてんのよ」って姉が圧かけてるカットだけ。が、ふいに差し込まれる。日常にフレーズだけがぽんと浮かんでくるかんじがすごくリアルで、私はどうしても高一の冬を思い出してしまう。
私は雪国に住んでいたから冬に晴れることなんてめったになくて、だいたい曇るか雪が降るか。晴れた冬の日は晴れた夏の日より街が明るい。地面の雪に太陽光が反射するからだ。リビングにもその光が差し込んでいて、姉にああ言われたときも「眩しいな」と思っていた。前後の文脈は全く覚えていないけどその光景だけはしっかりこびりついている。そしてなんでもないときにふいに出てきて邪魔をする。眩しいと思うのは自分が暗いところにいるからなんだろうな。このあと私が何を言ったかもさっぱり覚えてないけど、たぶん上手く言い返せてはいない。
離れて暮らしている今はもう姉に対して憎しみもないけど、でももし姉がいなかったら私はどんな人生を歩んでいただろうと考えることはある。少なくとも本の書き出しはこんなシーンではない。西野カナのライブだとか、ホテルの屋上のナイトプールだとか、まあその他もろもろスクールカースト上位っぽいシーンだったかもしれない。下位だったので具体的な例はこれで限界。
とにかく違国日記がおもしろくてですね、そのなかに槙生ちゃんが姪っ子に日記を書くのを勧めるシーンがあって、あーそれいいなと思ったので私もやります。続くかな。続かなそう。ていうか今日のも既に日記ではない気はしている。
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