酒林堂八雲2023 10/28 夜公演

主観控えめで客観的な情報中心の記録です。
もはやどこ視点なのかわからない文だし、読むのがダルくなる長さ。
(具体的な流れは記憶飛んでます。順番とか言い方全然違うと思うけど雰囲気だけ感じてください)



15時頃早めに会場へ到着。
会場である洞光寺の閉められた引き戸の向こうからキャストがリハーサルをしている音が漏れ聞こえている。会場に来ている人はまだ5人もいない様子。扉前に移動したもののこんなにセリフもよく聞こえる場所にいたらマズいだろうか、と心配になったが受付から出てくるスタッフに注意されることはなかったので、遠慮なくしかしなるべく音を立てないようにして耳をすませて拝聴。

会場周辺の石畳には一定間隔で貼られた数字が書いてあるテープが見える。
徐々に集まってきた来場者へチケットに記載された整理番号順に並ぶようスタッフが誘導していく。
ある程度整列が進んだ頃。
スタッフも着用している『酒林堂』と書かれた黒い羽織を着た茶風林さんが姿を現し自ら列を渡り歩いて名刺を配り始める。顔なじみと見られる来場者と話す様子。時折名刺をまだもらっていない人はいませんかと声掛けを繰り返す気遣い。その間、約2、30分。
前触れなく来場者に混ざるように木原浩勝さんも姿を見せ、来場者と歓談。背中の白い文字がかすれた年季の入った黒いジャケットを着ている。



16時 開場。
入場口の床にはブルーシートが敷かれていてそこに黒のマジックで書かれた『土足禁止』の文字。
受付でチケットを提示すると整理番号の札がついた洗濯ばさみを渡され、それを脱いだ靴の間にはさんで棚に置く。
棚に置き終わった人から席へ向かう。

公演フロアに響くコオロギのような虫の鳴き声のBGM。
赤いカーペットが敷かれた舞台。周囲には一定の間隔を空けて置かれた座布団とその後ろに数列椅子が並べられている。それぞれ黒い横長のお盆・アンケート用紙や観光案内のパンフレットなどの入った袋が乗せてあり椅子には一部『関係者席』と書かれた紙が置かれている。
席の番号は振られておらず、前方から詰めて座る必要はあるがそれぞれ好きな場所に座る。


開演予定の17時頃、黒いスーツの上から黒い羽織を着た前説のよりふじさとしさんが舞台中央へ登場。島根大学卒業後、会社員をされていたが縁あって声優業に関わっている、といった身の上について明るい声で語る。
続いて注意事項を観客に目を配らせながら説明。
・舞台上の写真撮影や録画禁止(お土産などは周りが移らなければ手元だけ撮影OK)。
・ネタバレに配慮したSNSへの投稿のお願い。
・持って帰っていいのは思い出と物販で買った商品。各席に配られたお盆は持って帰らないように。

前説が終わり止んでいた虫の声が再び流れる。数分してパッと照明が消え会場が暗くなる。虫の声が徐々に大きくなった後フェードアウト。観客の話し声が静まり静寂。


演目 雪女

ろうそくの明かりを伴って上手かみてから茶風林さん(以下◆茶)が登場。

【 ◆茶 衣装
昭和以前を思い起こさせる麻のような白いスーツ、白いパナマ帽。右手に取っ手のついた小さな燭台、左手に茶色の四角いかばん。】


ドアのしまる音。
  八雲「ただいま、セツさん。だんだん日が沈むのが早くなってきたね」
◆茶が小泉八雲として妻セツに語り掛けるように話しながら、手元のろうそくの火を使って4つある行灯のろうそくへ上手側から順に灯していく。
その途中で暗い中を伊藤美紀さん(◆伊)、近藤隆さん(◆近)、鶴岡聡さん(◆鶴)の順に登場。後に◆茶が座る分にあたる下手しもての椅子を一つ空けて舞台後方にある座高が低めの椅子に腰かける。

4つめのろうそくに火をつけ終えた◆茶はセリフを続けながらしゃがんで帽子・ジャケットを脱ぎYシャツの上から作務衣を着る。
  八雲「奇妙な話を聞かせてあげよう」


【 ◆伊 衣装・髪型
薄い水色か緑の入ったようなほぼ白色で床に擦るほど裾の長い和服の羽織。その下は白い洋服。白い靴下。髪は後ろでやや左寄りにしばっている。】

【 ◆近、◆鶴 衣装
白い作務衣。白いズボンの裾には絞るためのように結ばれている紐が出ている。白い靴下。】


配役


  ト書き: 茶風林
  雪女・ユキ: 伊藤美紀
  巳之吉みのきち: 近藤隆
  茂作: 鶴岡聡


  

八雲の声から抑えたトーンで語られるト書きで始まる。
強く吹き付ける吹雪の音。「この吹雪だ」声を張り上げて話しかける茂作。「ええ!」と同じく声を張る巳之吉。
ガラガラと引き戸を閉める音。寒さへの備えがない小屋に2人は入り、ミノを被って眠りにつく茂作。
吹雪の音が再びフェードイン。大層美しい女が現れる。
 ト「少なくとも巳之吉が今まで見たことがないほど美しかった」
女が茂作に息を吹きかけると茂作は死んでしまう。
◆鶴:行灯のろうそくの火に道具をかぶせるようにして火を消す。後方の椅子へ静かにすり足で移動し座る。
 巳「あんた、きれいだね」←近:視線は上方へ向いている。ストーリー全体を通してセリフのない間も目線を動かしたりうなずく仕草を続ける。
 雪「この人は父親?」
 巳「師匠だけど、父親ではない。」
巳之吉は母親が生きていることを伝える。
 雪「あなたが死んだらお母様は悲しむわね。」←ゆっくりとした口調、やや伸ばした語尾。
今回は見逃すと話す雪女。
 雪「ここで起こったことは他の誰にも、たとえ母親であっても決して誰にも話してはいけません。」
その後、小屋で意識のない状態で巳之吉は発見される。回復した後、あの夜のことはしだいに薄れていった。


しばらくして歩いている女性と出会う。
ユ「もっと奥の方に住んでいたの」
ユキとの出会いのやり取り。
2人は恋に落ち、夫婦となって10人の子宝に恵まれ幸せな生活を送っていた。
巳之吉の亡くなった母親はユキへ感謝していた。

 巳「昔、師匠がいて、その時に」
 ユ「その時に?何か不思議なことでもあったの?」←ややかぶせ気味の勢いで。
雪女との約束を思い出す。
 ◆近:笑顔で話していた表情から硬い表情になり、視線を横へ動かす。
 巳「いや、不思議なことはないよ。」
◆近:再び笑顔。
 巳「死んでしまったが、父親のようなものだった」
 巳「お前がいなかったら俺の人生はつまらないものだったと思う」 
再びあの日のことは忘れていく。


夜、あの日と同じ小屋へ着く2人。前とは違い薪が置いてあったり寒さへの備えがある。
 巳「今から話すことはたとえ自分のこどもであっても誰にも話さないと誓ってくれるか?」
あの日の夜について語る。
 巳「あの女は、お前だったんじゃないかって」
吹雪の音。
◆近:視線を上方へ向けまっすぐに見つめる。
◆伊:うつむいて目を伏せ眉を寄せる。←2人の対照的な姿が印象的。
 ユ「あなたは、約束を破ったのね」←悲し気で責めるように大きな声
 巳「だが、俺はお前との約束をやぶってはいないぞ」←強めの語気
 ユ「え?」
 ト「ユキは驚いたように  ~」
 巳「お前は他の誰にも話すなといった。あの時の女がお前なら俺は他の誰にも話していない。」
 ユ「そんなの言い訳です。」
 ユ「どうしたらいいの」←震える声
 巳「お前が黙っていれば済むことじゃないか」
 ユ「雪女の掟はそう甘いものではないのです。」
 ユ「私は掟に従ってあなたを殺さなければなりません。でも私はあなたを殺したくない」
 巳「すまない。やはり話すべきではなかった」←声を震わせる。
 巳「戻ってきてくれるか?」

 ト「ユキは白いかすみとなって天井裏にのぼっていった」
◆近・◆伊:火を消す。
◆茶:火を消した◆伊の後に語り終えて最後の火を消す。
暗転。


パッと照明が付きマイクの傍で立っている4人。
 茶「礼!」
深くお辞儀をする。
 茶「ただ今よりお清めの時間となります」
キャスト退場。
再び暗転。
照明がつく。


お清め

スタッフがマイク・ケーブル・行灯などを回収。舞台中央に赤地に金色の縁や装飾のある台が設置される。台の上には賞状。台の足元には福引きの景品が入れられた段ボール箱。
(昨日10/27、島根県観光大使『遣唐使』に任命された際の賞状。お清め中、そのことについて◆茶が触れる)
下手には床にプロジェクター、その後ろに投影用のスクリーン設置。スクリーンを立てかけるのに苦戦するスタッフ。
お酒などが入った袋が客へバケツリレー式に配られる。
〈袋の中身…6種類が1袋になったおつまみ・李白酒造の日本酒 辛口特別純米酒の瓶『やまたのおろち』・純米吟醸『出雲富士』・升・お手拭き〉


全員に袋が行き渡った頃、上手から◆茶が舞台の中央に登場。

 茶「皆様!忙しいところをありがとうございます!
 人手が足りないということで自分でカンペ作ってきました。
 酒林堂店主の茶風林です。よろしくお願いします。」
◆茶の呼びかけでゲスト◆近)・◆伊、さらに雪女の部でいなかった茅野愛衣さん(◆茅)登場。
 茅「本当は出番じゃなかったんですけどわがままを言って来ました。」


【◆茶 衣装
 着物の上から白い文字で酒林堂と書かれた黒の羽織。白いパナマ帽。】
【◆近 衣装
 白の作務衣の上に黒の羽織】
【◆伊 衣装
 白の洋服の上に黒の羽織】
【◆茅 衣装
 洋服の上に黒の羽織】


マイクの音が入らないアクシデント。
 近「生放送ではないですけど、こういうトラブルもならではです。」
乾杯の音頭で客と一緒に升をかかげた後酒をあおる。
◆近、酒を飲んだ後目を閉じ顔を右下へやや傾ける。
 茅「私まだ仕事してないですね」
◆伊、優しい表情。

お土産に配られたお酒の商品紹介へ。
おだやかな音楽が流れ、しゃがんだ◆茶がカンペを見ながら説明。
◆近◆茅は後方上手側の椅子へ着席して待機。◆伊、後半の準備のため上手へはける。
スクリーンには、マスクと白い衛生帽子・食品工場用の白衣を着た人が長い棒で鍋を混ぜる様子の製造工程や酒瓶と一緒に撮影された黒いわんちゃんの写真などが投影される。
物販で販売されている弁当を作っているお店では獣害駆除によるお肉を取り扱っているという説明中。スクリーンの傍で膝をつき八の字巻きをして整理したりコードのやりとりについて酒林堂総務のメガネをかけたフジオカさん(たぶん)と会話をする◆近。妙に馴染む裏方姿。
お酒のおかわりをお盆に乗せて戻ってくる◆茅。

◆近◆茅、後半の準備のためはける。
 茶「近藤君、茅野君ありがとう!
 …4人の中で一番飲めない人が残りました。」
会場笑い。


プレゼント抽選会へ。
スタッフが用意したスマホアプリのボタンを◆茶が押してランダムで数字を選び、同じ整理番号の客へスタッフを介して景品が渡される。

〈景品〉
・A4より大きいサイズの美保神社の祭事暦さいじごよみ
・ご当地キャラしまねっこ手ぬぐいとペンのセット
・ちびまるこちゃんのキャラはなわくんの靴下
・堀川遊覧船のペアチケット(有効期限なし)
・紙袋に入ったメテオプラザ関連グッズ
・ガンダムマンホールのカード
・松江公演台本風ノート(自由帳)
・李白酒造の酒瓶3本入るトートバッグ
・紺色の李白の前掛け
・全キャストサイン入りポスター 他

(表示された数字とスタッフの発言から客の数は1日目約150人。2日目は約190人)

李白の前掛けを腰に巻いて使用済みにしてしまうお茶目な◆茶。
 茶「へい、らっしゃいらっしゃい!」

抽選会終了。
 茶「お清めの時間をお楽しみください」
◆茶はける。


舞台上の台等が回収される。
再び設置されたマイク・行灯5本。
舞台後方の椅子は6個。椅子の足元左後ろにそれぞれ黒い筒に入ったペットボトル。

止んでいた虫の声が再び流れる。数分してパッと照明が消え会場が暗くなる。虫の声が徐々に大きくなった後フェードアウト。観客の話し声が静まり静寂。
19時頃。八岐大蛇へ。


演目 八岐大蛇

ろうそくの明かりを伴って上手かみてから◆茶が登場。

【 ◆茶 衣装
麻のような白いスーツ、白いパナマ帽。右手に取っ手のついた小さな燭台、左手に茶色の四角いかばん】


  八雲「そこにいるのは誰だい」
右手にあるろうそくの火を使って上手側の行灯のろうそくに火をつける。
  八「そこにいるのはわかっているんだよ」
2つめのろうそくに火をつけ、その後も順番に。
途中で暗い中を吉野裕行さん(◆吉)、◆茅、◆近、◆鶴、の順に登場。後に◆茶が座る分にあたる下手の椅子を一つ空けて舞台後方にある座高が低めの椅子に腰かける。
  雪「(エコー)気付いてたんですか」
雪女との会話。雪女は姿を見せないまま話をする。
5つめのろうそくに火をつけ終えた◆茶はセリフを続けながらしゃがんで帽子・ジャケットを脱ぎYシャツの上から白い作務衣を着る。
  八「八岐大蛇の話をしよう」
◆伊、上手から登場し一番上手側の椅子に腰かける。


【◆吉 衣装・髪型
 黒い革のジャケット。黒い洋服の上下。首には金色で大きめな鎖のネックレス。黒い靴下。
 センター分けで横の髪を垂らして後ろでしばった髪型(2日目公演はしばらず全部下ろしてある)】
【◆茅 衣装
 首まである白い上衣。黒のズボン。朱色で床に擦るほど裾の長い和服の羽織。】
【◆近 衣装
 チャイナ服のような首元・袖にそれぞれ赤い縁取りがされた白いYシャツ。すね辺りで絞ってあるワイドパンツのような黒いズボン(袴?)。シースルーの和服の黒い羽織。黒い靴下。】
【◆鶴 衣装
 白の作務衣。白い靴下。銀のネックレス。両腕に数珠。】
【◆伊 衣装・髪型
 白の作務衣。茶色い縁のメガネ。後ろに真ん中でしばった髪型。】


配役


  村長・ト書き: 茶風林
  スサノオ: 吉野裕行
  クシナダ: 茅野愛衣
  オロチ: 近藤隆
  たたら: 鶴岡聡
  クチナワ: 伊藤美紀


風と雨の音に混じる雷の音。
 ス「姉さん、父さん、あんまりだー!!」
静寂。


出雲にある村。
高天原を追放されたスサノオがやってきて、人々から事情を聴く。
自分は神なのだと伝えるスサノオ。
  クチ「どうせ悪さをして天界から追い出されたんでしょう。」
  ス「するどいな、この女。どう言ったものか。
(咳払い)」
そうではなく、修行のために来たのだと弁解。
ヤマタノオロチに村の女が殺され、オロチを倒そうとした男達も歯が立たなかったと村長。
  村「私の娘はみな殺されてしまいました。残っているのはその娘だけです。」
  ス「しかし、この女は美人だな」
  ス「(エコー)ここでオロチを倒せば姉さんに見直してもらえるかもしれない」
オロチを退治してみせると約束し、オロチを倒したら結婚してほしいとクシナダへ望むスサノオ。
なぜ命をかけるほどのことができるのか疑問に感じるクシナダ。
  クシ「(エコー)自信があるのか、よほどの馬鹿か。あるいはその両方?」


  クチ「やい、この嘘つき。逃げるつもりなんだろう」
  村「なんと失礼なことを」
  ス「いいや、その女の言うことはもっともだ。」
  ス「力を証明するにはどうすればいい」
硬い鱗を持つオロチ。とても硬い大きな岩を割って見せろとクチナワ。
刀を振り下ろす音。岩が崩れる音。
  ス「刀の方が折れてしまう」
  クチ「でも切れるんだね。これなら」
たたらに刀を持ってくるよう命ずるスサノオ。
刀を振り下ろす音。
  た「やはりだめか」
  ス「いいや、これほどの刀は見たことがない」
村人の信頼を得る。


  ス「いい顔をしている」
  た「顔をほめられたことなど一度もない」
  ス「顔の良し悪しの話をしているのではない。目だ。何かを成し遂げようとする強い目をしている。」
オロチを倒すためにたたらの刀を使いたいと話すスサノオ。

スサノオに褒められるたたら。
  た「チッ。ありがとうございます。」←◆鶴、柄の悪いゆがんだ顔がめっちゃ好き


  クチ「全部クシナダ様が背負わされて。かわいそうです。」
  クシ「かわいそう…。本当にそうなのかしら」
  クシ「私はオロチ様のことを愛しています。スサノオ様のことも愛して見せます。」
  クシ「女は自分に恋ができるのよ。」
砂利の上を踏むような音。
くしなだが顔を近づける。
  クチ「いきなりどうしたんですか」
  クシ「私はあなたにだって恋ができるのよ、ふふっ」
  クチ「怖いですよ、クシナダ様」
  クシ「クチナワは堅すぎるのよ」


  クシ「オロチ様が来た。隠れて。」
さがるクチナワ。
酒をあおるオロチ。
  オ「さすがに酔った。寝る」
  クシ「大樽に8杯。オロチ様を酔わせるにはこれだけ飲ませればいいのね。」
大樽に8杯、醸して強い酒を造るようクチナワへ命じる。


  クシ「私は強い人の子どもを産みます」
  ス「強い男。お前は強い男の子どもといった。
  まるで替えが効くように聞こえる。」
  クシ「そうとも言うしそうでないとも言えます。
  男は自分のために生きることができる。
  女はいつだって誰かのため」
  ス「お前は誰のために」
  クシ「生まれてくる子どものためにこの身を捧げます」


  た「炉というものがあり粘土を混ぜて作るのです」
  クシ「何という名前なの?」
  た「名前はありません。」
  クシ「じゃあ『たたら』って名付けましょう」
  た「それは恥ずかしいです」
  クシ「名前は大事よ。自分が死んでも名前は受け継がれていく。」
必ず刀を完成させると誓うたたら。
  クシ「嬉しい。私の心はもうあなたのものです」
  た「俺もです」


  クチ「オロチがきます」
作った酒を持ってくるようにクチナワへ命ずるクシナダ。
◆伊、ろうそくの火を消し着席。

  クシ「刀は完成した?」
  た「まだです。まだ最後の仕上げが残ってます。」
  クシ「どうすればいいの?」
  た「こうするのですクシナダ様!ふんっ」
刀の刺さる音。たたらが自分を刺す。
  クシ「なんということを」
  た「クシナダ様、愛しています。」
◆鶴、火を消し着席。


クシナダはスサノオへ刀を渡す。

  クシ「こんばんは、オロチ様」
  オロチのためにとっておきの酒を用意したとクシナダ。
  オ「罠じゃないのか」
  クシ「まさか」
酒を飲み干すオロチ。

走ってくる音。
  ス「クシナダ、大丈夫か!?」 
  オ「やはり罠だったか。
  俺を愛しているというのは嘘だったんだな」
  クシ「嘘はついていません。オロチ様のことを愛しているのは本当です。」
  私は強い人のもとへ嫁ぐのです。」


競うように酒を飲む流れに。
風と雷の音が鳴り続ける。
2人が愚痴を話す。
  ス「親が仕事を割り振って、姉さんは太陽、兄貴は月、俺は海だってよお!」
  オ「不公平だよな」
  ス「だろお!?」
  ス「姉さんが男の格好して軍勢率いて待ち構えてやがる。」
  ス「俺の何がいけなかったんだ!大便まき散らしたことか?畑をあらしたことか?馬の皮はいで ~ したことか?」
  オ「結局シスコンか」
  オ「おまえはいいよな、姉がいて。俺はずっと一人だ。ずっと一人だったんだよ。
  あいつらは大勢でおそってきやがる。
  俺はさびしかったんだよー!」
  ス「わかる!わかるぞ。」
  オ「わかってくれるかスサ!!」
  ス「わかるともさオロ!!」
同調し合うやり取りが会場の笑いを誘う。
いびきをかいて寝始めるスサノオ。
  オ「お、おい。先に寝ちまってどうするんだよ。
  俺を倒すんじゃなかったのか!?」
◆吉、いびきをかきながら席へ移動して座る


オロチが刀を拾う。
  オ「これはたたらの命が入っているんだろう」
  クシ「どうしてそれを」
  オ「持っただけで伝わってくる。クシナダ、お前のことが好きだったんだと。
  お前はいい女だよな。俺も惚れちまったじゃねえか」←切なげな声
スサノオに勝ったと伝えるオロチ。
  オ「刀を持ってこっちにおいで、さあ」
  クシ「嫌、ダメです、オロチさま」
  オ「いいから。ふっ!」
刀が刺さる音。オロチはクシナダが持つ刀を自分に向けて刺す。
  オ「お前の姉たちのこと、すまなかった。」
クシナダ息をのむ。
  オ「クシナダ、ありがとう」
  クシ「おろちさまー!!」
◆近、ろうそくの火を消す。
顔をうつ向かせて◆茅、静かに泣く声。
  ス「いかん、眠ってしまった。オロチはどうした?」
オロチが死んだことを伝える。
  クシ「あなたがオロチ様の心を開いたのです。あなたは勝ったのです。」
クシナダはスサノオに嫁ぐことに。


  クシ「さあスサノオ様、私のために歌を歌ってください。このアメノムラクモを掲げて。」
  ス「  八雲立つ 出雲八重垣いずもやえがき 妻ごみに
      八重垣作る その八重垣を
      八重垣作る その八重垣を  」

  クシ「早く来て、ほら早く」
  ス「なんか姉さんに似てきたんだけど」
  クシ「なんですってー!!」
平和が訪れる。

◆茶◆吉◆茅:火を消す。
暗転。


照明が付きマイクの傍で立っている6人。
 茶「礼!」     ←
深くお辞儀をする。  ← 3回繰り返す


 茶「本日は誠にありがとうございました」
新型コロナ感染症の影響でなんとかして行えないかと考えたがイベントを諦めないといけなかった4年間の話。
今回やっと開催できたことが嬉しいと◆茶、涙声。
鳴り響く拍手の中、キャスト退場。
暗転。

その後もなり続ける拍手。
照明が付き、◆茶再び登場。
例年の松江公演ではカーテンコールはなく今回初めてとのこと。

キャスト陣によるお見送り(尊死)

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