EU「タクソノミー」の決め方
EUの行政機関であるEU委員会(欧州委員会)が「タクソノミー」に天然ガスと原子力を加えるという案を決定したことが大きな議論の的になっている。
タクソノミーとは下の記事にあるように「何が持続可能かを分類し、EUが掲げる環境関連の目標達成に貢献する経済活動かどうかを示す基準」のこと。つまりこの分類によって、投資が気候変動を抑制するお金の使い方となっているかどうかが判定されることになる。
タクソノミーで持続可能のカテゴリーに分類されれば、その投資先(たとえば原子力発電所やガス発電所の建設・運営)はグリーンということになり、電力会社であれ資金を供与した銀行であれ、社会的評価を得られる(少なくとも批判されにくくなる)。持続可能のカテゴリーからはずされれば、企業はその領域には投資しにくくなる。
この原案が示されたときから、EUの中でも議論はいろいろあり、ドイツやオーストリアのように原子力を持続可能・グリーンと分類することに反対している国もあるし、原子力はよくてもガスには反対している国もある。
さらに、以下の記事で難しいのは、このタクソノミーの決め方。
#NIKKEI
EU法は以下の国会図書館の解説にあるように決められるが、タクソノミーの決め方はこの解説の中にはない、委任立法(Delegated Act: DA)。(日本語では委託法と訳されていることもある。)
国立国会図書館 リサーチ・ナビ 「EU法について」
EU法を施行するために、EU法にもとづいて、その範囲内で、多くの場合技術的な問題について、市民から直接選挙で選出されている欧州議会と加盟国の閣僚から構成されている理事会が行政機関であるEU委員会に施行法を制定することを委任している(正確にはEU官僚が独裁的に勝手なことをやっているという批判に応えるため、構成国の専門家グループの意見聴取をするなど、透明性を担保する手続きも定められている)。
委任法はEU委員会が採択してから通常は2ヶ月以内に理事会と欧州議会のどちらかが否決しなければ、施行される。
理事会で否決するためには特定多数決が必要。これはEU運営条約第238条3項(b)に規定されているように(そもそも委員会の委任法を否定するので、委員会の提案に基づいていない3項(a)(こちらなら15カ国以上の賛成で特定多数が成立)の規定の対象にならない)、理事会構成員(=国の数)の72%以上なので、20カ国となる(かつこれらの国の人口を合わせるとEUの人口の65%以上であることも必要)。欧州議会は過半数で否決可能。
委任立法(Delegated Act) EU委員会による解説(英語)
この委任法は以下の制約の下で制定される。
The Commission's power to adopt delegated acts is subject to strict limits:
the delegated act cannot change the essential elements of the law
the legislative act must define the objectives, content, scope and duration of the delegation of power
Parliament and Council may revoke the delegation or express objections to the delegated act
委任法はEU運営条約(機能条約と訳されることもある:Treaty on the functioning of the European Union: TFEU)第290条に規定されている。
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