行き届きっぷりについて(生沼義朗『空間』書評)
「短歌人」2019年11月号掲載
歌集冒頭の歌。「二〇〇九年一月、都内某大学病院」という小見出しがある。「救急部付事務職」は、組織により付与される地位そのままの表現である。これを、「として」「とされ」のようなかりそめ感・強いられ感のある表現ではなく、「となり」と受け止める生真面目さが、著者の特徴だと思う。「もっとも端」はシニカルな視点を含んでいるが、これも結句の「となる」で、前半の復唱としておさめてしまう。生真面目さが行き届きすぎていて、うっすら異様である。この行き届きっぷ