【コラム】英語の前置詞(立解)とゴシック建築
ゴシック建築では、教会堂の外に、控え壁 buttress と呼ばれる小型の壁を何本も立て、それと教会堂の壁を飛び梁(りょう) flying buttress という細いアーチで結合する技術がある(下図のAが flying buttress)。
https://encyclopedia2.thefreedictionary.com/flying+buttress
先日火災にあったパリのノートルダム大聖堂が、外からみると何本も足をつけているように見えるのも、控え壁と飛び梁によって建物が補強されているから。
飛び梁と控え壁で外部から補強されることによって、ゴシック建築は広く高い内部空間と、明るいステンドグラスの壁を確保できた。
さて、ちょっと面白いことに、英語の立解(前置詞)は飛び梁に似ており、立解に附属する体(前置詞の目的語)は、控え壁に似ている。
格変化の消失(文型の発達)と立解(前置詞)の関係について、次のような指摘がある。
近代英語は、個々の語をほとんど格変化させず、アラビア数字のような位取り的位置関係によって、代表的な格関係のパターンを表現するようになった。これが英語の構解(文型)である。
文型の成立にともない、文型の外にある実体との関係の種類を明示する必要が増した。こうして発達したのが、立解(前置詞)である。
英語は主構造(文型)の外に、<立解+体>(前置詞+目的語)という構造を加えることによって、主構造(文型)の内部を、明るくスピード感のある空間にした言語である。
それは、建物本体の外に飛び梁と控え壁を設置して、教会堂の内部空間を高く明るくしたゴシック建築に似ている。
ちなみに、古英語が大きな変化をとげ、近代英語が生まれていった中英語の時代(1150−1500年)は、まさしくゴシック建築の時代である。
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