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【コラム】 代名詞をなぜ「臨体」と呼ぶか(臨体)

英語は、いったん体(名詞)を登場させてから、それを臨体(代名詞)で呼びなおすことが多い。

John died last year.   He was eighty.  (ジョンは去年亡くなった。80歳だった)

このやり方には、なかなかいいところがある。

ひとつは、体(名詞)を臨体(代名詞)で呼び直すことで、話し手が心のなかの体を手近に引き止めておけること。John を、その場での話し手との関係にたちかえり、he と述べ直すことで、話し手は主体的感覚を維持しやすくなる。

もうひとつは、文中の体(名詞)どうしの関係がわかりやすくなること。John と言った後で再びJohn と言うと、二人のJohn がいるようにも聞こえてまぎらわしい。John の後で he と呼べば、そういう混乱の心配がない。

このように、臨体は「名詞の代わり」をすることがあるので、「代名詞」という名前にもそれなりに根拠がある。

だが、トランス・グラマーでは、代名詞が<その場限りの、話し手と対象の時の関係の種類>をいう概念(名詞)であることに注目して、「臨体」と呼んでいる。

たとえば、話し手がいる場所をいう here や、話し手がいる時の前日である yesterday は、なにかの「名詞の代わり」ではない。だから here や yesterday は代名詞ではないことになり、じっさい、学校英文法ではこれを副詞と教えている。

だが、here も yesterday も、「この文の話し手」からみた、場所や時間とのその場限りの関係を表しているという意味では、 this,  you などと同類の臨体である。

here や yesterday が臨体(名詞の一種)であることを理解すると、near here とか、yesterday’s news など、here や yesterday が名詞としても使える理由がわかる。

Oh, I believe in yesterday.     ( Beatles,  "Yesterday" )

この文は、この文の話し手にとって、そのときの自分自身という関係にある ”I”が、その日の前日である "yesterday" を  believe in する、と言っているのである。

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