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概念は音声・文字を着て語となる

概念は、私たちの頭のなかにあり、それじたいには音も形もない。ちょうど、頭のなかに無色の気体が何種類もあるようなもので、そのままでは区別できない。

そこで、われわれは頭のなかで、概念をそれぞれ小さなビンに入れ、ラベルを貼る。たとえば、「空気」を頭に思い浮かべると、そのビンには "air " というラベルがついている。この頭のなかのラベル(音声・文字の原型)を「脳内テンプレート(型版)」とか表象という。

私たちはこの表象(型版)を手がかりにして、概念を現実の音声・文字つまり表現にする。

「自分が話したいことを決めた時点で、人の脳にはうっすらとしたテンプレートが浮かび上がります。意識してもしなくても、です。それをそのまま伝えるべく声にするわけです」(山﨑広子『人生を変える「声」の力』NHK出版、2017年、103頁)

概念にはもともと音も形もない。だからそれを表現する音や形には、いろいろなバリエーションがありうる。 

「進め」という概念を青信号で表すこともできる。「空気」と "air" のように、同じ概念を違う音声・文字で表現もできる。だから、概念を仲立ちにして、ある言語の表現を別の言語の表現に移し替えることも可能である。これが翻訳である。


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