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アメリカで広がる人種差別抗議デモの背景

ミネソタ州ミネアポリスで、一人の黒人が白人の警官に首を押さえられて窒息死した事件をきっかけに、アメリカ各地で抗議デモが広がっている。

コロナ問題で社会に鬱積した気分があったところに、権力による人種差別的行為の実写ビデオが拡散し、トランプ大統領の差別肯定的な発言や弾圧宣言にあおられるかたちで、事態がエスカレートした。

タイムの記事によると、この白人警官は、市民から十回以上抗議を受けた記録があったが、ミネアポリスの警察当局は対応していなかったという。

身内を守ろうとする傾向は、どの組織にもありがちなこと。ミネアポリス警察は、ほんの一例だろう。

抗議デモに参加している人々の映像をみると、黒人ばかりでなく、いろいろな人種が混じっているようにみえる。私などは、そこにアメリカ社会の希望があるような気がする。

ついでながら、この記事には the が効果的に使われている部分がある。

If the video was the match and the coronavirus was the kindling, Donald Trump provided the kerosene. (the の太字は引用者)

あのビデオがマッチで、コロナがたきつけの木材だとしたら、トランプは灯油を提供した、ということだが、短い文にthe が五回。

the は、書き手が心に描いている世界のなかで、それが以前からすでに定着していることを表して、文の世界を具体的にする。

この場合、全米に抗議の火が着いたという現状を心の世界にしたとき、そこではビデオもマッチもコロナもたきつけも灯油も、すでに特定した具体的なものとして定着しているということであり、報道文らしい臨場感が感じられる。

アメリカでは、二日に一人余りのペースで警官が黒人を殺している計算になるという。

アメリカのように銃器が正当化されてきた社会と、そうではない日本のような社会では、問題の現れ方が違ってくる。

だが、偏見とか暴力といった問題の本質は、人間社会に共通のものがあると思う。

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