英語の所有格おそるべし
科学の法則とか原理の名前は、英語でどう表現するか。
まず、the の有無によって二種に分けてみると、
①
Archimedes' principle(アルキメデスの原理)
Pascal's principle(パスカルの原理)
Mendel's laws(メンデルの法則)
このように、人名が所有格になっている法則名には、the がない。
②
the law of gravitation(万有引力の法則)
the law of inertia(慣性の法則)
the theory of evolution(進化論)
the general(special) theory of relativity(一般(特殊)相対性理論)
このように、人名がない法則名は、the がついて正式名称になる。(ただし会話などでは the なしで済ませることも多い)
では、人名は入っているが、所有格になっていない場合はどうか。
③
the Doppler effect(ドップラー効果)
the Archimedean principle(アルキメデスの原理)
the Copernican(Ptolemaic) theory(system)(地(天)動説)
the Copernican revolution(コペルニクス的転回)
the Pythagorian theorem(ピタゴラスの定理)
これらは人名が所有格になっていないため、歴史的な特定性(唯一性)を表すために the が必要になっていると考えられる。
(以上の実例は『続・これを英語で言えますか?』講談社インターナショナル、2001年、160‐161頁より)
英語の所有格は、人格のあるものがなにかを所有しているという人格性(いわば固有名詞的な個性)を示唆するので、theが不要になる。
所有格は一見わかりやすいので、使い方に無頓着な人がいるが、ある人がある対象を排他的≒人格的に支配しているときは the ではなく、所有格を使うことは立派な<文法>である。
You didn't sort your garbage.(ゴミを分別しなかったね)
これを
You didn't sort the garbage.
とすると、場面によっては誰のゴミかが特定せず、たとえば「そのゴミ捨て場にあったゴミを分別しなかった」のように、文意が変わってしまう。
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