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英語の発音が「学校によってちがう」という話

かつて著名だった哲学の研究者に、古在由重(こざい・よししげ 1901-1990)という人がいて、この人の回想を読んでいたら、英語の発音の話がでてきた。

大正の中ごろ、この人は旧制の第一高等学校(いまの東大教養部)を受験して合格したのだが、入試では数学はできたが英語が「まったくだめ」だったと書いている。

なぜ英語ができなかったかというと、教師が読む英語を書きとる試験で、

「その高校の(試験官の)先生が、私たちの中学校の先生の発音とぜんぜん違うんです。...だから、ぜんぜんわからないのです。」(古在由重『教室から消えた先生』新日本出版社、1982年、116頁)

合格したあと、中学校の英語の教師に会うと、

「英語だけは満点だったろう」

と言うので、それはちがいます、「とくに書きとりは、先生の発音とその高校の教官の発音とがぜんぜん違うんで、ほとんどできませんでした」と答えた。

するとその英語の先生が、

「いやあ、発音というのは、学校によっていろいろ違うからなあ」と言ったのをいまだに覚えています。117頁

発音が「学校によっていろいろ違う」と平然と言ったところが面白い。

大正時代だから、もう100年も前の話だが、さて、100年後のいま、どれほど状況は変化しているのだろう...

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