「ローマの休日」のラストシーン
「ローマの休日 Roman Holiday」(1953年)。
いまや古典的名作のひとつ。
ヘップバーンの可愛さと成長のほほえましさはもちろん、24時間の「休日」という限定感、古都ローマの風景、イタリア人の陽気さとアメリカ人のビジネス第一主義、ちょっとしたお色気、哀愁、気の利いたエピソード、そしてわかりやすいストーリー。
セリフがわりと教科書的できちんとしているので、いまも英語の学習に使う人がいるようだ。
ところでこの映画、最後に日本国憲法九条の精神が描かれている。
平民?のアメリカ人記者と「ローマの休日」を過ごしたアン王女は、記者会見で質問を受ける。
"What is your outlook for the friendship among nations?"
みたいな質問に、王女はこう答える。
”I have every faith in it [=the friendship among nations], as I have faith in relations between people.”
「nations どうしの友好」という国家レベルの質問に、王女が 「それは people どうしの関係がかなめ」という庶民的目線で答えたので、お付きの者たちがあわてるシーンである。
「国どうしの友好関係は、人と人との友好関係あってのものです」
これは、政府どうしの打算よりも「諸国民の信頼」こそ平和の基礎だと喝破した日本国憲法前文の精神と同じである。
ローマで庶民の生活を体験し、若い王女は成長した。その体験じたいはとるにたりないかもしれない。
しかし、王女が述べたこの言葉に宿る真実。それが、この映画の眼目である。
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