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【コラム】 なぜ on yesterday と言わないか(臨体)

英文法の本には、<時と場所の副詞が名詞的に用いられることがある>と説明してあるものが多い(たとえば、安藤貞雄『現代英文法講義』開拓社、2005年、522-523頁)。

じつは、これは誤解にもとづいた逆だちの説明。

正しくは、<時と場所の臨体(代名詞は)、文中で様相(副詞)として使われることが多い>ということである。

上記の安藤貞雄『現代英文法講義』には、次の例文が載っている。

He left there yesterday.

I have lived here since then.

こうした例は、副詞 there や here が名詞的に使われている例だと説明されている。

だが、here や there はもともと副詞ではない。

話し手がいる場所は here、話し手がいない場所は there で、両方とも名詞の一種(臨体)である。だから上記の文は、here, there  の本来の使い方なのである。

near here とか、from there などと言えるのも、here, there がもともと臨体(代名詞)だからである。

yesterday も、話し手 ”I” のいる日の前の日をいう臨体(代名詞)だから、

yesterday's newspaper

などと所有格が使える。

もちろん、じっさいには here や there は構解(文型)から外れた様相(副詞)として使うことが多い。

これは、文のレベルでは、時や場所の臨体は構解(文型)の外に置き、様相(副詞)として扱うと便利なので、そういうやり方が定着したのである。

臨体は、話し手との直接の関係をいう概念なので、文中で不必要に立解(前置詞)を使って、話し手から疎遠になる(間接化する)ことは好まない。だから、

x Come to here.

とは言わないし、x on yesterday と言うこともない。


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