サムライの気品が世界に通じた(その1)
サムライがアメリカ人に話した最初の英語は、
"I can speak Dutch!"
だったという話がある(明石康・NHK「英語でしゃべらナイト」取材班『サムライと英語』角川書店、2004年、32頁)。
ペリーの黒船に、小舟で近づいた幕府の通詞・堀達之助が叫んだ言葉だ。
アメリカ人と英語で話すと交渉上不利になるし、かといって何語で話せばいいかも不明だったため、フランス語なども試したあとで、こう言ったらしい。32頁。
オランダ語なら話せるぞと、英語で叫んだところがちょっとユーモラスだ。
このように、相手と対等の立場で話そうとするサムライの戦略を、すぐれた外交センスのあらわれと本書は賞賛している。
実際、ペリー一行とわたりあったサムライに魅力があったことは確からしい。帰国後のペリーが、こう書いている。
「世界のどこでも、ヨーロッパですら、日本人のように自然な優雅さと威厳をもつ人々に会ったことがない。ことに身分の高い人々の物腰はみごとであった。 I have never met in any part of the world, even in Europe, with a people of more unaffected grace and dignity, and especially in the bearing of the nobility.」(前掲書、62頁)
今も残るサムライの写真をみると、彼らは無表情だが気品がある。上記はおそらくペリーの本音だっただろう。
ひいき目かもしれないが、いまの日本人にもペリーのいう「自然な優雅さ unaffected grace」があるように思う。
少しぐらい英語が話せることよりも、態度の優雅さ、対等の立場をとろうとする気品のほうが印象に残ることがあるのだ。
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