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「英単語帳」は堂々めぐりの日本語世界

<英語の単語を覚えるということは訳語(日本語)を覚えることだ>

中高生の間でかなり蔓延しているらしいこの発想は、教師がそう明言しなくても、生徒のほうでそう思い込む条件がそろっている。

教室でおこなう単語テストとか訳読形式の授業とか、テストの英文和訳問題とかによって、<英単語=訳語>というイメージが植えつけられていく。

「訳さなければ英語をやったことにならない」と思っているので、英語の教室は、日本人による日本人のための日本語の世界となる。それは日本語が通じない人と共有できる英語の世界ではない。

じつは、近代日本語の語彙の多くは英語からの翻訳語なので、英語の単語帳は日本語の学習帳でもある。

ためしに、手元の受験用英単語集を開くと、

constitute    構成する

embody    具体化する

といった具合に、英単語と、そこからつくった近代日本語がたくさん並んでいる。これは、英単語をつぎつぎに漢字語に翻訳していった日本語の歴史を、現代の若者が追体験しているのだともいえる。

生徒は、これで英語を学習している気分になっているだろう。なるほど、アルファベットの部分は英語の外観をしている。だが、この外観のなかに入れる概念は、日本語である。

こうして英語と日本語を一語ずつ対応させた「単語帳」型の学習は、けっきょく日本語に閉じ込められる可能性が高い。

この悪循環を脱する方法が、切に求められている。


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