認知言語学の本は英語の学び方の本ではない
このごろは認知言語学と呼ばれる理論が流行している。
認知言語学をリードしているのは英語ネイティブであり、おもに英語を素材にして言語を論じているので、言語学といってもじっさいは英語論といっていいようなところがある。
日本人の研究者も英語ネイティブが提唱した認知言語学を学び、解釈し、成果を発表している。
そこで、無意識のうちに私たちは勘違いすることがある。
認知言語学の成果を読む一般の日本人は、これは英語を身につけるにはどうしたらいいかについての話だと思いやすいのである。
じつは言語学者の英語論は、「われわれはこの英語からこういう認識を得ている」と自己解説しているのであって、英語を習得するにはどうしたらいいかを直接論じているのではない。
たとえそういう本に「こうすれば英語がわかる」と書いてあっても、それは自己理解の自己解説であって、直接には英語学習者のための研究ではないのである。
ほかに、第二言語習得論という分野もある。こちらはいかにも英語教育学をサポートしてくれそうな名前をもっている。
だが、第二言語習得論も、人間が母語以外の言語をどう習得しているかを客観的に調査している学問で、英語教育の改善に直結するとは限らない。
つまり、認知言語学も第二言語習得論も、ネイティブや、すでに英語がわかる人による自己解説であり、英語教育論そのものではない。
認知言語学も第二言語習得論も、われわれ非ネイティブがどのように英語を習得したらよいかという実践的問題に、直接答えるものではないのである。
その証拠に、私たちが学校で学ぶ文法は、あいかわらず100年以上も前の学校英文法であって、認知言語学による文法ではない。
そこで、個人的な体験にもとづく英語学習法の主張や、体験主義の英会話学校が不足部分を埋めることになる。
これが日本の英語学習の現状であるように、私には見える。
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