見出し画像

湯れづれ草【常連さんとのふれあい】

銭湯初心者にとって、たぶんハードルの上位に来るのが「怖い常連さんになんかで怒られたらいやだな」という逡巡だと思います。

私はどちらかというと人見知りな方だし基本陰キャなので、銭湯に行って楽しそうにしているひとが複数いたら、無意識にその人たちを避けて座りますし、このご時世もありなるべく近くに寄らないようにしています。

でも、ソーシャルディスタンスをとっても、心のディスタンスは近いままな時もあり、時々にんまりしたり心が温かくなるふれあいがあったりします。

お腹が縞々

とある下町銭湯にお邪魔した時のこと。開店直後の常連さんがひと段落ついた夕方早めの時間帯だったからか、私の他には、浴槽のすぐ横に陣取った常連さんらしきご年配の女性ひとりだけ。恰幅が良く、ダイナミックにザバー、ザバーと洗面器のお湯を使う姿に何となく気圧されて、特に近づくこともなくちょっと離れて浴槽のお湯につかったら、飛び上がるほど熱い!

「うわ」と漏れ出た声が聞こえたのか、そのダイナミック常連さんは「熱かったら、水出していいよ」と声をかけてくれました。

ありがとうございます、でも多分大丈夫ですとお礼を言ってお湯につかり、しばらくするじわーんとお湯に体が馴染んで「はああああ〜」という声が出てきました。気持ちいい…。

ひとしきりあつ湯を堪能して、湯船から上がってみると、お湯に接してる体表面と身体を折り畳んでお湯に接していない面がくっきりピンクと白になっていて、お腹も3段腹的に折り畳まれているところが白く、お湯に浸かっているところはピンクだったので、お腹が鮮やかなピンクと白の縞々になってました。思わず吹き出したら、常連さんと目があったので、「見てこれ」と縞々のお腹を突き出したら常連さんにも吹き出されました。ほのぼの。

ドライヤーのお裾分け

以前、「10円玉を入れて動くドライヤーを、乾かし終わった常連さんが『まだ制限時間来てないから、ドライヤー使えるからどうぞ』とお裾分けしてくれる」って話を聞いたことがあって、私はまだ出会ったことないなあと思ってたら、ある銭湯で常連さん同士で脱衣所で談笑している中服を着ていたら、突然声をかけられ、「ドライヤー、まだ余ってるからどうぞ」と差し出されました。

「いいんですか?ありがとうございます」と受け取って、30秒しないうちにスイッチが切れたら「あらー、ごめんねちょっとで」と逆に謝られました。いえいえ、助かりますーありがとうございますと答えて自分でも10円玉を入れ、何ともほんわかした気分になりました。

水風呂前におばあちゃんに捕まる

とある銭湯でサウナから出て、カランのお湯を何回か浴び、さあ水風呂に入るぞというところで、おばあちゃんに声をかけられました。かけられた理由は何だか忘れてしまったけど、とにかくその後怒涛のトークが始まり、娘さんがいかにギリギリで結婚したか、でも結婚して私を置いていったから私は寂しい一人暮らし、誰も私のことを構ってくれないという悲しいトークが体感10分は続きました(その間、もちろんお互い全裸)。こっちは水風呂に入りたくてたまらない状態なので早く解放してほしくて、相手を持ち上げてみたり、気のない返事をしてみたり、同調してみたり、色々試してみましたが、動かざること山の如し。恐らく話し相手が欲しかったんだろうなと思います。

そのうち私も身体にこもった熱で少しクラクラ来てしまって、たまらず「あの、水風呂に入ってきます」と話をぶった斬り、そそくさと水風呂に逃げ込みました。水風呂の中ではぁーと息をつきながら、「でも私も寂しいなと思う時銭湯来るしなあ。途中で話を無理やり切り上げて、申し訳なかったな」と少し反省して、水風呂から上がっておばあちゃんを探しましたが、もう上がっているようでした。次にまた会ったら続きを聞こう、と思いました。タイミング悪くてごめんなさいね。

泣いてる赤ちゃん

浴槽に浸かっていたら、赤ちゃんを抱いたお母さんが入ろうとしていたのですが、赤ちゃんは顔を真っ赤にして泣き叫んでいて、お母さんが困っている様子。「怖いかなあ〜、お湯は気持ちいいよ」と声をかけてみたりしたのですが、知らない人に話しかけられて一瞬怯むものの、またお母さんを見て泣き出しました。

お母さん、大層恐縮している様子だったので、「お母さんも入りたいでしょうし、すこし代わりに抱っこしてましょうか?」と申し出ようかとも思ったのですが、このご時世にそれも嫌がられるかなあと横で必要以上にニコニコしながら入浴するだけになっちゃいました。

あの時はどうするのが正解だったのかなあ、と友達に言ったら「何かお手伝いできることはありますか?」って訊いたらよかったんじゃない、と教えてもらい、目から鱗がポロポロ落ちました。たしかに、それなら相手がしてほしいことを効率的にお手伝いできる!

今度会ったら待ってましたとばかりにドヤ顔でそれを訊いちゃいそうです。

お風呂de一期一会を楽しめますように

銭湯は公共の場でありながら全員が素っ裸、という他に例を見ない珍しい場所なので、普通のマナーとはちょっと違うところもあるけれど、基本は対人間。面白いこともあるし、時には困っちゃうこともあるけど、普段だったら絶対に出会えないだろう色んな人に出会える場所として、私はいつも一期一会の出会いを面白く体験させてもらっています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?