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スキー教室の思い出

中2の冬、学校単位で開かれた2泊3日のスキー教室に参加したことがあった。小学生の頃からサッカーを続けていて、ボールを蹴る行為や体力には自信があったが、それ以外のスポーツはからっきしで興味もなかった。ましてやスキーのようなレジャースポーツは、そもそも親と遠出する習慣すらほとんどなく、自分にとっては縁遠い存在だった。ただ、普段の授業とは異なり、泊まりがけで友達と過ごすことができ、スキーという未知なる体験も楽しみにしていた。

話は変わるが、当時好きだった同級生の女子がいた。クラスも部活も別なので普段接する機会は多くなく、自分の奥手な性格もあり、積極的に話しかけにいくことはなかった。ただ、彼女のことがとても気になり、どうにか付き合えないかと寝るまでメールでやり取りし、言葉にならない思いを伝え続けた。やり取りの中で、相手から届いた返事の内容に一喜一憂したり、内容を打ち込んでからメールを送ろうか送らまいか悶々としたりした(付き合う前の男女間の連絡交換の例に漏れず)。しかし、何より彼女のことを考える時間が楽しかったし、少しでも繋がっているという関係がただただ嬉しかった。

スキー教室では最初にインストラクターから滑り方を教われば、滑ること自体はすぐに覚えられると聞いていた。また、滑り慣れたらクラス毎に班で分かれなくても、自分の好きなように行動して良いとのことだった。実際、経験者は初日から急な斜面にアタックしていたし、自分も自分で不慣れなナリになんとなく滑っていたら、初日でコツは掴めた。2日目には男女問わず仲の良いメンバーと一緒に行動していた。もちろん、気になる相手とも一緒に滑る機会を伺っていた。前に書いた通り、普段の学校生活なら気軽に声をかけられなかったが、スキー教室という非現実的な空間で、自由に過ごせる時間も多く、何とか彼女との距離を詰めたいと思っていた。ただ、中学の一学年単位で、自分を含め各々が思い思いに滑っている状況で、彼女の姿を遠くで見かけることはあっても、近づくタイミングは中々訪れなかった。

そうこうしている間に、既に朝から何本滑ったかわからないくらい時間が経っていた。再び頂上を目指し、友達と一緒に滑ろうとリフトに乗り込んだ。もう昼過ぎだったと思う。平日ということもあり、同じ中学の団体以外に辺りに人はあまりおらず、活気のないゲレンデでは、せいぜい流行りの曲が一面に響くことくらいしか気に留めるようなこともなかった。

ふと前方に目を遣ると、一つ前の滑車には、彼女と、自分とは絡みはないが存在自体は認識していた他のクラスの男子が2人で腰掛けていた。それを見て多少妬いたが、取り立てて意識することはなかった。それだけで済めば良かったが、自分の横に座っていた友人から、前の滑車に座っている2人が付き合っていることを思いがけず聞かされた。そんな話は初耳で、もちろん驚いたが、変に動揺したリアクションで自分の気持ちを友達にまで悟られるのは惨めすぎると思った。横にいる友達に目を向けることもなく、彼女を見つめたまま「そうなんだ」と空返事をしたのを覚えている。

空は雲一つない快晴だった。ぼーっとしながら、何の感情もなく滑車が進むのを待っていたが、まだ頂上は遠い。視線は先ほどと同じ、彼女に向けたまま。そんな中、ふと知っている曲がかかった。

当時、この曲の入ったアルバムの発売から間もない時期で、MTVでPVがかかっているのを聴いて知っていた。「Thinking About You」というタイトルから、何となく自分と彼女との関係を当て嵌めて好きになった曲だった。よくよく聴くとわかりやすい失恋ソングなのだが、当時はその意味を理解していなかった。ゲレンデで失恋を味わった後はと言うと、リフトを降りて滑ったことも、その後のスキー教室で何をして過ごしたのかすらも思い出せない。

だから、スキー教室の思い出は、一生ノラ・ジョーンズとセットだ。(余談にはなるが、この「Thinking About You」という曲が入っているアルバムのタイトルは「Not Too Late」である)

っていう話をしたかったから、今回の初投稿にぶっこみました。(知り合いのnoteの投稿をこっそり見たり、音楽に絡めた自分の話しは今月号のポパイの影響も大でございます。。)

ここまで文章をまとめて書くのが久々で、結構時間かかっちゃいました。。でも書いたり推敲したりするのって、自分の考えを整理することとリンクしてスッキリするし、案外楽しいものですね。次はもっと気軽に書いてみまーす。宜しくお願いします。

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