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Geert Vanden Bossche によるCovid 19 パンデミックの進化に関する予測

Dr. Geert Vanden Bossche 2022年3月30日投稿
Geert Vanden Bossche Predictions on evolution Covid 19 pandemic
の翻訳です。機械翻訳に基づきます。原文を参照の上ご利用ください。

(注:長い上に難解なので、再読して修正入れる可能性ありますが、一通り完成しています。2022/5/3)
2022/7/24記載:2022/5/9に改訂版が投稿されていますがそちらの翻訳はまだできていません

目次

  • はじめに

  • 概要

  • なぜ、このような呼びかけをするのか?

  • なぜオミクロンは、長い間期待されていたこのパンデミックの終着駅ではないのだろうか?

  • 公式の「専門家」は何を語っているのか?

  • 今回のパンデミックの疫学が教えてくれるもの

  • ワクチン接種者が感染しても、死亡はおろか重症化することもほとんどないのに、なぜ集団免疫の欠如を気にしなければならないのか

    • - 現在の疫学的状況では、すぐにでも集団免疫につながるという希望もない

    • - 他の呼吸器疾患、他のウイルス性疾患、さらには癌の発生率の上昇に関する報告が着実に増えていることからもわかるように、ワクチン既接種者の免疫抑制がより一般的になる兆しがある

    • - ワクチン接種率が高い集団はオミクロンの病原性に免疫圧力をかけているという十分な証拠がある

  • ウイルス感染性に対する宿主の免疫反応は、現在進行中のパンデミックにおけるSC-2の進化的動態について何を教えてくれるのだろうか?

  • ワクチン接種者の感染に対する感受性が高まることと、病気に対する感受性が低下することの間に因果関係はあるだろうか?

    • − 中和能力の低さは、ADEIの感受性を高める

    • − 中和能力が低いと、重症化しにくくなる。それは「トランス感染」能が低下し、その結果「トランス細胞融合」が減少し、全身性疾患/重症化となる可能性が低下するためである

    • − 「トランス感染」能の低下は、「トランス細胞融合」の低下につながり、全身性疾患/重症化となる可能性を下げる

  • SC-2は、その保存された感染促進性のNTD部位にかかる免疫圧から逃れ、かつ、オミクロンに勝る感染性を同時に達成できるのか?(できるとしたら、どのようにして?)

  • RBDのO-グリコシル化は可能か、また、現在のウイルスの高い感染力を損なうことなく、保存された感染増強性NTD部位を遮蔽する論理的な方法となりうるか?

  • O-グリコシル化の方がN-グリコシル化より可能性が高いのはなぜか?

  • O- グリコシル化部位変異体は、「トランス細胞融合」を可能にすることによって、ワクチン既接種者におけるウイルス感染力の増強と病原性の低下を切り離し得るか?

  • O-結合型糖鎖は、どのようにしてワクチン既接種者に対するウイルスの病原性を促進するのか?

  • O-結合型糖鎖は、C-19ワクチンへの耐性も可能にし、その結果、ワクチン既接種者に対する高い感染力をもたらすのだろうか?

  • 部位特異的なO-グリコシル化は、ウイルスの表現型にどのような影響を及ぼすだろうか?

  • O-グリコシル化Newco変異体はワクチン接種率の高い集団でどのように進化し、個人と公衆衛生にどのような影響を及ぼすのか?

  • より病原性の高いSC-2変異体が優勢になるまでに、どれくらいの時間がかかるだろうか?

  • なぜか?

  • ワクチン非接種の健康な人では、O-グリコシル化Newco変異体は無症状から軽症の疾患を引き起こすのみである。

  • なぜC-19ワクチン既接種者は、循環する変異体がワクチン抗体の中和能力に対して耐性を持つようになると、関連する自然免疫細胞に頼れなくなるのだろうか?

  • 自然からの教え

  • このパンデミックの初期(つまり免疫的にナイーブな集団に)に生きた(弱毒化した)ウイルスのワクチン接種を行っていれば、同じように破滅的な道をたどらずに済んだと考えられるのはなぜか。

  • 急性自己限定性ウイルス感染症のパンデミックは、公衆衛生の観点からどのように監視されるべきか?

  • 結論

  • 付録


略語一覧

ACE2:アンジオテンシン変換酵素2 (Angiotensin-converting enzyme 2)

ADED: 抗体依存性疾患増強(Ab-Dependent Enhancement of Disease )

ADEI: 抗体依存性感染増強 (Ab-Dependent Enhancement of Infection)

ADII: 抗体依存性感染抑制 (Ab-Dependent Inhibition of Infection)

CoV: コロナウィルス(Coronavirus)

DC-SIGN:樹状細胞特異的細胞間接着分子3結合性非インテグリン (Dendritic cell-specific intercellular adhesion molecule-3-Grabbing Non-integrin)

L-SIGN: 肝/リンパ節特異的細胞間接着分子3結合性非インテグリン(Liver/ Lymph node-specific intercellular adhesion molecule-3-grabbing non-integrin)

(S)-NTD: (スパイクタンパク質の)N末端ドメイン (N-terminal domain on spike protein)

(S)-RBD:(スパイクタンパク質の)受容体結合ドメイン(Receptor-binding domain on spike protein)

(S)-RBM: (スパイクタンパク質の)受容体結合モチーフ (Receptor-binding motif on spike protein: 宿主標的細胞上のウイルス受容体であるACE2と直接接触し相互作用するRBD内の領域)

スパイク: スパイクタンパク質
S: スパイクタンパク質

SC-2:SARS-CoV-2ウイルス

SIGLEC1: シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン1 (Sialic acid–binding immunoglobulin-like lectin 1)


言葉の定義

その相対的な濃度、および、どのようにスパイクが許容性細胞に提示されるか(即ち、上気道で典型的にみられるように自由な(遊離)ウイルス粒子として提示されるか、下気道でみられるように宿主樹状細胞や標的細胞に結合したウイルス粒子として提示されるか)次第ではあるが、特異性の異なる抗体(即ち、RBD、RBD内のRBM、またはNTD内の可変性エピトープあるいは保存されたエピトープに対するものであるかどうか)はウイルスの感染挙動にそれぞれ異なる影響を与え、ウイルスを中和することもあれば感染性を増強することもある。

例えば、抗RBM中和抗体は、高レベルのACE2を発現する細胞(典型的には上気道に多い)に対する遊離SC-2ウイルス感染の阻害を促進し(抗体がACE2依存性のウイルス侵入を阻害する)、それによって上気道における感染を妨ぐ。一方で、これらの抗体は、下気道または遠隔臓器においてSC-2感染細胞と非感染標的細胞との間の細胞融合を促進する(これは、抗体が細胞表面に発現したスパイクのACE2非依存性、融合性再構成を増強することによる)。このような「トランス細胞融合」はC−19の全身性疾患を増悪しうる。非中和性非増強性抗NTD抗体も同じメカニズムによって、下気道においてSC- 2感染細胞と非感染標的細胞との間のACE2非依存性「トランス細胞融合」を促進すると思われる。

対照的に、非中和性増強性抗NTD抗体は、ACE2を高発現する細胞(典型的には上気道に多い)に対する遊離SC-2ウイルスの感染を(抗体がACE2依存性ウイルス侵入を増強することによって)促進し、それによって上気道での感染を増強する。まさに同じ抗体が、下気道や遠隔臓器においては、ウイルスをくっつけて遊走する樹状細胞と非感染の標的細胞との間の「トランス感染」を妨げる(これは、遊走する樹状細胞の表面にくっついたウイルス上のスパイクのACE2非依存性の融合性再構成が抗体によって妨げられることによる)。このようにして、全身性のC-19疾患を促進する「トランス感染」が阻害される。

(例えば、オミクロンのワクチンに対する抵抗性の結果としての)ワクチン由来抗体の中和力の著しい低下が、重症化率を低下させる一方で、抗体依存性感染増強(ADEI)を促進している理由はこのように説明できる。

トランス感染(trans infection): トランス感染とは樹状細胞表面にくっついて運ばれているSC-2ウイルス粒子による増殖性感染を指す。これは、スパイク表面のN-結合型糖鎖が樹状細胞表面のC型レクチン受容体に結合することで、標的細胞の細胞膜上の脂質ラフト内のシアロガングリオシドと結合性のあるNTDのポリペプチド領域が露出することで引き起こされる。この相互作用により、スパイクタンパクの融合性再構成が可能となり、その結果、RBMとACE2受容体の結合が促進されると考えられる。

トランス細胞融合 (trans fusion):トランス細胞融合とは ACE2非依存的にSC-2感染細胞と非感染の隣接細胞が融合することであり、その結果、合胞体が形成され、標的臓器の細胞間感染が促進される。


タイトル

C-19ワクチン接種率の高い集団では近い将来Sars-CoV-2スーパー変異体が急激に拡大する可能性がある。その変異体とはワクチン既接種者に対し高い感染力と高い病原性を持ち、既存のそして将来のすべてのスパイクベースのC-19ワクチンに完全に耐性を持つものである。


キーメッセージ

今後、SARS-CoV-2(SC-2)の高毒性かつ高感染性変異体が、世界中のワクチン高接種国で急速かつ独立に出現し、まもなく高速で拡散することになると、私は真剣に予想している。私は、現在のワクチン既接種者の比較的軽症で反復感染をするというパターンが、まもなく悪化し、重症化と死亡に取って代わると予想している。残念ながら、ワクチン既接種者はコロナウイルスから身を守るために自然免疫システムの助けを借りることはできない(1) 。感染力の強いオミクロン株の蔓延によって感染増強性のワクチン由来抗体が継続的に想起されて増えるため、ワクチン既接種者では関連する(2)自然免疫系のIgM抗体は、ワクチン由来抗体に常に圧倒され続けてしまうからである。一方、ワクチン非接種者においては、オミクロンの高い感染力のおかげで自らの自然免疫防御力を鍛えることができるうえ、新規SC-2変異株の感染力と病原性は、ワクチン非接種者の血中に感染増強性の抗体がないため減弱することになろう。ワクチン接種率の高い国で大規模な抗ウイルス薬による予防キャンペーンを直ちに実施しない限り、間違いなくパンデミックの終焉は甚大な人命と引き換えとなるだろう。


(1) おそらく他のいくつかのグリコシル化エンベロープウイルスや、感染細胞や病的に変化した細胞の表面に発現する他のグリコシル化コンポーネントに対しても自然免疫の効果は期待できないと考えられる
(2) ここで「関連する」という語を使っているのは、多特異性であるとはいえ、すべての自然免疫系抗体がCoV(あらゆるタイプのSC-2変異体を含む)を認識するわけではないと考えているからである。

はじめに

「より感染力の強い」変異体は、ワクチンによる中和抗体による感染防御を突破することが報告されている。ワクチン既接種者は現在、より感染しやすくなってはいるが、なおワクチン中和抗体によって重症化することはほとんどない。しかし、一部のワクチン高接種国(英国、イスラエル、韓国など)では、完全なワクチン接種者が入院する事例が報告されるようになってきている。このことは、現在、C-19ワクチンによる防御(重症化に対する防御)を突破する新しい変異体が現れつつあり、より毒性の強い変異が組み込まれてオミクロンに取って代わるのは時間の問題かもしれないことを示唆している。このパンデミックの進化のダイナミクスから、集団ワクチン接種が、より感染力の強い免疫逃避変異体の蔓延を促進し、自然のパンデミックの経過を変化させたことが強く疑われる。この大規模な予防接種プログラムによって引き起こされた集団レベルの免疫圧力が、現在の臨床的・疫学的観察を説明できるかどうか、またどのように説明できるかを検証することは重要であり、この知識は今後、この人的介入が個人および公衆衛生にもたらす結果を予測するために使用することができるだろう。したがって、本研究の目的は、現在進行中のC-19集団ワクチン接種プログラムの潜在的な生物学的影響を可能な限り高い確度で予測することである。本論文は、現在進行中のC-19パンデミックの不可解な進化の根底にある病態生理学的メカニズムを科学的に分析し説明する最初の報告として位置づけられるだろう。本稿のために私は私自身の学際的な洞察と関連する文献資料を突き合わせた。使用した科学的アプローチは演繹的推論に基づいており、この研究の結論を検証する方法としては、シャーロック・ホームズを引用する以外にはないだろう。

"不可能を消去して残ったものは、どんなにあり得ないことでも、それが真実に違いない、と、何度言ったらわかるんだ?"

本研究によって、現在の臨床・疫学的観察結果と一致するだけでなく、科学的に検証された多くの原理によって裏付けられた理論が開発された。この理論は、現在進行中のC-19集団ワクチン接種プログラムが個人と公衆衛生の両方に及ぼす潜在的な影響について、非常に気になる予測をはじき出している。この結論は完全に科学的な意味を持つ。したがって、その予測は極めて真剣に受け止められなければならない。

概要

スパイクタンパク特異的中和エピトープに対するワクチンによる集団レベルの免疫圧力の結果として、オミクロンを含む、より感染力の強い変異体による突破感染(ブレークスルー感染)が起こったことは否定できない。

スパイクのN末端ドメイン(S-NTD)の保存された「増強」部位に存在するエピトープに対する非中和性抗体は、ワクチン既接種者におけるオミクロンへの感染性の増強に寄与しているだけでなく、オミクロン感染の経過が比較的軽いことから、疾病を軽減する可能性が高いことが示された。オミクロンは感染力が強いため、人々はウイルスに短期間に再暴露する危険性がある。つまり、ワクチン接種率が高い集団では、オミクロンが全身性疾患を引き起こすのを防ぐことに貢献しているS-NTD内の感染増強部位に対し、ますます大きな免疫圧をかけることになっているのである。現在の状況は、このような免疫圧力によって、新たなSC-2変異体(「Newco変異体」)が自然淘汰される瀬戸際にあると考えている。この変異体はいくつかのO-グリコシル化部位を新たに含むことによって非中和性増強性のエピトープを含む保存されたNTD領域が隠され、それによってワクチンに由来する増強性抗NTD抗体による疾病軽症化効果から逃れるというものである。したがって、スパイクタンパクがより多くO-グリコシル化されているような変異が自然選択されれば、Newco変異体はスパイクタンパクに対するあらゆるワクチン由来中和抗体に完全に耐性となり、それによってウイルスはさらに高い感染性を獲得し得るだけでなく、ワクチン既接種者にとって、より病原性の高いものとなると考えられる。スパイクの部位特異的O-グリコシル化は、ワクチン既接種者の重症化に対する抗体による保護を無効にするので、抗体依存性感染増強(ADEI)が、抗体依存性疾病増強(ADED)に直結することになる。この結果、ワクチン接種率の高い集団で入院と死亡の津波が発生することになる。その一方で、ワクチン非接種者は、自然免疫の「強化」(すなわち訓練)のおかげで、また上気道においてはウイルスの感染性、下気道においてはウイルスの「トランス感染性」が低下するため、Newco変異体からますます保護されることになるだろう。感染開始に関与するウイルスタンパク質の糖鎖修飾は、ウイルスのライフサイクルに対する免疫圧力の結果として進化することがよく知られている。したがって、ウイルスのペプチド配列の進化的変化をモニターするだけでなく、SC-2スパイクタンパク質の糖鎖修飾プロファイルや糖プロテオミクスを実施するための分子疫学調査の必要性は非常に高い。

現在進行中のパンデミックを、症状を緩和することはできても、殺菌免疫をもたらすことのできないワクチンでは収束させることはできない。現段階では、大規模な災害を回避する唯一の方法は、大規模なワクチン接種プログラムに代わって、ワクチン接種率の高い国々で大規模な抗ウイルス化学予防キャンペーンを直ちに実施することである。

なぜ、このような呼びかけをするのか?

このパンデミックの今後の展開について、私が深い懸念を抱いていることを伝えるにはタイミングが悪いことは承知している。世の中は今深刻なニュースばかりというのに、そのうえ、このパンデミックの将来的な展開に関する恐ろしい予測は決して歓迎されないだろう。それでもなお、私が懸念を表明し続けるのは、国内外の公衆衛生機関に対し、特にワクチン接種率が高い国では、大規模な抗ウイルス化学予防キャンペーンに直ちに参加するよう要請しないわけにはいかないからである。オミクロンの拡大による感染率の高さを考えると、現在目撃している感染症の「穏やかな」経過は、このパンデミックの終わりの予兆とは考えられない。

たとえ集団ワクチン接種プログラムを直ちに中止したとしても、ワクチン接種率の高い集団がオミクロンのスパイクに対しこれ以上免疫圧力をかけないために、そのような集団のウイルス感染率を直ちに、著しく低下させることが必要である。分子疫学者の分析によれば、宿主の免疫攻撃からその生活環を守る方向へのSC-2の収束進化は、その攻撃がウイルスの生活環を脅かす限り続くことは間違いなく、それを止めるにはその複製と伝播を完全に防ぐしかない。ウイルスの感染力に対する強い選択圧がかかっているため、ウイルスはすでに、生存を確保し、新たな免疫攻撃から逃れるためのメカニズムとして、高感染性変異体の蔓延の拡大に転じているのである。後述するように、SC-2のより毒性の高い変異体への進化は、中和作用を持つ可能性のあるワクチン抗体に対する耐性と、ワクチン接種率の高い集団に対する高い感染性の組み合わせに直接起因する。したがって、集団ワクチン接種を中止し、集団の感染率を直ちに低下させることが最も重要である。

なぜオミクロンは、長い間期待されていたこのパンデミックの終着駅ではないのだろうか?

2021年の初めにはすでに、分子疫学者は、スパイクタンパクに対する集団レベルの免疫圧力が免疫逃避変異を駆動する主な要因であり、これらの変異が蓄積し始めると、宿主集団からの免疫圧力に抵抗し、生存・繁栄できるような予測できない変異の組み合わせに置き換わるのは時間の問題であると報告していた(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7941658/pdf/nihpp-2021.02.23.21252268v3.pdf)。これらの科学者の誰も、集団レベルの免疫圧力がスパイクにかかる明らかな原因として集団ワクチン接種にあえて言及したものはなかったが、C-19パンデミック時に、免疫学的にSC-2にナイーブな(未経験な)集団に、ウイルスの感染性の原因であるスパイクを標的としたC-19ワクチンによる集団接種を行ったことで、これらの集団がウイルスに対し強力な免疫圧力をかけることになったことは否定できない(https://trialsitenews.com/why-is-the-ongoing-mass-vaccination- experiment-driving-a-rapid-evolutionary-response-of-sars-cov-2/ )。また、集団レベルでの大規模な免疫圧力が、ワクチン耐性(3)のウイルス変異体(例えばオミクロン「ファミリー」に属するもの)の優位性を高めていることも否定できない。パンデミックは、ウイルス感染伝搬の可能性を減らすことでしか終息させられないことを考えると、(ワクチン接種率の高さゆえに)ウイルスに非常に感染しやすくなった集団でウイルスが蔓延することは、このパンデミックの終息に好ましい状況でないことは確かである。


(3) 本稿では、「ワクチン耐性」とは、SC-2がワクチン既接種者のウイルスを中和する可能性のある抗体に抵抗する能力を意味する。

公式の「専門家」は何を語っているのか?

ダーウィン理論を含むあらゆる生物学的証拠にもかかわらず、世界保健機関や公衆衛生当局、助言する専門家は、このパンデミックの進化動態は、彼らがずっと提唱してきた集団予防接種プログラムによって大きく形作られているかもしれないという私や他の人々の深刻な警告を却下し続けている。しかし、今ではウイルス(すなわちオミクロン)がワクチンによる中和抗体にほとんど耐性を持つようになったというのに、独立した科学者の中でさえ、C-19ワクチン接種がこのパンデミックの深刻さの軽減に貢献し、感染力は強いが圧倒的に穏やかなウイルス(すなわちオミクロン)のおかげでさらに良い「自然な」集団免疫モードに移行しつつあると考えるものがあるようだ。つまり、オミクロンはほとんど完璧な『弱毒生ワクチン』として機能するだろう!

この軽率なワクチン接種プログラムの関係者は、この「祝福」はまさにこのプログラムの成功のおかげであると主張している。とにかく、多くの科学者は、オミクロンのおかげで、人々は集団免疫を確立する機会を得ることができ、したがって、パンデミックを終わらせることができたと信じているようだ。

今回のパンデミックの疫学が教えてくれるもの

現在、ワクチン接種率の高い集団において、集団免疫が拡大している場合に予想される感染感受性の低下ではなく、感染感受性の亢進が示されていることから、集団の大多数(即ち、ワクチン既接種者)における自然免疫系の抑制が疑われるという複数の観察結果がある。集団ワクチン接種プログラムを非常に幼い、抗原経験の乏しい子供たちにまで拡大することは、脆弱な個体の貯蔵庫を拡大し、この年齢層でさらなるワクチン接種後のブレイクスルー感染の急増を引き起こすだけである。

オミクロンの感染力はワクチン接種率の高い集団で高く、そのため、感染率がこれまでになく高くなっている。しかし、現在、「症例」数はもはや集団における感染率の信頼できる指標ではないことに注意することが重要である。入院率と死亡率の低下により、現在では政府や公衆衛生当局が公衆衛生対策をほぼ解除しており、また、感染が(ワクチン非接種者とワクチン既接種者の両方において)比較的軽い症状ですむため、多くの「症例」が報告されていない。そのため、国内および海外の公式データベースが報告する全体の症例数は非常に過小に見積もられている(4)。それにもかかわらず、多くの国から比較的高い感染率が報告されている。このことと、患者数のピークに引き続く減少が緩やかであること、及び/又は、それぞれの波の感覚が短いこと、及び/又は、2つの波の間で感染率の曲線がベースラインに戻らないこと、は集団の感染に対する感受性が高まっていることを示している (図1参照)。もしワクチンが自然なパンデミック時における私たちの自然な免疫防御と同じように機能するならば、ほとんどの人が(軽症や中等症ではなく)無症状の感染を起こし、いくつかの限られた回数の感染の波が起こるが、それぞれの波の後では(一時的なプラトーや小さな波の不規則なパターンに移行して横ばいとなるのではなく)感染率が急激に低下してベースラインに戻ることが予想できる。しかし、感染率の波の高さは、その後の患者数の劇的な減少をもはや保証しない。感染率の変動は、単に集団のさまざまな部分の感染感受性の変化を反映しているだけであり、殺菌免疫をもたらす能力が構築された証拠はないように見える。これが今、「集団免疫」ではなく「集団易感染性」を引き起こしているのである。集団ワクチン接種キャンペーンに若年層を巻き込めば巻き込むほど、感受性が高い人々のリザーバーが増え、より感染力の強い変異体の波を受けてすでにレベルが上がっている新しいベースラインに接ぎ木するように更なる波が発生する可能性がある。ワクチン既接種者は確かに感染しやすいが、この感受性の高さが重症化にはつながらないことが報告されてきた(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.28.22270044v1)。あたかもワクチンは、既接種者の感染しやすさを促進する一方で、感染から重症化への進行を抑制する役割を担っているかのようである。これは、ワクチン非接種集団における自然なパンデミックの経過とは対照的である。その場合、感染の波は、典型的には集団の最も弱い部分において、罹患率と死亡率の大幅な上昇を伴う。このような急増の後、典型的には感染率は劇的に低下し、典型的には数回の波の後にパンデミックからエンデミック(地域的な流行)となる。そしてこれは、集団免疫によって集団の残りの脆弱な人々を保護するために必要なことである。

図1:ワクチン接種率が高い全ての国(インドを除く)では感染者率(過少報告されている!)は依然として高く、多かれ少なかれ強い変動があるが、明らかにベースラインを上回っている。

現在のパンデミックの進化的ダイナミクスと、上記の傾向がワクチン接種率の高い集団で最も顕著であるという事実に基づけば、集団全体(その大半はワクチン既接種者)がウイルスに免疫圧をかけ、C-19疾患の重症度を下げる一方で高い感染感受性を可能にしていると推測したくなる。この2つの特性の組み合わせが純粋に偶然に起こった可能性は極めて低い。むしろ、集団に対する大規模な免疫介入に求めるべき共通項があるのだろう。ワクチン接種率の高い集団におけるウイルスの表現型特性の変化には、ウイルス感染性の増強が含まれるため、スパイクに対する免疫反応が関与している可能性が高いと思われる。オミクロンの中和抗体に対する耐性が高まっていることの証拠と、ウイルス感染力の増強と疾患の重症度の低下が同時に観察されたことから考えれば、明らかに、このパンデミックの現在の進化的ダイナミクスは、ウイルス(オミクロン)と中和力の無いワクチン抗体(以下を参照)との相互作用によって説明できるだろう。


(4) 感染は比較的軽い症状が特徴であるため、多くの「症例」が報告されないままになっており、報告されない頻度はさらに増している。特にワクチン既接種者の検査頻度が大幅に減少している。症例の報告の減少は、接触者追跡の減少も意味する。


ワクチン接種者が感染しても、死亡はおろか重症化することもほとんどないのに、なぜ集団免疫の欠如を気にしなければならないのか

この素朴な疑問には、注意が必要である。オミクロンは、この感染力の強い変異体に繰り返しさらされることで自然免疫反応が訓練されるのでワクチン非接種者にはむしろ有益かもしれないが、既ワクチン接種者に対しては全く異なる挙動を示す可能性がある。

いつものことであるが、悪魔は細部に宿り、細部とは、多くの場合、ウイルスと宿主免疫系の相互作用の進化的ダイナミクスの核心まで追求することである。この相互作用は人間の軽率な介入によって大きく損なわれてきている、したがって、比較的低い入院率や死亡率が集団免疫の結果であるというのは全く直感に反しているように思われる。すでに述べたように、ワクチン接種率の高い国での感染率はまだ高く(しかも、ワクチン既接種者と非接種のほとんどの年齢層でオミクロンによる疾患が圧倒的に軽症であるため、大きく過小評価されていると思われる)ため、現在、集団免疫が得られた兆候はない。

− 現在の疫学的状況では、すぐにでも集団免疫につながるという希望もない。

オミクロンは、現行のC-19ワクチンによって誘導される中和抗体の大部分に対して耐性であることが知られている。ワクチン抗体の中和能力が低下すると、非中和性ワクチン抗体のスパイクタンパクのN末端ドメイン(S-NTD)への親和性が大幅に増加することが示されている。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8351274/pdf/main.pdf)。以前の投稿(https://trialsitenews.com/will-omicron-induce-herd-immunity-or-will-it-enable-sars-cov-2-to-transition-into-variants-capable-of-potentiating-ade-in-vaccinees/)で、私はすでに、これらの非中和性ワクチン抗体は、関連する多特異的な自然免疫系の抗体(IgMタイプ)とSC-2への結合をめぐって競合することを示唆したが、どちらの場合も結合には多価の結合相互作用が関与すると考えられる (https://www.youtube.com/watch?v=wBm1BKL4zlg; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。

自然免疫系のエフェクター細胞(IgM分泌B1a細胞)は、(コロナウイルスを含むエンベロープウイルスの)表面に発現するN型糖鎖パターン上の自己モチーフを認識できるため、感染初期にウイルス感染した標的細胞を(NK細胞を介して)細胞傷害性に殺傷し、殺菌免疫に寄与していると考えられている。無症候性感染の場合、自然免疫系のCoV反応性IgM抗体の増加およびNK細胞の増加が、感染の阻止および疾患の予防に相関することが示されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7772470/pdf/fimmu-11-610300.pdf)。

結果として、(ワクチン耐性変異体の優勢化により)非中和性抗スパイク抗体の抗体価が高くなり、ワクチン接種率の高い集団ではウイルス伝搬を抑制する能力が損なわれ、集団免疫を達成することができない可能性がある。

特に、以下のような場合、関連する自然免疫系の抗体が顕著に抑制される可能性がある。

  1. ワクチン接種によって免疫系がワクチン由来の抗スパイク抗体に短絡される前に、自然免疫系のエフェクター細胞がウイルスに曝され適応する機会がなかった場合(例えば、比較的感染率の低い集団で高速に集団ワクチン接種が実施された場合)。十分に訓練されていないB1a免疫エフェクター細胞によって産生される自然免疫系多反応性IgM抗体は、非中和性抗NTD 抗体とウイルス結合において競合できるほど十分な親和性を有さない。これは特に、1回目のワクチン接種の直後にウイルスに曝露された場合に当てはまる (5) 。パンデミック時に集団ワクチン接種を行う場合には避けることができない事象である。

  2. 小児へのC-19ワクチン接種の場合。小児の場合、自然免疫系の抗体は大量に存在するものの、大部分がナイーブ(すなわち抗原未経験)であるため、スパイク特異的ワクチン抗体に打ち負かされる傾向がある (6)。したがって、最悪のシナリオは、幼児へのワクチン接種と、呼吸器系ウイルス感染症への曝露を大幅に減少させる危険性のある公衆衛生対策(例えば、マスク、物理的距離をとること、陽性となった健康な子どもの隔離など)を組み合わせることであろう。

  3. ワクチン既接種者が最近自然感染した、または最近C-19ワクチンを追加接種した場合 (7) (または変異体のSタンパク質によりよく一致する最新のC-19ワクチンによる再接種の場合)、または以前にC-19疾患から回復した者がワクチン接種した場合。これらのケースでは、以前にワクチンで記憶された抗体が再び増加する。その結果、非中和性の抗スパイク抗体の力価や結合親和性が不均衡に高くなり、自然免疫系の多反応性IgMと競合するだけでなく、ウイルスの感染力を高めることになる(後述参照)。このことは、ワクチン接種率の高い国では、ワクチン既接種者がウイルスに感染しやすくなることを意味するが、おそらくそれは、感染増強性の抗NTD抗体(8) が主に誘導されているためであろう。このような状況下では、追加接種が集団レベルの免疫とパンデミックの経過に対する集団ワクチン接種の影響を変えることはないだろう。

したがって、現在、小児に対する接種や、追加接種(またはオミクロン特異的なワクチン接種)を中心として集団ワクチン接種キャンペーンを継続しているが、これは間違いなく集団免疫の生成能力を著しく低下させる。


(5)  このことは、ワクチン初回投与後5週間の間に、ワクチン既接種者の死亡率がワクチン非接種者の20倍と報告されていることの理由を説明するだろう。特に、スパイクをコードするC-19遺伝子ワクチンは、循環するウイルス変異体の抗原的にミスマッチな(つまり、ワクチンがコードするスパイクの抗原配置にマッチしない)スパイク上の保存された感染増強部位に対して不釣り合いに高い結合親和性を有する非中和性抗NTD抗体の産生を強く刺激する可能性がある。これらの遺伝子ワクチンで産生されたスパイクは、数ヶ月間体内に留まることが知られている。これは明らかに、抗原的に一致しない変異体上の感染増強部位に対する抗体を含め、抗体産生刺激が長期間続くことを意味する。
(6) 獲得抗体は自然免疫による防御をウイルスが突破した結果として得られるため、自然感染により獲得抗体を得た場合は自然免疫系も同時に訓練されていることに留意することは重要である。
(7) 特にスパイクをコードするC-19遺伝子ワクチンは、循環するウイルス変異体上の抗原的にミスマッチなスパイクの保存された感染増強部位に対して不釣り合いに高い結合親和性を有する非中和性抗NTD抗体を強く再産生することにつながりうる(上記の脚注5で説明した理由と同じ理由)。
(8) (訳者:脚注8の説明は元原稿中に未記載。)


− 他の呼吸器疾患、他のウイルス性疾患、さらには癌の発生率の上昇に関する報告が着実に増えていることからもわかるように、ワクチン既接種者の免疫抑制がより一般的になる兆しがある。

これらの疾患の急増は、自然免疫系の抗体の重要な機能として知られている自己類似抗原の認識が低下したためである可能性が高いが、まだ明確に証明されてはいない。しかし、表面に発現する自己糖鎖パターンを認識する自然免疫系抗体の機能抑制が、自然免疫の抑制の直接的な帰結であると推測することは可能であろう。この分野は今後さらに探求される必要がある。


− ワクチン接種率が高い集団はオミクロンの病原性に免疫圧力をかけているという十分な証拠がある

抗NTD抗体は、感染の促進を引き起こすことが示されている(https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext; https://www.youtube.com/watch?v=wBm1BKL4zlg; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。

ワクチン接種率の高い集団が抗スパイク抗体による中和にほとんど耐性のSC-2変異体に曝され続けると、抗NTD抗体力価の上昇が着実に進み、したがって、ますます感染しやすくなるだろう。オミクロンに暴露された結果ブーストされたワクチン既接種者では、特に感染増強性抗NTD抗体が強いリコール効果を受けると当然考えられる(9)。このことは、C-19疾患に罹患した後でも、ワクチン既接種者は非常に感染しやすい状態にあり続け、選択的(即ち、オミクロン特異的)な感染源として機能することを意味する。したがって、より多くのワクチン既接種者が感染または再感染することになるが、報告された症例の大半が軽症であること、抗NTD抗体が重症化からの保護をもたらすと想定する妥当な証拠があることから(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)、ワクチン接種率の高い集団では、重症化する感染の進行を抑制している保存されたS-NTDの感染増強部位にかなりの免疫圧力がかかっていると推測することができる。オミクロンの登場以来、登録された症例数は、大部分が過小評価されているものの、大幅に増加しており、波が低下した場合でも、ワクチン接種率の高い国の平均症例数は、これまでの他の変異体で見られたものを上回っている。このことは、ウイルスの病原性に対する相当なレベルの免疫圧力が、より高いベースラインで長期間維持されていることを示唆している。これらの抗体による防御効果は動物のin vivo試験で実証されているが、in vitroでこれらの抗体の生物学的活性を測定できる確立したアッセイは今のところ存在しない。そのため、ワクチン接種率の高い国で感染増強性抗NTD抗体の高い抗体価での保有率が現在も上昇し続けていることを証明することはできない。しかし、もし抗NTD抗体の陽性率が上昇しているのであれば、感染力の増強と病原性の低下を結びつける分子メカニズムが存在するはずであり、なぜ、どのようにして非中和抗体の陽性率の上昇がウイルスの病原性に免疫圧をかけることができるのかを明らかにする必要がある。このメカニズムを解明することは、このパンデミックの進化動態が、さらに問題のある免疫逃避変異体が選択され、流行が拡大する道を開いているかどうかを予測するために重要である。「オミクロン」症例率を示す曲線のベースラインはワクチン接種率の高い国で高くなっている。そのため、潜在的な新規変異体が越えるべき適応の谷は浅く、したがって、発生する適応コストが減少する可能性が高いと予測するのは妥当なことである。つまり、次に優勢となる免疫逃避変異体ファミリーが出現するまでのラグタイムは、はるかに短いと予想されるのである。

ウイルスの免疫病態をより深く理解することで、より強毒な免疫逃避型の新しい変異体が出現するリスクを評価し、そのような変異体が強毒性とオミクロンを急速に追い抜くほどの感染力のレベルを両立できるかどうかを調べることもできるかもしれない(次節「ウイルス感染性に対する宿主の免疫反応は、現在進行中のパンデミックにおけるSC-2の進化的動態について何を教えてくれるのだろうか?」参照*)

SC-2がワクチン接種率の高い集団において非常に高い感染力を得、ワクチン由来中和抗体(主に変異しやすいRBDエピトープを標的とする)に対して大きく抵抗性となった後は、追加の免疫的ハードル1つを克服すれば良いことになる。それはワクチン由来の感染増強抗体に抵抗性を得る、というハードルであり、「社会的影響が極めて重大な変異株(Variant of High Consequence)」に分類されるための必要条件である。ワクチン接種者における高い感染力と病原性、およびスパイクベースワクチンに対する完全な耐性により、このような変異体がワクチン接種率の高い集団で蔓延すると、破滅的な結果をもたらすだろう。したがって、以下に提案する分析は、非常に真剣に受け止めるべきである。


(9) 感染増強抗体の標的となるエピトープは、異なるSC-2変異体間で保存されているため、オミクロンによっても、スパイクベースのワクチンによっても強いリコール効果(免疫記憶による抗体産生)を誘導する。
* 訳者注:原文はWhat does the science teach us about the evolutionary dynamics of SC-2 in the ongoing pandemic?であるが、これは次節What does the host immune response to viral infectivity teach us about the evolutionary dynamics of SC-2 in the ongoing pandemic?のことだと思われる。


ウイルス感染性に対する宿主の免疫反応は、現在進行中のパンデミックにおけるSC-2の進化的動態について何を教えてくれるのだろうか?

SC-2の進化のダイナミクス、異なるタイプの抗スパイク抗体との相互作用のメカニズム、ウイルスが集団から受ける免疫圧力に対応して将来組み込むと思われる変異のタイプについての私の理解は、F.A. Lemppら、H. Araseらの所見と非常に一致し、N. Izquierdo-Useros, W.S. Barclay, J. Fantini, H. Wang および K. Guptaにより報告された観察結果に大きく基づいている。

これらの研究者は、その論文で言及されている幾人かの研究者らとともに、抗S 抗体によってウイルスの感染性や疾病が阻害されたり増強されたりすることを既に強調している。これは、in vitro で測定されたウイルス中和抗体力価全体とSの発現様式(即ち、遊離ウイルス粒子上にあるのか、樹状細胞にくっついたウイルス上にあるのか、それともウイルス感染した宿主細胞に発現しているのか)によって決まる抗体関連エピトープの立体構造次第である。

集団レベルでの免疫圧力とSC-2の進化的免疫逃避戦略の間の相互作用の背後にあるメカニズムについては以下のような質問とその回答で説明される。


ワクチン接種者の感染症に対する感受性が高まることと、病気に対する感受性が低下することの間に因果関係はあるだろうか?

感染に対する感受性の増強と疾病に対する感受性の低下という組み合わせは、急性自己限定性(自然回復性) ウイルス性疾患による自然なパンデミックの際には通常起こりえないものである。

次に述べることから、ワクチンによって誘導された中和抗体に対する抵抗性の増強が、ワクチンを高率に接種した集団における感染感受性の増加と疾病感受性の低下の両方に関与していると合理的に結論づけることができる。


− 中和能力の低さは、ADEIの感受性を高める(図2)

図2:抗RBD中和抗体に対する耐性を強化した感染力の強いSC-2変異体は、ADEIを引き起こしやすい一方で、「トランス」感染を阻害してウイルスの病原性/毒性を低下させる。

ADEIの定義:NTD内の保存された(即ち、SC-2変異体では共通であるが、CoV全てに共通という訳ではない)抗原部位に非中和性の「感染増強性」抗NTD 抗体が結合することによって引き起こされるウイルス感染性の増強である。RBDの「開いた」コンフォメーションを促進し、それによってACE2受容体への受容体結合モチーフ(RBM)の結合が促進され、ウイルスの標的細胞への侵入が促進される。

上気道では、中和されないSC-2ウイルスがACE2を高発現している上皮細胞に感染するか、組織常在性の樹状細胞上のC型レクチンに捕捉されて下気道や他の遠隔器官に移動する(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。可変性のRBDエピトープに対する特異抗体のウイルス中和能の低下は、NTD上の一部の保存された非糖鎖部位に存在する感染促進エピトープに対する非中和性抗体の親和性を促進する(https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128678/pdf/main.pdf)。ワクチンで誘導される非中和性抗体のNTD上の保存された感染増強部位との不釣り合いに高い結合性は、この抗原部位の構造配置の変化によるものと考えられるが、明確に証明されているわけではない。 この部位は隣接するプロトマーのRBDに緊密に結合する柔軟な領域の一部であり、RBDは抗RBD中和抗体と結合すると劇的な構造変化をすることが知られている(https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431; https://www.science.org/doi/pdf/10.1126/science.abb2507; https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。RBDがRBD特異的中和抗体によって「開いた」状態で安定化されているときには、潜在的に広範な中和力を持つNTD特異的抗体が、NTD上の単一の保存された特定の「スーパー部位」内にある対応するエピトープに優先的に結合するが、RBDが「閉じた」コンフォメーションのときには、潜在的に広範な感染促進力をもつNTD特異的抗体が同じ「スーパー部位」内にある対応するエピトープに優先的に結合し、抗RBD中和抗体の結合が弱くなると考えられる。このことは、一部の研究者によって報告された中和において重要な、単一の保存された糖鎖を持たないNTD「スーパー部位」(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7962585/pdf/main.pdf; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8820657/pdf/nihpp-2022.02.01.478695v1.pdf) と、他の研究者によって報告された感染増強において重要な、単一の保存された糖鎖を持たないNTD「スーパー部位」 (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8142859/pdf/main.pdf) は重複しており、そしてNTD上のエピトープ認識は、中和抗体との結合によって起こるRBDの構造変化により大きく依存すると考えられることを示していると思われる。

NTDの特定の保存された領域に存在する感染促進性のエピトープに非中和性抗体が結合すると、RBDによるACE2受容体の認識が促進され、ACE2依存的なウイルスの標的細胞への侵入が促進されることが知られている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8142859/pdf/main.pdf)。この現象は、「抗体依存性感染増強(ADEI)」(Antibody-Dependent Enhancement of Infection)と呼ばれている。中和抗体レベルが高い場合、増強抗体による感染促進は起こらないことが明らかになっている(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34384810/)。 したがって、ウイルス中和抗体価が著しく低下している状態でウイルスに曝露されると、非中和性抗体が感染を促進する危険性が特に高くなると推測されている。このような状況は、特に、最初のワクチン接種直後のウイルス曝露によるブレイクスルー感染 (10)、または完全にワクチン接種されたが、ワクチンによる抗体がもはや流行中の変異体の対応するSエピトープを有効に認識しない(即ち、ワクチンによって誘導された中和抗体に対するウイルスの耐性が増大した)場合に特に当てはまるだろう。したがって、 現在の、抗体がC-19ワクチンによって誘導されたものである、という文脈において、オミクロンが以前の変異体と比較してはるかに感染力が強いと思われる理由をADEIによって説明することができる。以前から科学者たちは、ワクチン接種による感染増強性抗体の危険性を認識し、循環している変異体に発現するものとは異なるスパイクタンパクを用いた集団ワクチン接種キャンペーンの危険性に警告を発してきた(https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。彼らの懸念は、感染を促進する抗NTD抗体が、自然免疫系の多反応性IgMとSをめぐって競合している疑いが強いことから、なおさら適切なものと思われる。特にオミクロンの場合、ワクチン由来抗体の中和能力が非常に低下し、再曝露の可能性が非常に高くなっているため、この点が心配される。この組み合わせは、ワクチンによる感染増強性抗NTD抗体を強力にブーストする可能性がある。このことは、ワクチン接種者の感染感受性をさらに高めるだけでなく、B1a細胞由来の自然免疫エフェクター細胞の訓練をさらに抑制し、関連する多反応性IgMがウイルスに対し、より高い親和性を獲得するのを妨ぐと考えられる。したがって、ウイルスの伝播はもはや抑制されず、ADEIの発生をさらに増幅させるという雪だるま効果をもたらし、集団免疫の達成という希望は完全に失われてしまう(図3参照)。


(10) ブレイクスルー感染とは、ワクチン接種後またはワクチン既接種者に発生する感染症を指す。


− 中和能力が低いと、重症化しにくくなる。それは「トランス感染」能が低下し、その結果「トランス細胞融合」が減少し、全身性疾患/重症化となる可能性が低下するためである(図3,4)

図3:自然免疫系多価性抗体と非中和性抗NTD抗体のSC-2ウイルスへの結合をめぐる競合。自然免疫系がSC-2変異体を効果的に排除するには、自然免疫系の抗体の親和性が高いほど(訓練!)、ワクチンによる抗NTD抗体の親和性が低ければ低いほど、より効果的である。ワクチン既接種者の血清は、ウイルス中和能が低いため、比較的高い感染増強能を有すると考えられる。感染増強は高親和性抗NTD抗体によるもので、パンデミック時には継続的に増強されるため、訓練されていない自然免疫系では対抗できない。

「トランス感染」の定義:「トランス感染」とは、樹状細胞の表面にくっついたSC-2ウイルス粒子による標的細胞への増殖性感染であり、S表面に発現するN-結合型糖鎖が樹状細胞表面に発現するC-型レクチン受容体と結合することで、標的細胞の細胞膜上の脂質ラフトに存在するシアロガングリオシドに結合可能なNTD内のポリペプチド領域が露出することによって生じる。この相互作用により、スパイクタンパク質の細胞融合促進的な再構成が生じ、その結果、RBMとACE2受容体の結合が促進されると考えられる。

「トランス細胞融合」の定義:「トランス細胞融合」とは、SC-2感染細胞と非感染隣接細胞とのACE2非依存的融合である。その結果、合胞体が形成され、標的臓器の細胞間感染が促進される。

ウイルス侵入の入り口である粘膜において、S特異的抗体や自然免疫系の多価性抗体に結合しなかった感染性SC-2ウイルス粒子は、組織常在性の樹状細胞によって捕捉される。活性化した樹状細胞は移動し、感染性ウイルス粒子を下気道または他の遠隔標的組織へ輸送する(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。そして、下気道の上皮細胞や他の遠隔組織の細胞に「トランス感染」し、感染細胞と非感染細胞の融合により、全身疾患を引き起こす可能性がある(後述)。

SのN-グリコシル化部位と樹状細胞表面のC-型レクチンとの強い結合により RBDは閉じた状態に安定化すると思われる(図5の左側にRBDの閉じた状態の図を示す)。一方、この状態において、糖鎖をほとんど持たないNTDの先端部分(11)が表面に露出する可能性が考えられる。この部分を介してウイルスは標的細胞の脂質ラフト内のガングリオシドと結合することが示されており、ACE2の発現が低い標的細胞(肺や他の遠隔標的組織の上皮細胞の特徴である)のACE2受容体との接触の機会を増して、増殖性感染を引き起こす可能性がある(https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128678/pdf/main.pdf)。NTDのガングリオシド結合ドメインは、これらの標的細胞との密接な接触を可能にすることで、S-RBDの融合性再構成をひきおこし、それによりRBDは開いた状態で安定化し、増殖性の「トランス感染」を引き起こすものと考えられる。このようにして、SC-2ウイルスをくっつけて遊走する樹状細胞が、ACE2の発現が低い(下気道に多く存在する)宿主標的細胞への「トランス感染」を促進することが説明できる(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。

しかし、SのN-グリコシル化部位と樹状細胞表面に発現するC型レクチンとの強い結合は、感染増強性抗NTD抗体が保存された感染促進部位へ結合する際の、RBDを”開いた”状態にする効果を劇的に低下させると思われる。RBDの開状態(RBDの開状態は、図5の右に示されている)は、ウイルスがACE2受容体を認識し、ACE2の発現が低い宿主細胞に侵入するために必要である。このようにして、モノクローナル中和抗体(即ち、開いた状態のRBD選択的抗体)が、樹状細胞の表面に付着している感染性SC-2ウイルス粒子を中和できない理由が説明できる(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。

Sが樹状細胞表面に発現するレクチンと結合した場合、感染増強性抗NTD抗体がNTDの特定のスーパー部位内のエピトープに結合しても、RBDは開いた状態にならないが、NTDの認識部位だけでなく非認識部位にも大きな構造変化を引き起こすことは確かだろう(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7953435/pdf/main.pdf)。したがって、このような条件下では、ACE2の発現が低い標的細胞(肺上皮細胞や他の遠隔標的組織の上皮細胞)に、NTD上のガングリオシド結合ドメインは接近することができず、その結果、S-RBDを開状態に安定化し、Sが増殖性に「トランス感染」できるようなS-RBDの融合性再構成を引き起こさないと考えられる。

したがって、in vitroで観察されたC型レクチンによるACE2依存性のSC-2「トランス感染」が抗体によって阻害されるのは、S-NTD内の構造の再構成に起因すると考えるのが妥当であるだろう (https://www.nature.com/articles/s41586-021- 03925-1.pdf) 。


(11) このドメイン(111-158)は、臨床分離株の間で完全に保存されている。

図5:右:遊離ウイルスとしてのNewco変異体のスパイクタンパク質(RBD + NTD)の推定構造の模式図。NTD上の特定の部位に感染増強性抗体が結合すると、RBDが開いた状態になる。多価の結合は、RBDとACE2受容体の結合を可能にする。RBDが開いた状態となること、つまり、ADEIは、RBD上の予測されるO-グリコシル化部位にO-糖鎖(黒い横棒)が追加されても阻害されないだろう。左:遊走する樹状細胞表面に付着したウイルス粒子上のスパイクタンパクのRBDは閉じた状態をとる。このため、O-グリコシル化がNTD内の保存された感染増強性ドメインを遮蔽し、感染増強性抗体が結合して構造変化を引き起こすことを防ぎ、通常S-NTDのガングリオシド結合ドメインが担うSの融合的な再配列を阻害している。このように、O-グリコシル化(NTDの可変部における代償的なアミノ酸変異とともに)は、遊走性樹状細胞から宿主細胞への「トランス」感染の阻害を抑制していると考えられる。


− 「トランス感染」能の低下は、「トランス細胞融合」の低下につながり、全身性疾患/重症化となる可能性を下げる (図3)

下気道の上皮細胞表面のC型レクチン(特にSiglec-1;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7863934/; https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)とS表面のオリゴマンノイル化N型糖鎖との相互作用は、肺の上皮細胞間の「トランス感染」を可能にするだけでなく、感染細胞に発現したSが、ACE2発現量にかかわらず、隣接する非感染細胞の表面に付着するのを容易にすると考えられる。そして、RBDエピトープに結合する中和抗体によって、Sの融合性再構成が生じ、隣接する細胞膜間の融合が促進される、という感染細胞と非感染細胞の間の「トランス細胞融合」が促進される(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。融合促進性抗体は感染後期のウイルスの全身拡散・播種に寄与していることが示されている(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。あるいは、S の融合性再構成は、抗原的に可変な NTD内の エピトープに対する非中和性抗体によって促進される可能性もある。実際に、保存された「スーパー部位」に向けられた抗NTDエピトープ抗体が細胞間融合を阻害することが報告されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7962585/pdf/main.pdf)。感染細胞と(ACE2発現が低い)非感染細胞の融合が抗体依存的に促進されるメカニズムの詳細は報告されていないが、これらの抗体がエピトープに結合することにより、NTD先端のガングリオシド結合ドメインの露出を促す構造変化が起こり、Sの融合性再構成が促進されると考えるのが妥当であると思われる。感染細胞と非感染細胞の融合による合胞体形成は、C-19疾患の重症度と相関があることが報告されている (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7164771/pdf/main.pdf; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7677597/pdf/main.pdf; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128866/pdf/main.pdf)。

つまり、抗体による疾病の促進は、抗体が中和能を持つかどうかではなく、Sを発現する細胞と感染していない隣接細胞との融合を促進するために、Sの融合的再構成を引き起こすことができるかどうかにかかっているといえる。融合促進性抗体がない場合には、例えばオミクロンのSによって誘導される合胞体形成は、Sの切断を促進する変異を含んでいるにもかかわらず不完全である(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.17.473248v2; https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.31.474653v1.full.pdf)。

上記の抗NTD抗体の効果は、ACE2が高発現している細胞(即ち、上気道の上皮に代表される細胞)で観察される効果とは明らかに大きく異なる。つまり、抗NTD抗体のSへの不均衡な結合が、ACE2を介したウイルスの付着・侵入を促進し、ワクチン接種者のADEIを引き起こすと考えられるのである(https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext)。

以上のことから、現在のC-19ワクチンによって誘導される抗スパイク抗体による中和に大きく抵抗するウイルス変異体(例えば、オミクロン)は、「トランス感染」に関与する能力が低下しており、そのために、以前のSC-2変異体よりも病原性が低いように見えると仮定したくなる。言い換えれば、ワクチン既接種者におけるオミクロンの病原性挙動は、抗RBD抗体の中和活性が低いこと (これは、オミクロンのワクチンに対する耐性に直接起因する)によって(間接的に)減衰したといえる。既に述べたように、抗RBD抗体の中和能力が低いと、感染増強性の抗NTD抗体のSへの結合が不均衡に高くなると考えられ、これにより、遠隔標的組織に見られるようなACE 2低発現細胞でのC型レクチンによる「トランス感染」の抑制が可能となる(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。その結果、ワクチン接種率の高い集団は、現在、オミクロンのスパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)の一部にかなりの免疫圧をかけている。つまり、下気道を含む遠隔臓器へのSC-2の播種を防ぐ、ワクチンに由来する感染増強性抗体がNTDをますます認識するようになっている。結論として、オミクロンの爆発的な広がりと、人口の大多数における比較的軽い症状(これは急性自己限定性ウイルス性疾患の自然流行としては確かに極めて異例である!)は、感染増強性のNTD部位に対する集団レベルの免疫圧によって引き起こされているということだ。 この洞察は、SC-2がすでにさらなる変異の自然淘汰を進めていることを強く示唆するものであり、極めて重要である。この報告書を書いている間にも、ワクチン既接種者がより重症化した例がどんどん報告されている。後述するように、SC-2は予測されるO-グリコシル化部位の糖鎖変異により、抗体による「トランス感染」に対する免疫圧を克服できるのではないかと私は考えている。RBDのグリコシル化がより一層進んでいることは否定できない。そのような観点から、オミクロンスパイクタンパクのグリコシル化(糖鎖)プロファイル(が進化しているか?)を是非とも公開してほしい。


SC-2は、その保存された感染促進性のNTD部位にかかる免疫圧から逃れ、かつ、オミクロンに勝る感染性を同時に達成できるのか?(できるとしたら、どのようにして?)

言い換えよう。ウイルスに免疫圧をかけないことが知られている人々、即ちワクチン未接種者の免疫認識 (12)に影響を与えず、ワクチン既接種者におけるウイルスの毒性およびウイルス感染力を同時に高めるような変異はあるのだろうか 。これは、(例えば、中和する可能性のあるワクチン由来抗S抗体に対する耐性の付与により)ADEIを促進し、一方で同じ感染増強性抗体が全身性疾患を阻止するというタイプの変異を前提としている。ワクチン既接種者におけるオミクロン感染の特徴が、感染力の増強と疾患症状の緩和であることを考えると、この問題提起は一見、非常に分かりにくいと思われる。しかし、広範かつ長期にわたる最適でない免疫圧を背景に、このウイルスの進化能力は、S-RBD及び/又はS-NTD内でのアミノ酸の変異をはるかに超えるものになる可能性がある。このような一見「相容れない」効果を実現できる唯一のメカニズムは、実は、アミノ酸配列の変化ではなく、グリコシル化(糖鎖)パターンの変化であると私は考えている。スパイクタンパクはすでにグリコシル化されているため、追加のグリコシル化の可能性は、これまで大部分が露出したままだった領域で起こり、ウイルスが遊離型か組織常在樹状細胞に固定されているかによって、抗NTD抗体結合に異なる影響を与えることができるような方法で起こるはずである。RBDは、グリコシル化密度が低く、S発現の状況(即ち、ウイルスが遊離しているか、樹状細胞に付着しているか、またはウイルス感染細胞に発現しているか (13))および抗S抗体の機能活性(すなわち、中和か非中和か)に応じて、異なる立体構造(すなわち「開いた」状態または「閉じた」状態)を示すため、おそらくグリコシル化の候補として適格であろう (14) (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34139176/; https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acscentsci.0c01056; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7833242/pdf/main.pdf)。これまでのところ、オミクロンを含む主要な変異体において、グリコシル化部位に影響を及ぼす変異は報告されていない(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253482/)。このことは、糖鎖付加部位がSC-2の感染性に必須かつ十分であり、一般的には選択圧による影響を受けないことを示していると思われる。逆に、例えば抗NTD抗体抗体の強化によりその「トランス感染」がさらに損なわれ、その結果感染力が脅かされるような場合、オリゴマンノース型糖鎖の付加は免疫逃避戦略の一部となる可能性がある。これは感染増強性抗NTD抗体を高い抗体価で保有する確率が高い集団、つまり、ワクチン接種率が高い集団にあてはまる。なぜなら、感染増強性抗NTD抗体は症状を穏やかにするだけでなく、集団の大部分(すなわち、ワクチン既接種者)におけるウイルスの排出を減少させるからである(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.28.22270044v1)。

文末に、エンベロープウイルス、特にSC-2の糖鎖に関する文献の中から、SC-2のスパイクタンパクに発現する糖鎖の生物学的重要性と、以下に説明する免疫病原性メカニズムにおける糖鎖およびC型レクチンの役割を理解するのに役立つ関連文献を記載した。


(12) ワクチン非接種の健康人では、自然免疫系は損なわれておらず、そのウイルス排除戦略は、ウイルス変異体によらない。自然に誘導された抗S抗体が存在する場合でも、ワクチン未接種の健康な人の免疫反応は変異体間で変わらない。これは、既にウイルスに暴露されたワクチン非接種者の自然免疫応答は、(「訓練」によって)以前に曝露された病原体に対してより防御力を持つと考えられ、また、その中和抗体は(ワクチン由来抗体と比較して)流行中の変異体とより一致し、速やかに高力価で呼び戻されるためである。このように、免疫系の両機能を組み合わせることで、殺菌免疫が可能になる。
(13) NTDの保存された領域自体は追加のグリコシル化領域としては適さないだろう。なぜなら、その領域には感染増強性抗体が結合する特異エピトープが存在するため、ーあえてーグリコシル化されないと考えられるからだ。
(14) このことは、mRNAワクチンを取り込んだ宿主組織細胞に発現したSが、既存の抗S抗体の存在下で「無菌性」合胞体を構築し、特定の臓器の病理組織学的変化を引き起こす可能性を示唆する。

RBDのO-グリコシル化は可能か、また、現在のウイルスの高い感染力を損なうことなく、保存された感染増強性NTD部位を遮蔽する論理的な方法となりうるか?

  1. ウイルスタンパク質のN-およびO-グリコシル化は、自然免疫システムを破壊するだけでなく、ウイルスの感染性(例えば、細胞受容体へのウイルス付着や受容体を介した侵入に関わる相互作用を調節することによって)やウイルスの病原性に劇的に影響することが広く示されている。しかし、直接的な相互作用ではなく、構造安定性の変化が影響する場合もあるようだ(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26867212/)。したがって、糖鎖形成は、多くのウイルスにとって、選択的な免疫圧を克服するための重要な手段であると思われる(https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7199903/)。例えば、RBDのそれまでは露出していたドメインのグリコシル化は、その下にあるポリペプチドエピトープを立体的にマスクし、それにより抗RBD抗体の重要な結合部位を認識を阻害し、SC-2の中和を防ぐ、という保護シールドとして機能する可能性が考えられる。ウイルスは宿主細胞のグリコシル化機構を利用するため、一般に「自己」糖鎖で装飾されている。「自己」糖鎖による修飾は、エンベロープウイルス上の極めて重要なウイルスタンパク質を、宿主の免疫反応から逃がすことを可能にする(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20643940/; https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7326345/)。RBD の糖鎖付加はS-RBM の広範な中和エピトープを遮蔽し、オミクロンよりさらに高い感染性を持つ新しい変異体を生み出す可能性がある。

  2. 「閉じた」状態のS三量体ではS-RBDは隣接するNTD鎖と密に詰め込まれていることが報告されている(https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431; https://www.science.org/doi/pdf/10.1126/science.abb2507)。したがって、RBD上に糖鎖が付加されると考えるのは当然であろう。

  3. RBD領域に固有の高い構造的柔軟性により(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7833242/, https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscentsci.0c01056)、RBMと宿主細胞のACE2受容体の結合部位との間の結合効果を促進する「開いた」構造をとる傾向を保ったまま、予測されるO-グリコシル化部位の変異体の数を増加させることが可能であろう。


(15) NTDの保存領域は、感染増強性抗体がその特異的エピトープに結合するため、あえてグリコシル化されないだろう。それゆえ、NTDの保存された領域の糖鎖付加が生じることは考えにくい。


O-グリコシル化の方がN-グリコシル化より可能性が高いのはなぜか?

  1. SC-2はすでにO-グリコシル化の挿入を(融合部位に隣接する部位で)果たしており、これはおそらく何らかの中間宿主における免疫学的圧力に対抗するための戦略であると思われる(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7645279/)。ウイルスタンパク質の高密度O-グリコシル化は、免疫優勢エピトープが選択されることからの「巨大な」シールドとなることがすでに報告されている(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22114560/)。

  2. N型糖鎖とは異なり、O型糖鎖はRBD内の複数のアミノ酸(例えば、セリン、スレオニン、チロシン)に結合できるため (16)、より汎用性が高い。さらに、RBDのN末端に2つのO-結合型糖鎖付加が予測される部位があることが既に明らかにされている(下記も参照;  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32366695/ )。

  3. 他のエンベロープ型糖鎖ウイルス(アルファヘルペスウイルスなど)では、近縁のウイルス(単純ヘルペス1型、2型)では、相同な糖鎖は主に相同性の高いペプチド配列上に位置するという配列相同性がO-グリコシル化の決定因子として重要であることが報告されている(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27129252/)。したがって、変異体のパンデミック時の選択的な免疫圧に打ち勝って成功するためには、RBD内の保存されている領域にO-グリコシル化が起これば十分であると考えられる。これによって、RBDの立体構造に対する糖鎖部位による一貫した安定化効果が保証されることになる。

以上のことから、1つまたはごく少数の変異によって追加のO-グリコシル化部位を組み込むことが、抗RBD抗体および抗NTD抗体の両方からエピトープを保護する効果的な戦略であると結論づけられる。


(16) SC-2のRBDには、O-グリコシル化されやすいいくつかのアミノ酸が含まれることが知られている。それらのいくつかは、すでにO-グリコシル化が予測される部位として同定されている。自然選択は、O-グリコシル化が予測されている部位が実際にO-グリコシル化される、あるいは、O-グリコシル化を促進する、明確な部位を占める1つ以上の適切なアミノ酸の変化という文脈で生じるかもしれない。


O- グリコシル化部位変異体は、「トランス細胞融合」を可能にすることによって、ワクチン既接種者におけるウイルス感染力の増強と病原性の低下を切り離し得るか?

上記の記述は、O-グリコシル化によって、ワクチン接種を受けた宿主に残された免疫防御戦略、つまり重症化抑制と高いレベルのウイルス感染性を克服しうることをすでに示唆している。

ワクチン接種率の高い集団が、中和抗体にほとんど耐性の感染力の高いSC-2変種に繰り返し暴露されると、重症のウイルス性疾患を緩和している「トランス」感染性に対して(感染増強性抗NTD抗体を介して)高い免疫圧がかかることになる。これにより、現在、ウイルスの強毒化は抑制されている。ワクチン既接種者での感染増強性抗NTD抗体による免疫圧が高いため、ウイルスを載せて遊走する樹状細胞と下気道や遠隔臓器の非感染標的細胞との間の「トランス感染」の抗体による阻害をなくし、より高い毒性/病原性を実現できる表現型が選択されると予想される。ウイルスの高感染性を損なうことなく、スパイクの融合性再構成を促すようなS-NTDの能力を回復させることができる変異で あれば何でもよいだろう。この仮説は、ニワトリの鳥インフルエンザ流行では、高密度で飼育されているニワトリ集団で感染力が強く、感染速度が速いウイルスが流行すると、より融合性の高いヘマグルチニン(HA)タンパク質(コロナウイルスのスパイクタンパク質と同様の機能を持つ)が選択されると言う観察結果と一致するものだ。HAタンパクに塩基性切断部位(SC-2スパイクタンパクにはすでに存在する!)を組み込んだ変異体は、HAの融合性再構成が促進され、それによってウイルスの遠隔標的細胞への「トランス」感染能力が強化される。より融合性の高いHA変異体を選択することで、鳥インフルエンザウイルスは低病原性から高病原性へと進化した(https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9.pdf)。

抗NTD抗体によって重症化を防ぐことができるといういくつかの予備的な証拠(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)を考慮すると RBDのO-グリコシル化によって、ウイルスは感染を促進する抗NTD抗体の効果に対抗することが可能となると同時に、下気道に限らず遠隔組織におけるウイルスの「トランス感染」の抑制を妨げるのではないかとの仮説を立てることができるだろう。以下に説明するように、これは生物物理学的な観点から見ると、極めて確かなことであると思われる。

したがって、今後、主流となる変異体は、より高密度にO-グリコシル化されたRBDを持ち、この特徴によって、ワクチン接種者の中和性抗S抗体および感染増強性抗S抗体の両方に対する抵抗性を獲得すると予測されるだろう。したがって、この新しい「スーパー変異体」ファミリー(本稿では「Newco」変異体と呼ぶ)は、その強化された感染性(ADEI)によって病原性を増強し(即ち、ADEDをもたらし)、オミクロンファミリーに取って代わり、世界中に爆発的に広がることが可能になる。

ワクチン抵抗性のSC-2変異体(すなわちオミクロン)にさらされたワクチン接種率の高い集団において、O-グリコシル化がSC-2の免疫病態に及ぼす影響を図4にまとめた。

図4:SC-2パンデミック時のC-19集団ワクチン接種の結果。ワクチン由来中和抗体に対するウイルスの抵抗性は、必然的にADEIの高い発生率につながり、最終的にはワクチン接種率の高い集団ではADEIを介したADEDにつながる。感染増強性抗NTD抗体が高力価で存在すると自然免疫系IgMと競合してSC-2に結合するため、集団における感染増強性抗NTD抗体価の上昇は、集団レベルで自然免疫系の抗体による免疫を抑制し、したがって、集団免疫を阻害する。集団免疫の欠如は、ウイルス感染の連鎖を許すこととなり、感染増強性抗体価の高い人々が劇的に減少しない限り、ウイルスの進化動態を止めることはできない。現在のパンデミックの悲惨な展開を避けるためには、ワクチン接種率の高い集団に大規模な抗ウイルス化学予防キャンペーンを展開するか、人々の免疫防御の第一線のうち抗体とは競合しない重要な要素(すなわち、ナチュラルキラー細胞)を強化する免疫戦略を実施することによって、ウイルスの感染連鎖を断つことが最も重要なのである。ウイルス自体では、多価性IgMに勝る感染増強性抗NTD抗体を継続的に呼び起こしてしまうため、ワクチン既接種者の自然免疫系を訓練することはできない。 数字(1-6)は免疫病原性事象の順序を示す。


O-結合型糖鎖は、どのようにしてワクチン既接種者に対するウイルスの病原性を促進するのか?

感染増強性抗NTD抗体のNTDの感染増強部位への結合は、遊走する樹状細胞上のウイルスによる「トランス感染」を妨げると考えられるため、ウイルスが「トランス感染性」を回復するためには、感染増強性抗NTD抗体の対応エピトープへの結合を弱める糖鎖修飾戦略を用いることが重要であろうと考えられる。しかし、糖鎖の変異は感染増強部位の立体構造に影響を及ぼしてはならない。なぜなら、抗NTD抗体が遊離ウイルス粒子のRBDを開いた状態に誘導するのを妨げることとなり、RBDがACE2受容体を認識し、高い感染力を維持することが出来なくなるためである。

この挑戦は、S の別の保存された領域のグリコシル化を増すことによって、NTDの立体構造を変えずにNTD上の特定の感染促進性エピトープを遮蔽することによって達成されるであろう。S-RBDは、(ウイルスが樹状細胞に付着した場合のように)RBDドメインが閉じた状態にあるとき、隣接するS-NTDと緊密に接していることが報告されている (https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431)。したがって、さらなるグリコシル化が生じるのはRBDであると考えるのが自然である。ウイルスが樹状細胞に結合しているときRBDは閉じているため、RBD上の部位特異的グリコシル化は、NTD内の保存された感染促進ドメインを覆い、それによって感染増強性抗体が結合して構造変化を引き起こすのを防ぐだろう。既に述べたように、それによって、一般的には、NTDのガングリオシド結合ドメインによって促進されるSの融合性再構成が妨げられると考えられる(図5左参照)。このことは、遊走する樹状細胞から遠隔の標的組織細胞への「トランス感染」の阻害を防ぎ、感染の全身的な播種を可能にすると同時に、感染増強性抗体が遊離ウイルス粒子に結合してADEIを引き起こすことを可能にする(以下のセクション”O-結合型グリコシル化はC-19ワクチンに対する耐性につながるだろうか?”参照)。

しかし、RBMとACE2の相互作用にできるだけ立体障害を与えないためは、RBMからできるだけ離れた位置で糖鎖付加が行われる必要がある。興味深いことに、RBDのN-末端側には、スレオニン323とセリン325の2つの予想されるO-結合型糖鎖付加部位が報告されている。これらの予測される部位のO-結合型糖鎖の機能はまだ解明されていない。検出されたO-結合型糖鎖は微量であったことから、この領域のO-結合型糖鎖は、本来の構造であればごくわずかであることが示唆される(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32366695/)。このO-結合型糖鎖は、隣接する2つのN型糖鎖(N331とN343)と共に、ウイルス排出量の減少や病原性の不足(即ち、全身性疾患の発生数の減少)が(感染増強性抗NTD抗体による免疫圧の結果として)ウイルスのライフサイクルを脅かす場合には、SC-2にその病原能力を拡大する十分な柔軟性を与えるのではないかと推測される。この能力は、O-結合型糖鎖の部位占有率の増加によって容易に拡大できる。「トランス感染」が強く阻害される場合、感染増強性抗NTD抗体による免疫圧の存在下における競争的適応上の優位性に基づく自然選択により、予測部位のO-グリコシル化の程度が徐々に増加する可能性がある。RBDのN末端におけるO-グリコシル化は、RBDが閉じた状態(17)、つまり感染増強エピトープを含む領域と密着した状態では、これらの感染増強性抗体の結合部位を遮蔽する可能性がある。つまり、RBDに重要な糖鎖結合部位が付加されれば、NTDのコンフォメーションに影響を与える可能性があるということである。例えばNTDのN型糖鎖の変化は、RBDの立体構造のダイナミクスに影響を与えることが報告されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7523240/pdf/oc0c01056.pdf)。同様に、レクチンを介しウイルスが樹状細胞に結合しRBDが閉じた状態で安定化している場合に、RBDがより高密度にグリコシル化されればNTDの構造変化を引き起こすと考えるのは妥当であろう。NTDはN-結合型糖鎖を介してRBDの立体構造のダイナミクスを修飾することが知られていることから(18)(https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431; https://www.science.org/doi/pdf/10.1126/science.abb2507)、NTDの構造変化は、RBDが開いた構造に移行することを妨げ、RBD領域の接触面(すなわちRBM)がACE2受容体と相互作用する機会を減少させる危険性をはらんでいると考えられる。グリコシル化の密度が高すぎれば、糖鎖による遮蔽が、最適な融合能を発揮するために必要なNTDの立体構造とうまくかみ合わなくなる危険性が高くなる。糖鎖付加によるNTDの構造的再構成は、樹状細胞に付着したウイルスの「トランス感染」を妨げる危険性がある。したがって、NTDがSの融合的再構成を誘導できないことを補い、トランス感染を可能にするために、ウイルスがNTDの可変領域内のアミノ酸変異を自然選択することは理にかなうと考えられる。RBDの立体構造の状態は、感染増強性抗体が認識するエピトープ周辺の領域に大きく依存することが報告されていることから、これは十分に実現可能であると考えられる(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8142859/pdf/main.pdf)。したがって、NTD内の保存された唯一の感染増強部位にかかる免疫圧力が、最終的には感染増強部位周辺のNTD内の可変性の抗原部位に対する立体的圧力に変換されると結論づけるのが妥当であろう。このような理由から、RBD上のO-結合部位のグリコシル化密度の増加が樹状細胞に付着したウイルス粒子が遠隔組織の標的細胞と接触したときに、Sの融合性再配列を引き起こすNTDの能力を低下させないような高度に可変性のNTD内の領域の複数のアミノ酸の変異が選択される可能性がある。


(17) 「閉じた状態」では、O-グリコシル化鎖がN-グリカンと樹状細胞表面に発現するC-型レクチンとの相互作用に寄与し、「閉じた状態」の安定化に寄与すると考えられる。
(18)  例えば、NTDに関連する糖鎖(すなわちN165とN234)は、RBDの立体構造の可塑性を調節することが報告されている(https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acscentsci.0c01056)。

要約(図5左も参照):

  • S-NTDの保存された感染増強部位に対する抗体による免疫圧力は、S-RBDのO-グリコシル化を促進する自然淘汰を引き起こす

  • S-RBDのO-グリコシル化の増加は、S-NTDの可変領域内のアミノ酸変異の自然選択を促進する

  • 保存されたNTDの感染増強部位内エピトープにかかる抗体による免疫圧力は、感染増強性抗体によって認識される保存されたエピトープの周辺に位置する可変エピトープへの立体的圧力に変換される。

  • 選択的アミノ酸変異により、ウイルスは遠隔の宿主組織細胞に「トランス感染」する能力(すなわち全身性疾患を引き起こす能力)に作用する集団レベルの免疫圧を克服しうるだろう。

NTDの進化的多様性はSの他の部分よりも大きい(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2020.02112/full)。したがって保存された感染増強性エピトープの周囲には、O-グリコシル化によるNTDの立体構造変化がSの融合性再構成に及ぼす負の影響に対抗するアミノ酸変異を取り入れ、組み込み、進化する(即ち、下気道や他の遠隔臓器のレベルでウイルスの「トランス感染性」を回復させる)能力がまだ十分にあると予想される。

以上のことから、ウイルス中和能力が低いことによる上気道でのADEIは、ウイルス侵入の入り口である粘膜組織に常在する樹状細胞に捕捉される感染性SC-2ウイルスの量を劇的に増やし、したがって、一旦「トランス感染」に対する障壁が取り除かれれば、感染性ウイルスがさまざまな遠隔器官に拡散し、下気道でのADEDを誘発しうるリザーバーを劇的に拡大すると結論づけることができよう。RBDのO-グリコシル化によって、この障壁は取り除かれると推測することができる。感染増強部位に隣接するNTDの(高度に)可変性の部位内に1つ以上のアミノ酸変異を追加で組み込むことは、O-グリコシル化されたNewco変異体が最適な「トランス感染性」を回復し、 ADEIによるADEDを可能にする巧妙かつ有効な戦略として機能すると考えられる。

もちろん、RBDのO-グリコシル化密度が高ければ、(樹状細胞表面に発現したC型レクチンによって集められるN型糖鎖のクラスターに加わることで、上気道に常在する樹状細胞へのウイルスの結合を強化して)遠隔の標的臓器における「トランス感染」を促進し、さらには(SC-2感染細胞表面に発現するスパイクタンパク上のオリゴマンノイル化糖鎖と、隣接する非感染細胞上の糖鎖結合領域との相互作用を促進することにより)ウイルス感染細胞と非感染細胞との「トランス細胞融合」が促進される可能性も考えられる。したがって、RBDの部位特異的O-グリコシル化は、(感染増強性抗体の結合を阻害することで)ウイルスの「トランス感染」性、ひいては「トランス融合」能力を回復するだけでなく、ウイルスの「トランス細胞融合」を強化し、その結果、全身性のC-19疾患を引き起こす可能性を高めると考えられる。つまり、ADEIがもたらすADEDの深刻さが増大することになる。

したがって、O-結合型糖鎖をより多く持つSC-2は、ワクチン既接種者に対して毒性が強く、その結果、ワクチン既接種者は重篤な全身性疾患にかかりやすくなると考えられる。

図5:右:遊離ウイルスとしてのNewco変異体のスパイクタンパク質(RBD + NTD)の推定構造の模式図。NTD上の特定の部位に感染増強性抗体が結合すると、RBDが開いた状態になる。多価の結合は、RBDとACE2受容体の結合を可能にする。RBDが開いた状態となること、つまり、ADEIは、RBD上の予測されるO-グリコシル化部位にO-糖鎖(黒い横棒)が追加されても阻害されないだろう。左:遊走する樹状細胞表面に付着したウイルス粒子上のスパイクタンパクのRBDは閉じた状態をとる。このため、O-グリコシル化がNTD内の保存された感染増強性ドメインを遮蔽し、感染増強性抗体が結合して構造変化を引き起こすことを防ぎ、通常S-NTDのガングリオシド結合ドメインが担うSの融合的な再配列を阻害している。このように、O-グリコシル化(NTDの可変部における代償的なアミノ酸変異とともに)は、遊走性樹状細胞から宿主細胞への「トランス」感染の阻害を抑制していると考えられる。

O-結合型糖鎖は、C-19ワクチンへの耐性も可能にし、その結果、ワクチン既接種者に対する高い感染力をもたらすのだろうか?

その通り。それによってNewco変異体はC-19ワクチンに対する完全な耐性を獲得し、既接種者におけるADEIをさらに増加させることさえ可能だろう。

S-RBDがO-グリコシル化されても、S-NTDの保存された領域に対する感染増強性抗体の結合によってRBDが開いた状態にある場合の、S-RBMとACE2受容体の結合を妨げることはない、ということは重要である。これは、上気道で自由に動いている(即ち、樹状細胞に捕捉されていない)SC-2ウイルス粒子に適用されるであろう。したがって、S-RBDのO-グリコシル化は、上気道の上皮細胞に対する抗体依存的なウイルス侵入促進を妨げないということになる(図5右参照)。そして、遊離のNewcoウイルスのRBMは、上気道の標的細胞上のACE2受容体に高い親和性で結合するようになる。このため、ウイルスのRBMとACE2レセプターの結合を中和抗体が阻害することはほとんどない(https://www.nature.com/articles/s41586-021-04386-2)。

したがって、RBDのN末端におけるO-グリコシル化の促進は、RBM内の広範な中和エピトープに対する選択的な免疫圧によるものではない(RBMはいずれにしても免疫原性が低い; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7833242/)が、上気道で起こるADEI(19)をさらに強化することに寄与すると結論づけるのは妥当であろう。

一方、O-グリコシル化は、S-RBD上の可変性のエピトープに向けられた中和抗体に対する抵抗性も高めると思われる。RBDのN末端に挿入されたO-グリカン結合部位は、最初は挿入された糖鎖による遮蔽によってアミノ酸変異の代わりとなり、まずはオミクロンに組み込まれて抗体への抵抗性に貢献すると思われるが、最終的には可変性のRBD領域に対する免疫認識を完全に排除する可能性がある。これにより、新しいO-グリコシル化された変異体にとってこれらのエピトープの自然選択における制約が劇的に緩和されるであろう。o-結合型糖鎖による可変性RBDエピトープの遮蔽は、RBDが開いた状態か閉じた状態かには依存しない。RBD領域自体に結合した糖鎖は、ACE2と直接相互作用しない領域を、「閉じた」状態でも「開いた」状態でも同様に遮蔽/保護することが既に報告されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7523240/)。中和力の強いCOVID-19回復期血漿からのSC-2の逃避には、中和に対する完全な耐性を与えるメカニズムとして、SのN末端ドメインに新しい糖鎖付着部位としてシークオン配列が挿入が含まれることがin vitoro で示されているように(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781313/)、SC-2のS上に追加の糖鎖を挿入することで、その下にあるポリペプチドエピトープを効率的にマスクできることが知られている。これらを総合すると、RBDのO-グリコシル化は、既存のC-19ワクチンだけでなく、将来、S-ベースのC-19ワクチンがどのように「アップデート」されようとも、ウイルス耐性を完全に保証する能力があると結論できるだろう(20)。

S-RBDのO-グリコシル化がNewco変異体の 免疫病態に及ぼす全体的な影響を図6にまとめた。

まとめると、O-グリコシル化Newco変異体は、NTDの保存された「感染増強」部位に対してワクチン既接種者がかける選択的免疫圧に対し理想的に抵抗できると同時に、SベースのC-19ワクチンによる抗体に対する抵抗性が強化された結果として、ワクチン既接種者におけるADEIをさらに強め、それによってADEDを引き起こすだろう。

図6 :より感染性の高い免疫逃避変異体のパンデミック時に行われた集団C-19ワクチン接種により、抗RBD抗体抵抗性の免疫逃避変異体(例えば、オミクロン)の伝播が促進され、感染増強性抗NTD抗体の抗体価が高率に上昇し集団が生成される。これにより、ワクチン既接種者のADEI傾向(感染しやすさ)が強まり、RBDのN末端のO-グリコシル化を利用して抗RBD抗体に抵抗するだけでなく抗NTD抗体を増強すると思われる免疫逃避変異体(例えば、Newco変異体)の伝播を促進させる。RBD上の予測される部位でのO-グリコシル化は、ウイルス中和の阻害を最適化する一方で、抗NTD抗体による「トランス」感染の阻害を抑制する。そのため、下気道や 遠隔臓器における感染細胞と非感染細胞間の抗NTD抗体を介した「トランス」細胞融合を促進しながらADEIによるADEDを可能にすると考えられる。したがって、スパイクのO-グリコシル化の促進は、ワクチン既接種者のADEDの発生率の上昇につながる。


(19) 中和能力のさらなる低下は、非中和性の高親和性抗NTD抗体によるNTDの感染増強部位への結合を増やし、ADEIを促進する。
(20) アップデートされたワクチンには、変異型S由来ポリペプチドの遺伝子コード(遺伝子組み換えワクチンの場合)またはアミノ酸シーケンス(タンパク質ベースまたは不活性化ワクチンの場合)が組み込まれるだろうが、Newco変異体ではそのポリペプチドは遮蔽されているだろう。O-またはN-糖鎖を標的とする結合糖鎖を用いたワクチンは、明らかに自己免疫反応を誘発する危険性がある。SC-2由来の糖ペプチドが強く抗原提示されることによって、Sベースの遺伝子ワクチンによる樹状細胞の異常な(即ち、不十分な)活性化が、そのような自己免疫反応を既に引き起こしている可能性は否定できない。


部位特異的なO-グリコシル化は、ウイルスの表現型にどのような影響を及ぼすだろうか?

ウイルスの進化の観点からすると、ウイルスのライフサイクルに重要な領域を保護する方向への強い選択圧が常に存在するはずである。SC-2は、そのRBDのN末端のグリコシル化を拡大することにより、(樹状細胞に結合したウイルス粒子による)「トランス感染」を「中和」する抗NTD抗体からS-NTDを保護すると同時に、(遊離ウイルス粒子による)感染を「中和」する抗RBD抗体からS-RBDを保護することができるだろう。この結果、ワクチン既接種者に対するウイルスの毒性および感染力が強化され、ADEDの罹患リスクが上昇すると考えられる。

自然選択によってS-RBDのN末端のわずか数ヶ所のO-グリコシル化部位の占有率が増すだけで、樹状細胞に結合したウイルス粒子が、S-NTDに対するワクチン由来の感染増強性抗体による高い免疫圧を克服できるようになり、一方で同じ抗体が、遊離ウイルス粒子によるワクチン既接種者に対するさらに高い感染力(Omicronと比較して)をもたらすと私は予想している。

結論として、、S-NTD上の保存された非グリコシル化部位への感染増強性抗体の高い結合性によってウイルス侵入を促進する要件を満たすと同時に、グリコシル化した部分(すなわちRBD)がまさに同じ抗体に対する盾となって「トランス感染」を促進するという条件にRBDのO-グリコシル化は完全に合致する。これは、O-グリコシル化したスパイクタンパクが、ワクチンによる中和抗体に対してより耐性であることと、O-グリコシル化したスパイクタンパクが融合性再構成をより生じやすいということから直接的に導かれる。したがって、Newco変異体に暴露されたワクチン既接種者は、ADEIのリスクがさらに高くなり、その結果、ADEDに罹患しやすくなるだろう。

言い換えるなら、RBDのN末端のO-グリコシル化は、ACE2依存性の抗NTD抗体によるウイルス−細胞融合をさらに促進し、それによってADEI効果がさらに顕著になり、ACE2非依存性の抗NTD抗体による細胞−細胞融合を促進し、ADEDにつながると考えられるということだ。これは、ウイルスの糖鎖修飾は、ウイルスの感染性と病原性の両方を調節する能力を持ち、免疫圧をかける抗体に対する抵抗性を可能にするが、ウイルスの感染や感染伝搬を阻害することはないという文献上の圧倒的な証拠と完全に一致している(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29579213/; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781313/)。

O-グリコシル化Newco変異体はワクチン接種率の高い集団でどのように進化し、個人と公衆衛生にどのような影響を及ぼすのか?

上述した進化の力学から、NTDの保存された感染増強部位に対する集団レベルの免疫圧が増加すると、より多くの糖鎖を持つ、つまり、より強毒でより感染性の高い変異体が自然選択されることが明らかである。O-糖鎖変異、およびNTDの可変ドメイン内の必要な付随するアミノ酸変異は、ワクチン接種を受けた集団が保存された感染増強NTD部位に及ぼす免疫圧の着実な増加に追いつかなければならず、自然選択される変異体の毒性および感染性の両方も着実に上昇することになるであろう。より感染性が高く、より病原性の高いNewco変異体は、オミクロンに対して競争的適応上の優位性を持ち、さらに高い感染性と病原性を持つ他のNewco変異体に順次置き換わり、その結果、ワクチン接種率の高い集団においてさらに高い適応上の優位性を持つようになるだろう。より感染力が強く、より毒性が強いNewcoが選択されるたびに、重篤な疾患や 死亡に至る感染数は次第に、しかし急速に増加し、変異体の置き換わりに対応する適応間隔もどんどん短くなる(図7参照)。ワクチン接種率が高い国では、このような波が次々と押し寄せてきて、ついには重症化と死亡の大波が押し寄せ、ウイルス感染率、つまり「感染増強性」抗体価が高い状態が続く限り、この波は続くだろう。

ワクチン接種率の高い集団が、中和抗体から逃れるために絶えず進化するSC-2変異体にさらされる場合、病原性の増強と感染力の増強は必然的に互いに関連することになる。このことは、ウイルスの「トランス感染性」(即ち、毒性)に対する集団レベルの免疫圧力の上昇に伴い、C-19疾患の症例数が急速に増加するだけでなく、重症化することを示唆している。また、このウイルスの劇的な進化が止まるのは、感染増強性抗体による集団レベルの免疫圧力が低下した場合のみであることも示している。これは、ウイルスに任せた場合には、増強したウイルスの毒性によって集団が縮小した場合にのみ起こりうることである。

個人の健康という観点で言えば、Newco変異体の感染拡大が進むにつれ、(ADEIを介する)ADEDに罹患する可能性が高まることは明らかであろう。

図7:出現するであろうNewco変異体の進化動態は、その指数関数的な流行拡大と並行して、入院率(すなわち重症化)と死亡率の指数関数的な上昇をもたらすと予想される。X:次のNewco変異体の拡大の開始を示す。破線:「適応の谷」を示す。(VOF)、●:次のNewco変異株の選択開始をす。

より病原性の高いSC-2変異体が優勢になるまでに、どれくらいの時間がかかるだろうか?

RBD上のO-グリコシド部位の変異とNTD内のアミノ酸変異の適切な組み合わせが選択されるには時間がかかるため、最初のNewco変異体が出現するには「もう少し」時間がかかると予想される。しかし、これからウイルスがより強毒でより感染力の強い変異体に急速に進化すると思わせる複数の異なる理由がある。つまり、最初の強毒性変異体が適応の谷を越えてオミクロンに取って代わるまでのタイムラグは、かなり短い(つまり、この原稿を書いている日から2ヶ月以内)と私は考えている。

なぜか?

第一に、SC-2のスパイクタンパク質には、(RBDの大部分を含めないとしても)追加のO-結合型グリコシル化の余地がたくさんあるように思われる。さらに、可変性の高いNTDドメインのアミノ酸を少し変えるだけで、RBDのグリコシル化の密度を上げることが可能であり、初期のRBDグリコシル化によってウイルスの「トランス感染」能力にかかる立体的な圧力を軽減することができると考えられる。

しかし、RBDのグリコシル化を可能にするアミノ酸変異の数が増えたとしても、それほど問題はないように思われる。なぜなら、今や、より頻繁な組み換え事象と種間および種内伝播によって、変異はかなり急速に蓄積されるようになったからである。種を越えたウイルスの伝搬にはRBM(即ち、SC-2とACE2受容体の効率的な結合に必須な限られた数のアミノ酸からなるモチーフ)が保存されているかどうかで決まるようであるから、SC-2(オミクロンを含む)はいくつかの異なる動物種に感染することができる(https://bmcresnotes.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s13104-020-05242-8.pdf)。これは、逆ズーノーシス(人から動物への感染)が頻繁に発生していることを示唆する(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168170221001805)。したがって、オミクロンはSC-2の新しい、さらに大規模な 保菌動物群を作り出す可能性が非常に高い。しかし、それだけではなく、特にワクチン接種を受けたヒト集団は、ワクチン由来抗体による感染率が増強されていることにより、ウイルスの重要なリザーバーとしてますます機能するようになってきている(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.28.22270044v1)。つまり、ウイルスが複製され、感染し、その結果、突然変異や組み換えを起こす機会がふんだんにあるのである。ウイルスが変異を選択するための武器庫を増やしているのである。

さらに、NTDとRBDは構造上の可塑性が高いため(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7962585/; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7953435/; https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acscentsci.0c01056)、自然選択によって高い感染性と強い毒性を両立させる、RBDのO-グリコシド変異とNTDのアミノ酸変異の複数の異なる組み合わせが可能であると思われる。

さらに、Newco変異体のNTDの変異の選択の基準はそれほど厳しいものではないだろう。なぜなら、いくつかの異なるアミノ酸変異とその組み合わせが、RBDが閉じた状態にある場合にRBDのO-グリコシル化によって引き起こされるNTDの構造変化を埋め合わせることができる可能性があるからである。
重要な事は、オミクロンによって選択された重要なアミノ酸変異を保存しようとするRBDに対する選択圧は、RBDのさらなるO-グリコシル化によって弱まり、スパイクタンパクのこの部分がもはやNewco変種のライフサイクルにとって重要でなくなるため、完全に緩和される可能性が高い。つまり、Newcoの変異体は、S-NTDとS−RBDの両方において、相当高い抗原多様性を特徴とする可能性があるということだ。

以上の考察から、Newco変異体の自然選択は急速に起こるだけでなく、その自然選択は世界中のワクチン接種率の高い集団において完全に独立して起こることが予測される。その抗原構成の多様性にかかわらず(発生した地域によってかなり異なる可能性がある)、選択されたNewco変異体は現在Omicronに曝されているすべてのワクチン接種率の高い集団で等しく広まるであろう。なぜなら、これらの集団に対する感染力は、RBDおよびNTDの保存されていない領域の抗原変異が大きくても影響を受けないからである(上記参照)。この多様性が、NTDの保存された抗原性部位への感染増強性抗NTD抗体の結合にも、保存されたRBMのACE2への結合にも影響しないことはじつに明白であろう。

一方、動物種での共感染やさらなる進化によって生じる活発な遺伝子組換えや遺伝子再集合によって、いくつかの新しい変異体が出現する可能性がある。新規ウイルス変異体というものは次々に発見されるものであって、その中には他の変異体とは異なる特徴をもつものものもあるが(例えば、デルタクロン、コンビクロンなど)、上記の選択基準に従わない限り、オミクロンを追い越すチャンスはないだろう。

結論として、現在蔓延している感染増強性抗NTD抗体による集団レベルの免疫圧力の中では、より多くの免疫逃避変異体がワクチン接種率の高い集団でどんどん広がり、ワクチン既接種者に対してより高い感染力とより強い毒性を示す可能性が、現在劇的に高まっていると私は予測している。

ワクチン非接種の健康な人では、O-グリコシル化Newco変異体は無症状から軽症の疾患を引き起こすのみである。

コロナウイルス(CoV)を含むいくつかのエンベロープウイルスは、宿主細胞によって合成された糖鎖で修飾され、「自己」糖鎖(例えばシアル酸)で覆われており、自然免疫細胞の表面に発現するシアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(Siglecs)によって感知され、このシグナルを用いて免疫炎症媒介物質(例えばサイトカイン)を産生する。Sタンパク質をはじめとするウイルス糖タンパク質の糖鎖は、宿主の糖鎖合成装置によって合成されるものであり、従って、自己糖鎖である。これらの自己由来の糖鎖は、「非自己」のウイルスペプチドを覆い隠し、宿主の免疫反応を回避するウイルスのエレガントな戦略である。Sタンパク質は、例えば、かなりのオリゴマンノース型糖鎖を含むいくつかのS関連グリコシル化部位の存在に例示されるように、S糖鎖のプロセシングが宿主糖タンパク質のそれと大きく異なることができるという点で、多くの「変わった」または「自己類似」グリコシル化パターンの集団を含むことに注意することが重要である(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7199903/)。同様に、「自己類似」糖鎖パターンは、B1a細胞由来の自然免疫系細胞上のBCR(B細胞受容体)によって認識される。したがって、その表面に糖鎖修飾されたタンパク質を持つSC-2や他のエンベロープ型ウイルスが、B1a細胞由来の自然免疫系細胞によって認識されることは驚くべきことではない(https://www.nature.com/articles/s41435-020-0105-9.pdf)。これらの細胞の活性化は、主にIgMアイソタイプの比較的低親和性の多価性自然抗体の産生を刺激すると考えられている。その結果、NK細胞を活性化し、感染の初期段階や侵入のまさに入り口(すなわち上気道)で、自己に類似した糖鎖パターンを表面に示すウイルス感染細胞の殺傷を促進すると考えられる。環境からの暴露に対する自然免疫のエピジェネティックな適応機構と、B1a細胞の発生におけるBCRシグナルの指示的役割に沿えば(https://www.nature.com/articles/s41577-020-0285-6.pdf; https://www.jimmunol.org/content/204/1_Supplement/241.3; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5943138/pdf/nihms934113.pdf),、ウイルス曝露による活性化の後、B1a自然免疫細胞が、O-グリコシル化部位の変異によって生じた自己類似糖鎖パターンの変化を認識するように、その機能を再プログラムし改善(「訓練」)すると考えることは非常に妥当であろう。追加のO-型糖鎖は宿主の糖鎖形成装置によって等しく合成されるので、追加のO-型糖鎖の変異が組み込まれても、S表面の全体的な糖鎖パターンの認識効率は低下しないと考えられる。それどころか、S上の自己由来のグリコシル化パターンに対する上述の変化は、自己認識性の自然免疫細胞の活性化と長期的な機能再プログラミングを促進し、新しいO-グリコシル化変異体に対する親和性の高い、関連する多価性自然抗体(IgM)を提供することになる、と私は想定している。このことは、これらの抗体のウイルスに対する防御効果を向上させるだけでなく、獲得される可能性のある感染増強性S特異抗体と競合する能力も向上させると考えられる。したがって、自然免疫の訓練は、その後のCoV感染に対する免疫反応をより効果的にすると考えられる。この仮説は、ワクチン有効性がすべての年齢層で完全にマイナスになったという英国健康安全局(UKHSA)の最近のデータによって確認されたように思われる(https://www.gov.uk/government/publications/covid-19-vaccine-weekly-surveillance-reports)。興味深いのは、少なくともある研究チームは、自然免疫系の多価性抗体が、NTDの感染増強性部位への結合において抗NTD抗体と競合している可能性を認めていることである。彼らは文字通りこう述べている:

「未感染者のなかに、極めて低い頻度ではあるが、NTD上の感染増強部位を認識する抗体を持っている者が存在することは注目に値する。感染増強性抗体のエピトープには荷電残基が含まれているため、NTDへの結合は多価性抗体によって媒介されている可能性がある。しかし、感染性増強部位に対する血清抗体は、RBDトランスフェクタントに結合しなかったことから、結合は感染増強部位に特異的であることが示唆された 。」(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。
また、彼らは未感染者は野生型および変異型 NTD の両方を認識することを確認した。感染増強性抗体は高度に特異的であることから、未感染者による感染増強性エピトープの認識は非特異的であり、それゆえその抗体に感染増強性はないと考えられる。NTDの感染増強部位にある抗体エピトープはSC-2変異体の間では保存されているが、一般的なCoV間では保存されていないため(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)、以前のCoV感染によって誘導された抗NTD抗体によって感染が促進されることはないと考えられる。しかし、自然免疫系の多価性抗体は、糖鎖を持つ多様なエンベロープウイルスに反応すると考えられており、もちろん、様々なCoVに反応する。このことは、未感染者の抗NTD抗体が野生型および変異型NTDのいずれにも反応することから確認された、といってよいだろう(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。
さらに、感染増強性抗NTD抗体がない場合には(すなわち、ワクチン非接種者においては)、RBDのN末端の糖鎖付加配列に追加された多数のO型糖鎖部位は、NTDの可変性領域に挿入されたアミノ酸変異と十分に相乗効果を発揮してO型糖鎖が「トランス感染」を阻害する事を防ぐことは出来ないだろうと予想される。したがって、ワクチン非接種者の感染増強性抗NTD抗体の欠如は、上気道における遊離SC-2ウイルス粒子(Newco変異体を含む)の感染性を低下させるだけでなく、遊走性樹状細胞または肺上皮細胞に付着したSC-2ウイルス(Newco変異体を含む)の「トランス感染性」をも低下させることになると思われる。つまり、自然免疫系が弱まっていたり、あるいは自然抗体(IgM)産生B細胞のエピジェネティックな「訓練」の恩恵を十分に受けられない人でも、ワクチンを接種しなければ、ウイルスの感染性や病原性の低下から恩恵を受けることができると考えられるのだ。ワクチン非接種者の大多数ではニューコ変異体の感染は完全に無症状である可能性があるが、それでも何らかの疾病を発症する者に誘導される抗体は、免疫原性が増強された結果、広く交差防御的な中和抗体となる可能性がある(21)。結論として ワクチン非接種者の大多数にとって、自然免疫系細胞の能力を訓練するために支払う代償は、軽度から中等度の上気道炎症状を超えることはないだろう。このような人々にとって、O-グリコシル化密度が高い新しい変異体は、(O-グリコシル化の進行により)本来的に弱体化していくため「弱毒生ワクチン」の改良型とさえ考えられる。しかし、ウイルスの弱毒化の促進は非接種者においてのみ認められるものとなるだろう。なぜなら、非接種者では自然免疫の保護能力は、ワクチンによる免疫プライミングによって損なわれていないからである。従って、すでにマイナスに転じたC-19ワクチンの有効性が、すべての年齢層でさらにマイナスになることが示唆される(22)。さらにこのことは、Newco変異体がワクチン非接種者にADEIを引き起こす可能性は極めて低いことを強く示唆している。従って、ワクチン非接種者がADEDに罹患する可能性は極めて低いと考えられる。


(21) 免疫原性は、ウイルスが遊走する樹状細胞に付着するときに起こるであろうRBMの「非補償的」な構造変化によってもたらされる可能性が高い。
(22) 当初、ワクチン有効性は高年齢層(18歳以上)においてのみマイナスで あった。これはおそらく、エンベロープウイルス上の自己類似糖鎖パターンを認識するための自然免疫が小児よりもよく訓練されていたためと考えられる。幼小児の自然免疫系抗体は親和性が低いため、重症化に対する防御力を持つことが知られている感染増強性ワクチン抗体に容易に打ち負かされたのであろう。しかし、UKHSAの最近のデータが示すように、ワクチン非接種の小児は、ウイルスへの曝露が進むにつれて、自然免疫の訓練を急速に積むことが可能である。進化するウイルスの変異体への再曝露は、自然免疫細胞の活性化の結果、長期的な機能的再プログラミングを引き起こし、それによってその後の感染に対する反応を強化することができると考えられる。

なぜC-19ワクチン既接種者は、循環する変異体がワクチン抗体の中和能力に対して耐性を持つようになると、関連する自然免疫細胞に頼れなくなるのだろうか?

中和抗S抗体は、主にS-RBD内の免疫優性エピトープを標的とするため、SC-2に対して強い親和性を持つ。その高い親和性により、これらの抗体はCoV表面の自己類似糖鎖を認識する自然免疫系の多価性IgM抗体を容易に凌駕する。RBDエピトープとワクチン由来抗体が十分に適合している場合、このことがウイルスの感染・拡散を抑制する上で問題となることはない。しかし、(中和能を有する抗S抗体に対するウイルスの抵抗性のため)ワクチンに由来する抗体のウイルス中和能が十分でない場合であっても、全てのSベースのC-19ワクチンにおいて等しく誘導される感染増強性抗NTD抗体によって、これらの自然免疫系多価性IgM抗体が凌駕されてしまう場合がある(図3参照)。NTD部位は比較的保存されている(つまり、すべての異なるSC-2変異体間で共有されている)ので、新規免疫逃避変異体への再曝露により感染増強性抗体が呼び起こされ、循環する変異体に対するワクチン由来抗体の中和力が低い場合にはSに対して不釣り合いに高い親和力で結合することになる。ワクチン接種前に、関連する自然免疫細胞の機能が十分に訓練され、より親和性の高い多反応性IgMが産生されるようになっていなければ、ワクチン既接種者におけるSC-2の感染性および病原性は、ワクチンに由来する感染増強性抗体、特にワクチン耐性変異体の蔓延により絶えずブースト(強化)される抗体によって大きく左右されることになろう。

自然からの教え

多くのCoVと脊椎動物は、宿主とウイルスの利害の健全なバランスを保ちながら共に進化し、その結果、長期的な均衡を保っているが、必ずしも永遠に安定しているとは言えない。CoVは、宿主と持続的な関係を築くことができるような、恒常性を維持するための進化的に安定した戦略を発達させてきた。集団ワクチン接種は、宿主の最も強力な(すなわち殺菌免疫を付与する)CoVに対する自然な免疫防御ラインを、殺菌しないために集団免疫を生成できず、したがってウイルスを制御できないワクチンに誘導される免疫反応に移行させ、宿主がウイルスの伝播と拡散を制御する能力を大きく撹乱した。このため、ウイルス-宿主間の相互作用によって、健康な集団でのウイルスの持続を保証するバランスのとれたウイルス宿主間の生態系が確立されることはない。急性自己限定性感染症のパンデミックの場合、集団免疫がパンデミックを終了させ、ウイルスを地域性の流行に追い込むための絶対条件となる。しかし、宿主とウイルスの健全な平衡状態は、宿主集団がウイルスと戦いに非殺菌性の免疫攻撃を大量に用いる限り、達成されることはない。殺菌免疫を誘導するワクチンがない場合に、集団がウイルスを効果的に制御し、圧倒的な免疫逃避変異体に進化するのを防ぐために使える唯一の免疫戦略は、人々が(健康な免疫系の「訓練」によって!)生来の免疫防御力を最大限に活用して体内に持ち込まれるウイルスの大部分を殺菌できるようにすることである。

自然免疫系がCoV感染を阻止するのに苦戦して、したがってウイルスを排除するために短命のMHC非拘束性細胞障害性CD8+T細胞(23)の助けが必要となる場合では、S特異的抗体が誘導されて、次の曝露時に速やかに呼び戻されて自然免疫系の殺菌免疫を支援することになろう。自然なパンデミックの経過の場合、これらの抗体は、次の変異体が以前のウイルスと大きく異なる場合(例えば、抗原シフトが生じた場合)を除き、実際に十分な中和能力をもって対処できるであろう。結果として、CoVに対する殺菌免疫は、(訓練された)自然免疫エフェクター細胞(すなわち、多価性IgMを産生する自然免疫B1a細胞と記憶B細胞が産生する抗原特異的抗体の補助)によりもたらされることになる。

進化するウイルスにさらされた直接的な結果としての、S特異的中和抗体は自然免疫系の「訓練」 とともに、宿主の免疫防御の全体的な殺菌能力を強化することになる。この能力が集団レベルで十分に高まったとき、パンデミックは、ウイルスの感染率が非常に低いことを特徴とする地域性の流行期(エンデミック)に移行する。一旦エンデミックとなれば、(無症状の種内または種間感染によって生じる)感染圧力が、集団の(脆弱な)一部の免疫防御を突破するほど大きくならない限り、ウイルスは制御された状態を維持することになる。エンデミックな状態であっても、このような場合 ーたとえ、影響を受けるのが人口の一部分であったとしてもー 突発的な流行が発生する可能性はある。

集団免疫には強力な自然免疫が必要であること、そしてワクチン既接種者では(たとえワクチンが「効かなくなった」としても)関連する自然免疫系IgMの能力が低下していると考えられることから、ワクチン接種率の高い集団が感染の連鎖を遮断するレベルの殺菌免疫を獲得する可能性は低い。つまり、CoVに対する集団の自然免疫防御の第一線が抑制されている限り、たとえ今のところ大部分は軽症で済んでいるとしても、ウイルスを十分に手なずけてエンデミックに追い込み、より危険な変異体への進化を防ぐことはできないのである。したがって、(あらゆるSC-2変異体を含む)CoVに対する自然免疫防御力が弱い、あるいは抑制されている人々が集団の大半を占める限り、適応と免疫圧に基づいて自然選択されたSC-2変異体が優勢に伝播し、パンデミックを引き起こし続けると仮定することは不合理なことではない。それは必然的に、人口の大多数が、中和しない、感染を増強するワクチン由来抗体を(例えば、感染力の強い変異体が蔓延する結果として)増強し続ける限り、パンデミックが続くことを意味する。このことは、パンデミックを「積極的に」終わらせるためには、ワクチン抗体の呼び戻しを防ぐか、ワクチン非接種者のプールを強化し、その割合を、過去に同様の自然パンデミックをうまく制御できたほど高い割合に引き上げる必要があることを意味する(24)。もし、大規模な抗ウイルス化学予防プログラムが開始されなければ、集団免疫は次のような方法でしか自然に発生しないであろう。

  1. 大規模なベビーブーム。しかし、それは時間がかかりすぎ、現実的な解決策ではない。

  2. ワクチン接種の不十分な国からワクチン接種率の高い国への大規模な移民。しかし、公衆衛生当局がすでに入国の前提条件として移民の検査とワクチン接種を義務付けているため、これも実現しそうにない。

  3. ウイルスが感染力の強い、より毒性の強い変異型に進化し続けることで、VOC(Variant of Concern:懸念の変異体)がVOHC(Variant of High Consequence:高い結果の変異体)に移行し、自然免疫抑制を被る人々(その多くはワクチン既接種者の一部)に高い割合で重症化と死亡をもたらすようになること。そうなって初めて、健康なワクチン非接種者という少数集団が、集団免疫を可能にする十分な殺菌免疫を提供できるようになる。

大規模な抗ウイルス薬プログラムがワクチン接種率の高い国で直ちに実施されない限り、オミクロンの病原性にかかる免疫圧の増大は、オミクロンと比較してさまざまな面(ワクチンへの完全耐性により強化された感染力、伝播力、病原性)、および、特にワクチンの結果、自然免疫力が抑制されているすべての人口層で圧倒的な競争優位性を獲得する新しいSC-2変異体(Newco変異体)の自然選択と伝播を促すことになるであろう。C-19ワクチン接種は、CoVからの防御に加えて、他のエンベロープ型糖鎖ウイルスからの防御にも働く自然免疫の多価性抗体反応の機能を抑制するだけではなく、中和抗体に対するウイルス抵抗性の獲得によりウイルスの感染性を促進する(25)。ワクチン接種率の高い集団では、現在、感染増強性ワクチン抗体がウイルスの毒性に強い免疫圧をかけ続けており、感染増強(ADEI)は、ADEDを促進する新たな逃避変異体への道を開いている。オミクロンに対するワクチン接種は、オミクロンへの自然暴露と同様に、感染増強性抗NTD抗体の想起につながる。重症化するリスクが最も高いのは、自然暴露の前にワクチン接種を受けた人である。ワクチン接種後には、S-NTD上の保存された抗原部位を標的とするするワクチンに由来する感染増強性抗体による抑制を長く受けるため、彼らの自然免疫細胞はもはや「訓練可能」ではないかもしれない。これらの抗体は、感染力の強い変異体が流行しているため、定期的に増強される可能性が高い。そして、現行のC-19ワクチンの追加ブースター接種は、抗NTD抗体価をさらに上昇させるだけであり、したがって、ADEDを可能にするNewco変異体の選択と拡大を等しく促進する可能性がある。

この悲痛な、しかし真に科学的な展望は、他のウイルスに感染した宿主細胞(例えば、インフルエンザ)や非感染性疾患によって病的に変化した宿主細胞(例えば、がん細胞)に発現する自己類似糖鎖の免疫認識を長期にわたって抑制することによって生じる健康被害の可能性に関する多くの懸念については全く触れてさえいないのである。


(23) CoVの場合、”万能”の(全ての変異体に有効な)細胞傷害性記憶T細胞が生成される証拠はない。
(24) 「同様」とは、他の急性自己限定性呼吸器疾患(例:インフルエンザ)のパンデミックを指す。
(25) 抗RBM抗体に対する耐性は、自然感染の結果として抗S抗体を獲得した個体では次の理由によりほとんど生じない。i)抗RBM抗体は、ワクチンのS抗原よりも循環する変異体上のS抗原によくマッチする。ii)自然感染においては抗S抗体が生成される前に自然免疫系が活性化され、自然免疫系が、抗S抗体が高濃度に達する前に、ウイルスの大部分を除去する。


このパンデミックの初期(つまり免疫的にナイーブな集団に)に生きた(弱毒化した)ウイルスのワクチン接種を行っていれば、同じように破滅的な道をたどらずに済んだと考えられるのはなぜか。

現代のワクチンによって誘導される高力価の中和性抗S抗体が殺菌免疫を提供するのに対し、パンデミック時のワクチン接種では最適でない抗S抗体が生じ、そのため、より感染性の高い免疫逃避変異体が優勢に伝播し、その結果、集団における感染増強性抗体の力価が増加し続けることになる。これらの抗体は、ウイルスを一時的に「麻痺」させるが、ウイルスを死滅/除去することはできないという点で、一種の「疑似免疫」であると考えることができる。既存の中和性抗S抗体がない場合、(パンデミック時に)集団免疫を獲得するための最良の方法は、訓練された自然免疫と自然感染による獲得免疫による補完である。遺伝的に安定な弱毒生SC-2は、免疫逃避を引き起こすことなく、人々の自然免疫の訓練に貢献することができたかもしれない。もちろん、弱毒生ワクチンは、免疫不全の人に(重篤な)疾患を引き起こす危険性が常にある。

急性自己限定性ウイルス感染症のパンデミックは、公衆衛生の観点からどのように監視されるべきか?

パンデミックの進展を確実にモニターする唯一の方法は、集団におけるウイルス感染率の推移を測定することである。この目的のために、異なるアッセイターゲット(すなわち、ヌクレオキャプシドタンパクとスパイクタンパク)に対する抗体を検出する標準化された血清アッセイを使用して、ワクチン既接種者(抗スパイク抗体のみの存在)と自然感染者(抗ヌクレオキャプシドと抗スパイク抗体の両方が存在)の割合を特定することができる(https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/Considerationsfor-the-use-of-antibody-tests-for-SARS-CoV2-first-update.pdf)。現在、多くのSC-2感染が軽度から中等度の症状であるため、集団レベルの血清検査は、C-19疾患の明白な徴候を呈する個体に限定することができる。血清転換を検出するために、2週間後に検査を繰り返すべきである。感染者の病気の程度やウイルス排出量の程度を調べても意味がない。なぜなら、病気の程度の低下やウイルス排出量の低下は、ウイルスの感染力の高さと関連する可能性さえあるからである。パンデミックは周期的な波を繰り返しながら進行するダイナミックな現象なので、ある時点の感染率のスナップショットを見ても何の意味もない。介入の成果を評価するためには、感染率を数週間から数カ月にわたってモニターし、感染の波の頻度と強度が減少したかどうかを評価する必要がある。

結論

集団ワクチン接種は、宿主集団がウイルスの感染と伝播を効果的に制御する一方で、ウイルスが永続する機会を残すという進化の全般的特徴として、自然なパンデミック時に通常形成されるはずのウイルス感染性と自然免疫の健全なバランスを阻害した。ウイルスを地域的流行レベルに抑え、ウイルスの感染力と集団レベルの免疫力との健全な均衡を保つためには、パンデミック時に集団免疫を実現する唯一の方法である自然免疫が鍵となる。

自然なパンデミックは自然に集団免疫をもたらすが、ウイルス感染の連鎖を断ち切ることのできない集団ワクチン接種キャンペーンによってかき乱されたパンデミックは、最終的にウイルスがワクチンによる免疫反応に完全に抵抗することを可能にする。ウイルスの感染力に対する集団レベルの免疫圧力(ワクチンによる抗RBD抗体による)が高まった結果、ウイルスは第一段階として、潜在的に中和する抗体から逃れ、感染力のレベル(ADEI)を上昇させることになる。このため、現在では、感染力が強く、中和性のあるワクチン抗体に対して大きな抵抗力を持つオミクロンが優勢となっている。ワクチン接種率高い集団が、現在、C型レクチンを介したウイルスの「トランス感染性」(すなわち、非中和性の感染「増強性」抗NTD抗体による)に対して免疫圧を高めているため、次の段階ではウイルスはその毒性をも高めるように進化し、それによってワクチン既接種者の重症化(ADED)および死亡が劇的に増加する可能性が最も高いと思われる。感染および疾病の増強のメカニズムは、スパイクタンパク上の保存された部位を標的とする非中和性抗体の結合を介するため、ADEIおよびADEDの発生は、ウイルス感染を抑制し得るワクチン抗体(すなわち、ウイルス中和抗体)に対してほとんど耐性であるSC-2変異体にさらされた「高ワクチン-高ブースト」集団において特に顕著になると思われる。しかし、ワクチン非接種者では、オミクロンは、現在および将来のすべての変異体を含むCoVに対する自然免疫防御を損なうのではなく、高めている。今後出現するNewco変異体が組み込む変異は、ワクチン接種率の高い集団が現在ウイルスの毒性/病原性にかけている免疫圧力に適応するためのもの(すなわち、O-糖鎖部位の変異)と考えられるが、非接種者では「増強性」抗体が欠如しているためウイルスの侵入と「トランス」感染の両方に立体障害を引き起こす可能性が高い。したがって、このような人々は、ADEIやADEDへの感受性が高まることはないだろう。ウイルスの感染力と病原性が本質的に低下していることを考えると、ワクチン非接種者の中のより脆弱な者であっても、ウイルスに曝露によって重症化する可能性は低く、広く交差防御性抗体を発達させる可能性が高いだろう。ウイルスとヒトの双方に利益をもたらす健全なバランスを取り戻すためには、ウイルスの感染圧力とヒト集団レベルの免疫圧力のいずれかを劇的に低下させることが最も重要である。ワクチン接種率の高い集団では両者が本質的に結びついているため、その目標に到達するには、感染圧力または免疫圧力のどちらかを下げれば十分である。ワクチン接種率の高い集団の感染圧力を下げるには、ヒトの手によって大規模な抗ウイルス化学予防キャンペーンを行うしかない。人類がそうしないのなら、これらの集団の免疫圧力を下げるのはウイルスにまかせろということになるのは間違いない。

 図1:ワクチン接種率が高い全ての国(インドを除く)では感染者率(過少報告されている!)は依然として高く、多かれ少なかれ強い変動があるが、明らかにベースラインを上回っている。


図2:抗RBD中和抗体に対する耐性を強化した感染力の強いSC-2変異体は、ADEIを引き起こしやすい一方で、「トランス」感染を阻害してウイルスの病原性/毒性を低下させる。
図3:自然免疫系多価性抗体と非中和性抗NTD抗体のSC-2ウイルスへの結合をめぐる競合。自然免疫系がSC-2変異体を効果的に排除するには、自然免疫系の抗体の親和性が高いほど(訓練!)、ワクチンによる抗NTD抗体の親和性が低ければ低いほど、より効果的である。ワクチン既接種者の血清は、ウイルス中和能が低いため、比較的高い感染増強能を有すると考えられる。感染増強は高親和性抗NTD抗体によるもので、パンデミック時には継続的に増強されるため、訓練されていない自然免疫系では対抗できない。
図4:SC-2パンデミック時のC-19集団ワクチン接種の結果。ワクチン由来中和抗体に対するウイルスの抵抗性は、必然的にADEIの高い発生率につながり、最終的にはワクチン接種率の高い集団ではADEIを介したADEDにつながる。感染増強性抗NTD抗体が高力価で存在すると自然免疫系IgMと競合してSC-2に結合するため、集団における感染増強性抗NTD抗体価の上昇は、集団レベルで自然免疫系の抗体による免疫を抑制し、したがって、集団免疫を阻害する。集団免疫の欠如は、ウイルス感染の連鎖を許すこととなり、感染増強性抗体価の高い人々が劇的に減少しない限り、ウイルスの進化動態を止めることはできない。現在のパンデミックの悲惨な展開を避けるためには、ワクチン接種率の高い集団に大規模な抗ウイルス化学予防キャンペーンを展開するか、人々の免疫防御の第一線のうち抗体とは競合しない重要な要素(すなわち、ナチュラルキラー細胞)を強化する免疫戦略を実施することによって、ウイルスの感染連鎖を断つことが最も重要なのである。ウイルス自体では、多価性IgMに勝る感染増強性抗NTD抗体を継続的に呼び起こしてしまうため、ワクチン既接種者の自然免疫系を訓練することはできない。 数字(1-6)は免疫病原性事象の順序を示す。
図5:右:遊離ウイルスとしてのNewco変異体のスパイクタンパク質(RBD + NTD)の推定構造の模式図。NTD上の特定の部位に感染増強性抗体が結合すると、RBDが開いた状態になる。多価の結合は、RBDとACE2受容体の結合を可能にする。RBDが開いた状態となること、つまり、ADEIは、RBD上の予測されるO-グリコシル化部位にO-糖鎖(黒い横棒)が追加されても阻害されないだろう。左:遊走する樹状細胞表面に付着したウイルス粒子上のスパイクタンパクのRBDは閉じた状態をとる。このため、O-グリコシル化がNTD内の保存された感染増強性ドメインを遮蔽し、感染増強性抗体が結合して構造変化を引き起こすことを防ぎ、通常S-NTDのガングリオシド結合ドメインが担うSの融合的な再配列を阻害している。このように、O-グリコシル化(NTDの可変部における代償的なアミノ酸変異とともに)は、遊走性樹状細胞から宿主細胞への「トランス」感染の阻害を抑制していると考えられる。
図6 :より感染性の高い免疫逃避変異体のパンデミック時に行われた集団C-19ワクチン接種により、抗RBD抗体抵抗性の免疫逃避変異体(例えば、オミクロン)の伝播が促進され、感染増強性抗NTD抗体の抗体価が高率に上昇し集団が生成される。これにより、ワクチン既接種者のADEI傾向(感染しやすさ)が強まり、RBDのN末端のO-グリコシル化を利用して抗RBD抗体に抵抗するだけでなく抗NTD抗体を増強すると思われる免疫逃避変異体(例えば、Newco変異体)の伝播を促進させる。RBD上の予測される部位でのO-グリコシル化は、ウイルス中和の阻害を最適化する一方で、抗NTD抗体による「トランス」感染の阻害を抑制する。そのため、下気道や 遠隔臓器における感染細胞と非感染細胞間の抗NTD抗体を介した「トランス」細胞融合を促進しながらADEIによるADEDを可能にすると考えられる。したがって、スパイクのO-グリコシル化の促進は、ワクチン既接種者のADEDの発生率の上昇につながる。
図7:出現するであろうNewco変異体の進化動態は、その指数関数的な流行拡大と並行して、入院率(すなわち重症化)と死亡率の指数関数的な上昇をもたらすと予想される。X:次のNewco変異体の拡大の開始を示す。破線:「適応の谷」を示す。(VOF)、●:次のNewco変異株の選択開始をす。

付録

Ⅰ.SC-2のグリコシル化について

コロナウイルスのスパイクタンパク(SC-2のSを含む)の糖鎖形成、SC-2の糖鎖とC型レクチンとの相互作用、SC-2の感染性を調節する可能性について、以下の素晴らしい総説から重要な知見を得た。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32178593/ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7199903/ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253482/ https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmolb.2021.629873/full https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7863934/pdf/ijms-22-00992.pdf
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32178593/ https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acscentsci.0c01056

糖鎖は糖タンパク質上の特定の領域を塞ぐ役割を担っており、そのために露出し、免疫認識に対して脆弱であることが繰り返し報告されている。部位特異的糖鎖付加解析の結果、SC-2スパイクタンパク質の糖鎖シールドは他のコロナウイルスと一致し、同様にNTDの感染増強性抗体で認識される部分を含む糖鎖シールド全体に多数の脆弱性を示すことが明らかとなっているhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253482/; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32366695/)。SC-2 Sタンパク質を構成するマンノース型N-結合型糖鎖の大部分を占めるマンノース残基は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体との結合(https://www.nature.com/articles/s41580-021-00418-x.pdf)に先立って標的細胞表面のグリコサミノグリカン(GAG)やシアル酸含有オリゴ糖などの細胞表面付着因子と相互作用する重要な部位である(https://www.pnas.org/doi/epdf/10.1073/pnas.1712592114; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7112261/; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7278709/; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128678/)。

樹状細胞や内皮細胞、肺胞上皮細胞など、ACE2を非常に低いレベルでしか発現しない特定の宿主細胞上のC型レクチン(DC-SIGN、L-SIGN、SIGLEC1)は、オリゴマンノシル化N-結合型糖鎖の付着因子として、それぞれACE2依存的トランス感染またはACE2非依存的トランス細胞融合を促進する役割も果たす(以下のIIIを参照のこと)。

Ⅱ. SC-2のO-グリコシル化について

O-型糖鎖は、いくつかのウイルスタンパク質上でも観察され、ウイルスタンパク質の生物学的活性に関与していることが示唆されている(https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691; https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9)。SC-2スパイクタンパク質のO-グリコシル化に関しては、X. Zhaoらによって発表されたレビュー( https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmolb.2021.629873/full)に最もよく要約されており、次のように述べられている。

"N-結合型グリコシル化の一貫した結果とは対照的に、Sタンパク質のO-結合型グリコシル化パターンは、使用するタンパク質の発現系や検出方法の違いによって研究グループごとに異なった結果となっている。Shajahanらは、S1とS2を独立して発現させた場合に高いレベルのO-グリコシル化を報告し、
S1サブユニット上のThr323とSer325の部位にO-グリコシル化を検出した (Shajahan et al., 2020(26)).しかし、他の2つの報告では、S三量体を解析に用いた場合、ほとんどのO-glycan修飾部位で低い占有率が検出された (Watanabe et al(27)., 2020; Zhao et al., 2020(28)).この矛盾の説明として考えられるのは、Sタンパク質が異なるコンフォメーションあるいはオリゴマー状態で異なるタイプの糖鎖修飾を受ける可能性があることである。さらに、Andersenらは、furin切断部位の近傍にユニークなO-結合型糖鎖パターンを予測し(Andersenら、2020(29))、この切断部位周辺のグリコシル化がSタンパク質の活性化を調節すると考えている。Sandaらは、このFurin切断部位付近のO-グリコシル化(T678)をMSベースの手法で確認し、さらに8つのO-グリコペプチドを同定した(Sandaら, 2020(30))。ほとんどのOlinkedグリコシル化の機能的な役割は、完全には解明されていない。"

(26) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7239183/
(27) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32366695/
(289 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1931312820304571
(29) https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9
(30) https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.07.05.187344v1

アスパラギン残基は、その残基がAsn-X-SerあるいはAsn-X−The配列の一部である場合にのみオリゴ糖を受容することができる(Xはプロリン以外の任意の残基)(https://cshperspectives.cshlp.org/content/5/8/a013359)。一方、一般的あるいはアイソフォーム特異的なO-グリコシル化のための保存されたタンパク質配列モチーフは存在しないため、この修飾を予測することははるかに困難である(https://www.jbc.org/article/S0021-9258(20)51541-X/fulltext; https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691)。

これまで、オミクロンを含む優勢変異体の変異は、オリゴマンノース型糖鎖を含む糖鎖部位に影響を及ぼすことは報告されていない(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253482/)。この知見は、糖鎖付加部位が一般に選択圧を免れていることを示しているように思われ、このことがSC-2の感染性に必要かつ十分なものであることを示唆している。しかし、中和力の高いCOVID-19回復期血漿からSC2が逃避するin vitroにおけるメカニズムに、スパイクタンパク質のN末端ドメインに新しい糖鎖付加配列を挿入して、中和に対して完全に抵抗性となるものが示されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781313/)。

III. SC-2感染の病理生物学におけるC型レクチンの役割について

C型レクチン受容体(DC-SIGN/L-SIGN/LSECtin)はいくつかの異なるタイプの宿主細胞上に発現し、マンノース型糖鎖(高マンノース型糖鎖、複合型糖鎖)やSC-2 Sタンパク質上のO型糖鎖を認識する。C型レクチンは、宿主細胞の種類や細胞表面での発現量に応じて、シスあるいはトランス感染を促進し、ACE2を介したウイルス侵入を可能にする(https://www.nature.com/articles/s41590-021-01091-0.pdf)。

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