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下水中のSARS-CoV-2ウイルスの量は、また増え始めているのだろうか。

Dr. Geert Vanden Bossche 2024年2月6日投稿(Substack)2月7日(Voice For Science and Solidarity
Are SARS-CoV-2 virus levels in wastewater increasing again?
の翻訳です。
原文を参照の上ご利用ください。

アメリカ合衆国の下水サンプル中のSARS-CoV-2ウイルス濃度を見てみよう:https://biobot.io/data/

州によっては(全国平均も含めて)増加傾向にあるようだ。今後数日から数週間、これらのデータを注意深く観察する必要がある。この傾向が全国的に観察され、確認された場合、ウイルスの病原性メカニズムが、ウイルスが抗原提示細胞に、より取り込まれる方向ではなく、ウイルスが樹状細胞に、より吸着する方向にシフトしていることを示している可能性がある(下図を参照してほしい:経路❷が経路❸よりも優勢ということだ)。この仮説が正しいなら、非常に感染性の高い変異ウイルスが、より多く樹状細胞に吸着することになるため、多反応性非中和抗体が枯渇し始め、その濃度が不十分になる段階に入りつつある可能性がある。多反応性非中和抗体はウイルスの病原性抑制に極めて重要であるため、その濃度が集団レベルで不十分となって、ウイルス病原性に対する免疫圧力が低下すると、多反応性非中和抗体による一時的な防御効果の恩恵を受けている、高度にCOVID-19ワクチンを接種した集団で、抗病原性を引き起こすSARS-CoV-2変異株の選択が促進される可能性が高い。

結論として、現在主流の非常に感染性の高いSARS-CoV-2変異株の下水中濃度の増加は、多反応性非中和抗体によるウイルス病原性に対する免疫選択圧力の上昇レベルを評価するための代替指標と考えられるのである。

私の解釈が誤っていることを切に願うが、ウイルスは急速に適応進化を進めており、私の目には、ウイルスが、自分自身にとって極めて重要な、伝播性に対する免疫障壁を克服しようと必死にもがいているように見える。したがって、(前述の傾向が確認された場合には)現在流行中の変異株の下水濃度がピークに達する前であっても、強毒性変異株への(突然の)転換が起こる可能性が高いと私は考えている。

図の引用元はこちら

図:新たに出現した、非常に感染性の高いオミクロン子孫株は、標的宿主細胞に感染するのに、多価非中和抗体を必要としない(❶)。非常に感染性の高いオミクロン子孫株は複製(増殖)して、組織常在樹状細胞への吸着が促進されるような免疫環境を作り出す。吸着した子孫ウイルスに多価非中和抗体が大量に結合した状態で、樹状細胞は肺や他の遠隔臓器に移動する(❷)。この、樹状細胞に吸着したウイルスと、病原性抑制性の多価非中和抗体との結合の促進と、抗体産生の減少が相まって、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団では、ウイルス病原性に対する免疫選択圧力が上昇していく。それまでの立体的免疫再集中でプライミングされた抗体は、非常に感染性の高い、抗原的に遠い変異株に対して低親和性のため、大きな抗体-ウイルス複合体が形成され、巡回する抗原提示細胞に取込まれる(❸)。抗原提示細胞による大きな抗体-ウイルス複合体の取込みが亢進すると、細胞傷害性T細胞の強力な活性化が起こる。それによって、ウイルスに感染した宿主細胞が排除されるが、ヘルパーT細胞の働きが妨げられ、それまでの立体的免疫再集中でプライミングされた抗体のブーストが弱まる。以前にプライミングされた抗スパイク抗体のブーストが弱まると、多価非中和抗体の産生が減少する。本文で説明したように、抗原提示細胞によるウイルスの取り込みが促進されると、高感染性子孫ウイルスの樹状細胞への吸着が遅くなり、それによって多価非中和抗体産生の減少による多価非中和抗体濃度の低下が緩和される。従って、集団における多価非中和抗体濃度の減少は、多価非中和抗体によるウイルスのトランス感染抑制というブレーキを広く解除するほど、急速には進まない可能性がある。しかし、より感染性の強いBA.2.86の子孫(すなわちJN.1一族)が出現し、急速に流行が拡大しているため、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団は、ウイルスの病原性に対する免疫選択圧力を着実に高めている。 このため、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団では、多価非中和抗体依存性の重度のCOVID-19疾患増強による高病原性ワクチン・ブレークスルー感染を引き起こす能力を持つ新たな変異株が選択されると考えられる。
https://note.com/ym_dam/n/n02ff8663f756


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