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ワクチンへの信頼回復。そのハードルとは?

本記事は2024年8月10日にアップされたフィリップ・マクミラン医師クリスティン・ステイベル・ベン教授の対談
Rebuilding Trust in Vaccines. What are the Hurdles?
の文字起こしを翻訳したものです。

元動画
Rumble:https://rumble.com/v5afr7m-hurdles-on-the-path-to-fixing-vaccine-mistrust.html
Substack:https://philipmcmillan.substack.com/p/rebuilding-trust-in-vaccines-what

クリスティン・ステイベル・ベン教授のTEDx Talks


[フィリップ・マクミラン]

皆さん こんにちは。今夜はクリスティン・ステイベル・ベン教授とお話します。本当に素晴らしい対話となるでしょう。さて、私たちは今、ワクチンへの信頼が大きく損なわれてしまったという、世界的にとても難しい状況にあります。COVID(新型コロナウイルス)ワクチンに限らず、全てのワクチンに対する信頼が損なわれています。

これは公衆衛生の視点から、非常に問題です。信頼を再構築する必要があります。それには、真実と、正直さと、科学を実際に客観的に見ること、難しい質問をして、その答えが何を意味するのか考えることが必要です。それによって、この4年間の出来事から人々の信頼を取り戻せるようになるのです。

そんな莫迦なと思うかもしれませんが、パンデミックが始まった2020年から2024年までの間に医師への信頼が30%低下したという最近の研究もあります。これはとても深刻な事態で、誰もが影響を受けます。

それでは、前置きはここまでにしましょう。ステイベル・ベン教授です。クリスティンとお呼びしていいでしょうか。

それでは、クリスティン、まず始めに簡単な自己紹介をお願いします。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

フィリップ、今日はあなたのポッドキャストに呼んでいただいてありがとうございます。クリスティン・ステイベル・ベンです。
私は医師で、研修医を1年半務めた後、いえ、その前から、健康への介入と、それが健康全体におよぼす影響について研究をしてきました。主に、アフリカで、低所得の状況を対象として研究してきましたが、私の母国のデンマークという高所得の状況での研究も行なってきました。

[フィリップ・マクミラン]

すばらしい。それで、背景を正しく理解するためにお聞きしたいのですが、あなたは医学生の時に、疫学研究をしにアフリカに行くことに決めたのですね。それはどういうわけだったのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

私が特に関心があったのは、健康における世界的な不平等、特に、子どもの死亡における世界的な不平等で、それを減らしたいと考えました。それで、子どもの健康を改善するために、どんな研究がされているのかを調べてみました。特にワクチンと、微量栄養素の補充についてです。そこから、低所得層の子どもの死亡を減らすための武器となるかもしれないことのヒントが得られるかもしれないと考えたのです。

それで、ある論文を見つけました。その論文は、麻疹(はしか)ワクチンと同時に、または、麻疹(はしか)患者に、ビタミンAを与えると、麻疹感染の経過が改善する可能性を示していました。そして、麻疹感染後の抗体反応が向上する可能性も報告されていました。その論文は結論で、ビタミンAの補充が麻疹感染後だけでなく、麻疹ワクチン後の抗体反応についても向上させるかどうかを調べたらいいのではないか、それによって、子どもたちに麻疹ワクチンが効かないというリスクを減らせるかもしれない、ということを提案していたのです。

これはすごいと私は思いました。それで、早速、文献を調べましたら、WHOが既に、低所得層に対して、ビタミンA欠乏を減らすためにビタミンA補充を推奨していることがわかりました。実際のところ、麻疹ワクチン接種と同時にビタミンA投与を行なうことも奨めていたのです。ワクチン接種は医療関係者が子どもたちと接する機会でもありますから、その時にビタミンAも投与すれば簡単、というわけです。

ですが、ビタミンA欠乏に対するビタミンA補充と、麻疹感染に対する麻疹ワクチンという、2つの健康介入が相互作用するのかどうかという疑問は誰も持たなかったようでした。ビタミンAはビタミンA欠乏症に対するものであり、麻疹ワクチンは麻疹に対するものであり、互いに干渉し合うことはないというのが、その考え、前提だったのです。

それで、ビタミンAが麻疹ワクチンに対する抗体反応に影響を与えるかどうかということにますます興味を持ちました。実際、調べてみたら、その通りだったのです。

アフリカに行って、幸運にも私を受け入れてくれる拠点が見つかり、幸運にも資金が得られ、そして、幸運にも、学生として、このランダム化比較試験を行なうことができました。その試験には、麻疹ワクチンを受ける、およそ500人の子どもたちが参加し、ランダムにビタミンA群かプラセボ群に割り振られました。

その試験はギニア・ビサウで行なわれたのですが、ビタミンA補充はまだ政策にはなっていませんでした。ですから、子どもたちから、通常得られるものを奪う、というような研究ではありませんでした。通常行われている施策は受けつつ、一部の子どもたちはビタミンAが追加され、一部はプラセボが追加されたのです。結果は、明白に、ビタミンAが実際に、麻疹ワクチンの抗体反応を向上させる、というものでした。

さらに興味深かったのは、この結果には性差があった、ということでした。通常であれば、麻疹ワクチン接種で得られる抗体価は女児の方が男児よりも高いのです。でもビタミンAを与えると、男児の抗体反応が強められました。女児に近い反応を示したのです。つまり、ビタミンAの麻疹ワクチンと抗体価に対する良い影響は、全体として、男児に見られたのです。

この結果は私にとっては衝撃的でした。それぞれ非常に特異的な健康効果があるが、相互作用はしないと考えられていた介入が、実は相互作用していて、それも性別によって違いがあったのです。それが私の興味に火を点けたのです。もちろん、その前から興味はあったのですが、間違いなくそれで火が点きました。


 [フィリップ・マクミラン]

医学生時代に、グローバル・ヘルスにそこまで情熱を傾けるなんて、信じられないことだと思います。医学生になる前に、グローバル・ヘルスに興味を持ったきっかけは何だったのですか?

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

そうですね。このことを収録前に少しお話しましたね。これについてはこれまであまり考えたことはありませんでした。でも、あなたのおかげで、医学生になる前の数年、バックパッカーとして世界中を旅したことを思い出しました。それが、健康における世界的な不平等に目を開かせてくれたのだと思います。

不平等を自分の目で見たのですから、強く心に残りました。それがきっかけで、子どもの死亡を減らすにはどうしたらいいか、ということに興味を持ったのだと思います。

 

[フィリップ・マクミラン]

素晴らしいですね。視聴者の方が知らないといけないので、お断りしておきますが、クリスティンは、いわゆる主流の主張に異議を唱えてきた一人です。純粋な科学者で、ただ、疑問の答えを求めているだけだからです。

新型コロナが始まる以前から、あなたは、ワクチンの非特異的な効果を研究していて、何というか、否定的な注目を集めていましたよね。個人的には、誰もが研究していることだろうと思ったのですが、違うのですね。いったいどういうことなのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

ワクチンというものは、特定の疾患に対するものと見なされている、思い込まれているのです。なぜそういうふうに思われているのか、実のところ、私にはよくわからないのですが、ワクチンについての教科書を読めばわかりますが、少なくとも、つい最近まで、書かれていることは、ワクチンが、その狙いとしている特定の疾患のリスクをどのように低下させるか、ということ、そして、ワクチン接種後数日から数週間の間にワクチンに関連して発生する軽い症状、副作用についてだけです。ワクチンの効果(影響)は、この2種類だけ、つまり、ワクチンが対象とする疾患に対する特異的な免疫を引き起こすことと、その過程でそのような副作用を起こす可能性がある、ということだけ、と皆思い込んでいたのです。

そのおかげで、ワクチンのもっと幅広い影響については全く研究されてきませんでした。私の目からすれば、それが抜け落ちていることは、とてもおかしなことです。ですが、事実として、ワクチンの開発、試験、承認というシステム全体が、特異的な効果とワクチンに関連して起こる即時的な副作用のみを調べるように設計されています。

しかし、ごくまれに、ワクチン接種後数カ月経過しても重篤な有害事象が発生することがあります。そのため、第3相試験は、試験期間中に発生した重篤な有害事象をすべて捕捉するようにデザインされています。でも、大抵の場合、試験の規模は小さく、稀な事象を捕らえることはできません。

それで、当局への報告システムがあるのです。ワクチン接種後に患者に異変が起きた場合、当局に通報するシステムを導入しています。ですが、基本的に、ワクチンの開発、試験、承認システムの枠組みは、特異的な効果と接種後数週間の即時的な症状の他には、ほとんど注目していません。

 

[フィリップ・マクミラン]

新型コロナについては後ほど触れるとして、その前に非常に重要なことをお聞きしたいと思います。臨床試験では、接種後の事象に関して、40日ということもありますが、多くの場合28日間しか観察しません。ですが、例えば、豚インフルエンザの時に起こったナルコレプシーなどを考えれば、診断されたのは1年後であり、余程注目していない限り完全に見落とされてしまうでしょう。

そして、これは、ワクチン接種に関して起こりうる非特異的な、あるいは見逃されている有害事象の一部だと私は思います。

あなたは、ワクチンの非特異的な影響全般について特に調査されました。何を見出しましたか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

少し話が戻るかもしれませんが…、ほとんどの人は、本当に注目していないのです。驚くべきことに、現在使用されているワクチンのどれもが、健康全般への影響についてテストされたことがありません。繰り返しになりますが、それは、ワクチンには特異的な効果しかないと誰もが思い込んでいるからです。

例えば、ユニセフのパンフレットには、もしあなたが200ポンドを支援すれば、これだけの命が救えるというようなことが書かれています。この計算、この数字の根拠になっている考え方は、ある疾患の負担と死亡への影響がわかっていて、ワクチンの有効性がわかっていれば、そのワクチンが実際に死亡へ及ぼす影響はこれだけである、と、世界中のどこであっても机上で計算できる、という考え方です。

それに対して、私たちのグループが行なったのは、実際は私がビタミンAと麻疹ワクチンのテーマで参加する前からギニア・ビサウで始まっていたのですが、コミュニティに麻疹ワクチンを供給することでした。そこで、私のメンターであるピーター・アービー(Peter Aaby)が驚愕した発見がありました。それまで麻疹ワクチン接種が行われていなかった集団で麻疹ワクチンを始めておよそ1年後に、全死亡が70%減少したのです。

麻疹ワクチンが麻疹だけを予防するのなら、たとえ100%の有効性があったとしても、そんなことは起こるはずがありません。なぜなら、当時、麻疹による死亡は全死亡の10から15%に過ぎなかったのです。ですから、麻疹ワクチンによる死亡の減少も最大15%のはずです。しかし、全死亡が大幅に低下したことで、ワクチンが免疫系に広く影響を及ぼす可能性があるのではないかという関心が高まりました。 

そして、手短にお話しますが、麻疹ワクチンの場合、実際に多くの観察研究やランダム化比較試験が行なわれ、麻疹ワクチンが免疫系を訓練して、様々な感染症、とくにあらゆる呼吸器感染症に、より強力に反応するようになることが繰り返し報告されました。結果として、麻疹ワクチンは、単に麻疹感染を予防する以上に、死亡を減らすことができるのです。

 

[フィリップ・マクミラン]

では、そのような効果は、全てのワクチンにも見られるのでしょうか、それとも麻疹ワクチンに限られるのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

麻疹ワクチンのこの最初の観察から、ワクチンには、私たちが言うところの非特異的効果があるのではないかという仮説が生まれました。というのも、死亡全体に対する効果は、すでにお話ししたような特異的予防効果や有害事象では説明できないからです。つまり、この非特異的効果は、特異的効果とは無関係で、ワクチン接種後の軽度の一般的な症状とも無関係で、豚インフルエンザワクチン接種後のナルコレプシーのような、重篤ですが幸いにもまれな有害事象とも無関係な、ワクチンの効果の第3のカテゴリーと言えるものです。

非特異的効果が麻疹ワクチンに限定されるのか、というあなたの質問には、後ほどお答えしますが、非特異的効果は、現在のところ、ワクチンが免疫系に及ぼす広範な影響に関連すると考えられています。ワクチンが免疫系に影響を与えて、その後のあらゆる感染症に対する反応を変化させるのです。

免疫系の設定、全般的な設定を、接種前のものとは異なるものに変えるのです。この説明でわかるでしょうか?

このワクチン効果の第3のカテゴリー、非特異的効果について、私たちはこれまでに少なくとも10種類のワクチンについて研究し、論文報告しています。さらに多くのワクチンがこのグループに加わりつつあります。

これまでに10種類の弱毒生ワクチン、6種類の非生ワクチンに非特異的効果があるとわかりました。つまり、これらのワクチンが実社会で健康全体に及ぼす影響は、ワクチンが特異的効果だけを持つ場合とは非常に異なるのです。

 

[フィリップ・マクミラン]

では、その効果は麻疹ワクチン同様、すべて有益なのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

先ほど、ワクチンを2つのグループに分けてお答えしたのにお気付きでしょうか。ちょっとここで説明させて下さい。ワクチンには、主に2つの種類があります。少なくともCOVIDワクチンが登場する前は大きく2種類ありました。一つは弱毒生ワクチンで、毒性を弱めた病原体そのものが含まれています。ですから、それを接種すると、非常に、非常に軽くその病気にかかることになるわけです。感染に対して、通常活性化されるすべての免疫細胞が活性化され、非常に幅広い免疫反応が起こります。そのため、これらの生ワクチンの目的の疾患に対する防御効果は通常長く続き、時には一生続きます。 

そして、もう一つ別の種類のワクチンがあります。非生ワクチンです。これらには、死んだ、不活性化された病原体や、病原体の一部分や病原体の生産物が含まれています。非生ワクチンは、そもそも体にとってそれほど脅威ではありませんから、免疫系をあまり刺激しません。

これらは死んだ病原体であったり、病原体の一部に過ぎないので、それ自身で病気を引き起こすことはできません。ですから、数回、多くの場合、少なくとも3回接種しなければ、防御免疫をつけることができないのです。

それで、多くの場合、アジュバントが用いられます。それ自身では免疫系を活性化できず、1回の接種では十分な免疫がつきませんから、免疫を刺激する物質を一緒に投与することで免疫をつけるのです。ですから、この2種類のワクチンは全く異なるものなのです。ですが、どちらのタイプのワクチンも特異的な免疫を十分に誘導できます。 

非生ワクチンの場合は何度も接種する必要があるかもしれませんが、最終的には目的の疾患に対する、かなり良好な防御免疫を得ることができます。ですが、非特異的効果に着目すれば、この2つのタイプのワクチンは全く異なります。麻疹ワクチンなどの弱毒生ワクチンは、アフリカにおいては、目的の疾患の予防だけでは説明できないほど多くの、あらゆる死亡を減少させました。

生ワクチンは免疫系を刺激するのです。今では免疫学的研究でそのことを示すこともできます。生ワクチンは免疫系を刺激して、あらゆる病気に、より上手く反応するようにし、接種後の子どもたちはあらゆる病気から、より守られるようになります。しかし、非生ワクチンは、本当に論争の種です。だから私はCOVID-19以前から論争には慣れていたとも言えます。

非生ワクチンは、アフリカにおいては、実は、免疫系が他の疾患と闘う能力を、一定期間妨げるのです。ワクチンで、重い、致死的な疾患を防ぐことはできます。ですが、この効果には高い代償があることを、私達は繰り返し観察し、今では6つの非生ワクチンでそれを確認しています。特に女児がその影響を受けています。女児は、これらのワクチンの接種後少なくとも6ヶ月間、あらゆる感染症の死亡リスクが上昇します。

 

[フィリップ・マクミラン]

これは非常に重要なポイントですね。あなたがこれをWHOに指摘した時、たしか2016年ごろだったと思いますが、どんな反応がありましたか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

私達は2000年には既に、実際には1990年代の終わりには、ジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン(DTPワクチン)、これら3つの重い、死亡する可能性のある疾患に対する非生ワクチンが、死亡の増加と関連しているという懸念すべき最初の結果についてWHOに報告していました。この結果は、もちろん、WHOにとっても極めて重要な懸念事項です。

私達がギニア・ビサウで観察したのは、DTPワクチン接種後に死亡率がほぼ2倍になったというものでした。ワクチンが致死的な疾患を予防するものであるのなら、そのようなことは起こってはなりません。ですから、WHOは、私達の知見を確認するための試験を複数の拠点に依頼しました。

しかし、残念なことに、私達が用いた方法論を彼らと上手く共有することができませんでした。それで、非常に問題のある、信じられないほど高いDTPワクチンの有効性を示す報告が続きました。なかには、DTPワクチンが全死亡を91%減少させたというものさえあったと思います。全くありえない結果です。

これらの依頼研究が用いた方法論には欠陥があり、どんなワクチンであっても、極めて偏った、高い有効性を示す結果となることが、後に明らかになりました。今ではWHOもそれを認めています。私たちは多くの論文を発表し、これらの分析における統計的な落とし穴とは何か、またこれらの依頼研究で何が間違っていたのかについて詳しく説明してきました。

とはいえ、それらの研究は実際には撤回されていませんし、文献を見ることもできます。今では、多くの人がそれらの研究が間違っていることを知っていると思います。ですが、WHOがそれを認めたのは2008年になってでした。そして、さらに遅れて2013年に、ようやく、WHOは、2つの生ワクチン、つまり、麻疹ワクチンと、結核に対するBCGワクチン、そして、非生ワクチンであるDTPワクチンの非特異的効果について、専門家と行政の戦略的グループによる包括的レビューを行なうことを決定しました。

2014年にレビューは完成し、2016年にBMJ(the British Medical Journal)から出版されました。実際、結果は明白で、2つの生ワクチンは子どもの死亡をほぼ50%減らし、対照的に、DTPワクチンは38%増やすことに関連していました。

 

[フィリップ・マクミラン]

なるほど。これは疑問が湧きますね。私達は新型コロナに話を進めていくわけですが、当時から、公衆衛生の観点から見れば、すでにシステムは進行しているわけですから、人々がワクチン一般に対して不安を持つようなことしたくはないという利害相反があったように思えますね。

それで彼らはワクチンの否定的な話を軽視した。このようなやり方は市民に対する方法として正しいのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

最初に言いますが、私はあなたに同意します。公衆衛生当局の動機をこのように解釈するのは、礼儀に叶いませんし、うれしくもありませんが、私たちは皆、公衆衛生がそのような振る舞いをするべきではないと、信じられない思いで頭を振ると思います。ですが、そうなのです。研究で発見されたことがワクチン一般の有効性と安全性に疑問を呈する不都合なものであったために、カーペットの下に押し込まれたのです。

ですから、そうです。あなたの解釈に同意します。答えはNOです。これは明らかに意味の無い質問です。少なくとも、このような発見への対応としては、明らかに正しい方法とは思いません。市民を守り、可能な限り良い健康状態を確保するために公衆衛生当局が設置されているのです。

ですから、ワクチンに関する安全性のシグナルを当局が無視したり軽視したりすることは、決して許されることではありません。

 

[フィリップ・マクミラン]

まさに新型コロナと同じ状況ですね。このような状況をあなたは全て理解しているわけです。いよいよ2020年に入ります。新型コロナ感染症が蔓延して、多くの人が亡くなりました。人々は恐れおののきました。そして大体2021年始めにワクチン接種が始まりました。ここでちょっと私の考えを話します。感想を聞かせてほしいのです。

当時、私は自己免疫のことを調べていました。でもそれはちょっと置いておきましょう。計画としては、高リスク者にワクチンを接種するはずでした。おばあちゃんを守る、高齢者、基礎疾患がある高リスク者の命を守るためです。誰が高リスクなのかはデータから明らかでした。疑問の余地はありませんでした。

年齢と、基礎疾患がリスクであることは明白でした。ですから、各国はそれぞれ、高リスク者を特定して、彼らにワクチンを接種することが出来たのです。ですが、おかしなことが起こりました。ワクチン接種対象の年齢層を下げ始めたのです。しかし、これを深掘りする前に、まず、グローバルへルスの観点からあなたに質問があります。

COVIDが当初考えられた、あるいはそう伝えられた通り、恐ろしいものであり、多くの人が亡くなるようなものだったと仮定しましょう。私達は、例えば、アフリカにあまりワクチンを与えなかった。このことについてどう思いますか。どのような考えがそこにあったと思いますか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

私たちは何世紀もの間、健康状態や医療へのアクセスにおける大きな不平等に何もせずに生きてきたのですから、何も驚くようなことではないと思います。今、私たちが奴隷制度を振り返って、「どうして奴隷制度が存在する世界を黙って受け入れることができたのか?」と言うように、「どうしてこんなに深刻な健康の不平等を無視することができたのか?」、と、孫世代が成長する頃には自問したり、私達に尋ねたりするようになるのでは、と期待しています。

だから、私は、何も目新しいことはないと思っています。高所得国からすれば、自分たちは良い健康状態を保つ権利があり、世界の他の地域の人々は2番手という見方があるのです。アフリカと共有することで不便を感じたり、特権を減らさなければならないのであれば、私たちは基本的に関心を持たないのです。

 

[フィリップ・マクミラン]

そうですね。これはとても重要なポイントです。私は皆さんに忘れてほしくないのですが、ワクチンを受けなかった人について、あれやこれやと意見している人たちがたくさんいます。まさに同じ人々が、このことを認識していないようですが、第一世界の国々で高リスク者へのワクチン接種が終わった最初の段階で、世界中の高リスクの人たちにワクチンを共有するのではなく、むしろ低リスクの人たちにワクチンを義務付けました。

これは完全に非倫理的です。倫理はどうなっているのか、誰であろうと私は主張します。ですが、ここでは、アフリカでもワクチンが接種されたとしましょう。その場合、どう思いますか。低リスク集団にワクチン接種することは合理的なのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

もちろん、そのような議論があることは承知しています。しかし、私はずっと、低リスク群にワクチンを接種することを正当化することはできないと主張していました。新しいプラットフォームを使っているということのほか、このワクチンの全体像を何も知らないのです。ほんの数ヶ月試験されただけなのです。

健康への全体的な影響を知るすべもありません。もちろん、私の立場からすれば、これは重要な疑問です。非特異的な作用があるワクチンがあり、それが特異的な作用よりも、全体的な健康に、より重要である可能性があることが分かっていました。そして、それは時にはマイナスになることもあります。そして、基礎疾患のない健康な若年成人の場合、重篤な新型コロナ感染症のリスクは文字通りゼロでした。

ですから、副作用、有害な非特異的効果はなんであれ、その人にとって、非常に割に合わないということになります。それで私は、若くて健康な大人や、特に子どもへのワクチン接種は正当化できないし、義務化などとんでもない、とずっと主張してきたのです。

 

[フィリップ・マクミラン]

あなたは業界内で高い評価を得ていますが、あなたの意見は好ましいものではなかったと思います。あなたが声を上げ始めた時、個人的にも、職業的にも、どのような反動がありましたか?

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

そうですね。当時は反ワクチンとして簡単に攻撃されましたが、それは全く馬鹿げています。私は何十年もワクチン研究をしてきました。特に生ワクチンを後押してきたのですよ。私はBCG接種の痕だらけです。何度も受けていますからね。BCGには免疫刺激効果があるので、これが健康の鍵だと思っているのです。

ですが、この方法はワクチンについての公的な議論に大量に利用され、人々を排除するための口実となりました。人々をそう決めつければ、その人たちの話は聞かなくて良いということになるのです。私のような実績や経歴であっても、そういうことを数多く経験しました。まして他の人々はもっとひどい状況だったと思います。新しいワクチンが実施された時期に、ワクチンの安全性に関する議論を封じることは、実にナンセンスで、非常に危険なことです。

 

[フィリップ・マクミラン]

そうですね。ここで公衆衛生の問題に戻ってきました。私の見解を述べさせてください、率直に言って、権力者や政治家は、このワクチンが感染を食い止め、その結果、自国でのパンデミックがなくなると信じ込んだのだと思います。

そして政治家にとっては、自分の行動で自国のパンデミックが止められれば、その後150年間語りぐさになるような、チャーチルのような出来事になったわけです。そして、政治が科学に優先したため、発言することを許されたのは、この件から何かを得ることができる人だけになりました。

今でも注意しなくてはならないのですが、疑義を呈するひとは、偽情報であると貶められ、発言する機会を失いました。これまで、そのような経験はありましたか?

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

グローバルにですか、個人的にですか?

 

[フィリップ・マクミラン]

どちらでも

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

いいえ、ありませんでした。ですから、状況は明らかに私がこれまでに経験したものよりもひどいものでした。私達は以前、否定的な発見、マイナスの非特異的効果について公開討論を行ないましたが、パンデミックの最中に何度か経験したような検閲を受けたことはありませんでした。今も、私のポッドキャストには、YouTubeだと注意書きが付きます。「COVID-19について正しい情報を知りたければ、WHOのウェブページにアクセスしてください。」のような、

こういうちょっとした警告が付くのです。ですから明らかに以前よりも悪い状況になりました。チャーチルの例えには笑ってしまいましたが、そうなのでしょう。本当に…。非常に危険な状況になったと思います。ワクチンの安全性についての議論を閉ざしてはなりません。

 

[フィリップ・マクミラン]

では、ここで少し考えを広げてみたいと思います。あなたがデータを持っていないことはわかっていますが、ちょっと考えてみてほしいのです。中国は全ウイルスワクチンを使いましたが、他の西側世界は主に、スパイクタンパク質を使ったワクチンを使っています。これらは生ワクチンというより、不活化ワクチンだと思いますが、全く違っているように思えます。それを踏まえて、あなたが目にしたことに基づいて、この2つは同じ効果があると思いますか?

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

全細胞とスパイク…

 

[フィリップ・マクミラン]

全ウイルスを使ったワクチンとスパイクタンパク質を使ったワクチンです。今、この質問が頭に浮かびました。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

面白いですね。パンデミックの直前、2月だったと思いますが、DNAワクチンを作っているデンマーク人とポッドキャストで、新しいワクチンプラットフォームの開発について話をしたのです。その時に二人で意見が一致したのは、天然痘や、牛の結核菌であるBCGなどの昔ながらの生ワクチンの接種方法、つまり、皮膚を引っ掻いて接種する方法ですね、その方法が最も素晴らしく有効で、同時に、有益な非特異的効果が得られるようだ、ということでした。

それから、ワクチンの投与場所として、皮膚がどんなに素晴らしいか、ということの話もしました。皮膚の内側に注射するのではなくて、単に皮膚を引っ掻いて病原体をそこに押し込むのです。ですから、パンデミックがデンマークを襲って最初のロックダウンが行われた時、私は彼に電話して、新型コロナウイルスでこれをやってみない?と言ったのですよ。

私の皮膚を引っ掻いてウイルスを付けてみて、新型コロナ感染症に対する防御免疫ができるかどうか試してみたらどうだろう、って。それで、やってみたんです。彼はウイルスを手に入れることができたので、私の皮膚に傷をつけてウイルスを植え付けてみました。そして、抗体と細胞性免疫がどうなるか見てみました。でも、残念ながら、全く上手くいきませんでした。

何も起こりませんでした。少なくとも測定できるようなことは何も起こりませんでした。でも、私が実際に新型コロナ感染症になったのは、それから2年以上後でしたから、もしかしたら、何らかの効果はあったのかもしれません。ですから、測定はできませんでしたが、弱毒生ウイルスを、皮膚にはこのウイルス受容体が十分に存在していないかもしれませんから、皮膚に直接ではなく鼻腔内に投与すれば、いい新型コロナ感染症ワクチンができるだろうと、今でも個人的には、思っています。 

今、新型コロナ生ウイルスの鼻腔内投与ワクチンの第3相臨床試験が行なわれています。生ワクチンと非生ワクチンについての私の理解から判断すれば、私ならそのワクチンを選ぶでしょう。それで、あなたの質問に戻りますが、病原体全体を使ったワクチンは、病原体を構成する一つのタンパク質を選んで使ったワクチンよりも、明らかにずっと幅広い免疫をもたらします。

ですから、私はスパイクタンパク質だけを用いるよりも病原体全体を用いた方が利点が多いと思います。それに、蓋を開けてみれば、スパイクタンパク質を用いることにも問題があるようですね.少なくとも、mRNAワクチンのように、細胞をこのタンパク質の産生工場にしてしまうことには問題があるようです。

 

[フィリップ・マクミラン]

公衆衛生当局は認めたがりませんが、今、新型コロナウイルス感染症の新しい波が起こりつつあります。患者がまた増えてきています。まあ、必ずしも重症になっているわけではありませんが、これはエンデミック(地域的)なウイルスの流行ではありません。特に夏にコロナウイルスがこれだけ流行するというのは、普通のことではありません。

ギアト(ギアト・ヴァンデン・ボッシュ博士)が言っていたことをお話したと思いますが、ギアトの考えでは、スパイクタンパク質に焦点を絞ったワクチンを受けた人々の免疫系が、今、オリジナル変異株(武漢型ウイルス)に集中しすぎていて、オミクロンに対応できなくなっている、ということなのです。

デングウイルスの場合と同じようなことが起こっているのかもしれません。デングの場合、最初にかかった型に強く反応しすぎると、別の型に対応できなくなります。こういう理論についてどう思いますか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

まず、これは私の専門領域ではないことは申し上げなくてはなりません。ですが、新型コロナ感染症ワクチンについて、複数のアプローチで示唆的な研究が報告されています。このワクチンの接種回数が増すと、実際に新型コロナ感染症にかかりやすくなるということを示唆する疫学研究があり、このようなことが起る原因のヒントを示す免疫学研究もあります。

そして、様々な説明はあるでしょうが、あなたが指摘したことは、抗原原罪、つまり、新たなバージョンの病原体に出会った時に、あなたの免疫系が、プライミングされた、最初に出会ったバージョンの病原体から抜け出すことができない、という理論の変化形ではないかと思います。おそらくそれはIgG4の産生にも関連しているでしょう。mRNAワクチンの接種回数の増加と、IgG4産生の増加が関連しているとの報告があります 

IgG4は、実のところ、感染を許容する、寛容的IgG抗体で、どんな種類のワクチンであっても、ワクチンに関連してIgG4が見つかるというのは非常にまれなことです。この新しいタイプのワクチンが、この非常に免疫寛容な抗体を誘導するというのは、とても興味深いと同時に気掛かりなことです。もちろん、私が特に興味があるのは、非特異的効果です。私達は非生ワクチンがアフリカの子どもたちの免疫系への悪影響に関連していることを免疫学的に示してきました。

免疫学的研究で私達が見出したことは、非生ワクチンは、自然免疫系を怠けさせる、ということです。実際、接種後しばらくの間、あらゆる種類の病原体を受容しやすくなります。自然免疫寛容、と私達は呼んでいますが、今ではこれが、mRNAワクチン接種後に起こっているということが、複数の研究で示されています。大人と子どもの両方です。ですからmRNAワクチンは非生ワクチンのように働くのではないか、ということが私の最大の懸念です。

私達は、疫学的にも、免疫学的にも、このワクチンが非生ワクチンのように働くことを観察しています。ですから、このワクチンの特異的効果、それさえも疑問視されているかもしれませんが、は、高くつくのです。接種後しばらく、これまでのデータが示すところによれば、少なくとも6ヶ月間は、他の病原体に感染しやすくなります。この可能性を消すことができません。

実際、これが正しいだろうということを示唆するデータがたくさんあります。主に武漢株を標的とした免疫をもたらすワクチンを接種した後の、自然免疫系のこの不活発さが、大規模なワクチン接種キャンペーン後に起こっている新型コロナ感染症の増加の一部を、実際に説明しているのかもしれません。

 

[フィリップ・マクミラン]

とても、とても重要なことを言ってくださいました。彼らがあなたに話させたくないのもわかります。それほど重要なことだからです。お話を聞きながら、子どもたちのことを考えていました。特に.思い出してみると、イギリスでさえ、当時、厚労大臣が、健康な子どもたちの新型コロナ感染症のリスクはとても小さい、ほぼ0だから、子どもたちにワクチン接種を行なう必要は全くない、と断言していました。

基礎疾患のある子どもたちについては、議論の余地があるでしょう。しかし、長期的な健康に対するリスクという観点では、非特異的効果を考えれば、そして、子どもたちの免疫系はまだ成長中であることを考えれば、これは実際、極めて深刻な問題です。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

その通りです。私は2021年の夏に、新型コロナ感染症はワクチン疾患か小児疾患か、という疑問をBMJに投稿しました。私達が持つデータ全てから考えれば、子どもたちが小さい時に感染して、自然に免役を発展させ、時には再感染したりして免疫を再活性化させていく、というのが社会として最善な方法であることは明らかでした。80歳になっても…、あまりに高齢になれば、COVIDで重症化しやすくなるかもしれませんが、おそらく免疫老化が本格的に始まる超高齢期までは、十分に保護されるでしょう。

つまり、子どもたちを通じて集団免疫を形成できたかもしれないのです。子どもたちは新型コロナ感染症にかかっても重症にならずに済んだでしょう。ワクチンを早期に接種することで、子どもたちが高齢になるまでしっかりと守ってくれる、この優れた、免疫を自然に獲得するプロセスを妨げてしまうことになるのではないかということを私は懸念していました。ですから、私は社会的な観点から、こちらの方が良いと本当に考えたのですが、それだけでなく、子どもたちにとっても、その方が良かっただろうと思います。

そして、繰り返しますが、このワクチンが子どもたちに及ぼす潜在的な悪影響について私達は何も知りません。そして、健康な若者などにとっては、答えは明らかです。新型コロナ感染症で重症にならないのであれば、ワクチンの否定的な影響はどんなものであっても受け入れることはできません。そして、最近公開されたプレプリントには非常に心配なデータが示されています。それによれば、mRNAワクチンによって子どもたちが実際に、他の感染症にかかりやすくなることが示唆されています。

下気道感染症全般へのリスクが高まります。RSウイルス感染症にもかかりやすくなりますが、それだけではないのです。そして、RSウイルス感染症は子どもにとって、新型コロナ感染症よりもずっと深刻な感染症です。つまり、新型コロナ感染症ワクチンを接種したことによるトレードオフがあったのでしょう。新型コロナ感染症に対する防御効果がそれほど高くないだけでなく、自然免疫系への非特異的効果によって、新型コロナ感染症よりもはるかに深刻な、他の感染症にかかりやすくなったのです。

 

[フィリップ・マクミラン]

患者を支援してくれる人たちは今どこにいるのでしょうか? 非常に問題だと思っていますので、ここで考えてみたいと思います。この問題が長引くほど、このシステムがますます強化されていくように思えるからです。文字通り、ここに来る30分前に見つけた論文ですが、どうしても考えずにはいられなかったものをお見せします。

ランセットで公開されたばかりの論文です。8月7日に出版されています。2020年12月から2023年3月の間にヨーロッパでCOVIワクチン接種プログラムによって160万人の命が救われたと推定しています。

このような研究は、これまであなた方が別々に行なってきた研究と、どう整合するのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

それについてはまだ話していませんでしたね。でも、子ども、大人それぞれに対して私達がやってきたことを少し詳しくお話しようと思います。非特異的効果に注目している研究者として、私達はワクチン臨床試験の評価に新型コロナ感染症だけでなく、あらゆる疾患を含むように声を限りに主張してきました。

ワクチンを接種した後に起こった病気はどんなものであれ、ワクチンによって引き起こされた可能性があると考えることが原則なのです。ですから、新型コロナ感染症だけに注目するのでは十分ではありません。第3相試験や承認後研究ではあらゆる種類の感染症、そして、総死亡率と総有病率に注目することが原則なのです。結局のところ、人々にとって重要なのはそこなのです。

他の病気で死にやすくなってしまうのであれば、新型コロナ感染症にかかりにくくなったとしても、それはどうでもいいのです。全体としての死亡の方が重要なのです。しかし、それについての研究はされませんでした。mRNAワクチンとアデノウイルスベクターワクチンの第3相試験で、非特異的効果が調査されなかったことは皆よく知っています。ワクチンが健康全体に及ぼす影響については試験されませんでした。

ですから、私達はできることをしました。つまり、論文として公開された第3相試験のデータ、そしてFDAやヨーロッパの保健当局に提出された資料から、成人に対する試験を例にすれば、第3相試験参加者に起こった全ての死亡データを集めました。mRNAワクチンやアデノウイルスワクチンに割り付けられた人も、プラセボに割り付けられた人もです。

そして分析結果が昨年、iScienceから出版されました。出版はとても難しくて、とても時間がかかりました。ですが、この研究が示したことは、mRNAワクチンを接種した人が死亡しにくくなるということはない、ということでした。新型コロナ感染症での死亡リスクは低下しましたが、死亡全体を見れば、死亡が少なくなったということはありませんでした。

一方で、アデノウイルスベクターワクチチンは総死亡の著しい減少と関連しました。実のところ、アデノウイルスベクターワクチチンは、私達が研究してきた生ワクチンに、より似ているのかもしれません。この成人についての研究は、新型コロナ感染症ワクチンは新型コロナ感染症による死亡を減らしますが、総死亡で見れば利益はないことを示しました。私達は子どもについても同様の分析を行ないました。その結果、先ほどお話したように、プレプリントを出版したところなのですが、子どもたちは肺炎や、RSウイルス感染症にかかりやすくなったことが示されました。

実際、第3相試験では、これらの結果については、3倍のリスク上昇で、統計学的にも有意でした。ですから、成人と子ども、それぞれの健康全体に対しての2つの論文、2つの分析結果は、mRNAワクチンは新型コロナ感染症のリスクや重症化を、少なくとも一時的に下げるかもしれませんが、健康への悪影響に関連していることを示唆しています。

ですから全体的な健康影響としては無視できるほど小さいか、あるいは、マイナスであるとさえ言えるのです。私から見れば、新型コロナ感染症ワクチンの効果だけ、ワクチンが新型コロナ感染症のリスクと死亡に与える影響だけを考慮して、総死亡への影響を考慮しないモデルによって導かれた結果で死亡への影響を語っても、論文としての価値がないと思います。健康全体への影響を研究していませんし、新型コロナ感染症ワクチンの潜在的な悪影響も他の健康影響も全く研究していないからです。

ですから、ごく一部のことしか語られていないのです。

 

[フィリップ・マクミラン]

2022年の1月のことでしたが、とても驚いたことがありました。EuroMOMO(欧州死亡率モニター)から2021年のデータが公開された時のことです。15歳から44歳の年齢層別分析の結果を見ると、2018年に比べて約9倍の死亡の増加が認められました。2020年はCOVIDのせいで死亡が増えたといえるでしょうが、低リスクのはずのこの年齢層で全死亡の著しい増加がありました。

理由は示されていませんでしたが、死んでいたのです。死亡超過のフラグが立っていました。その時、私は、一旦立ち止まって、全死亡の観点から、まさに何が起っているのかの詳細な分析をするべきだと思いました。本当に説明できませんでした。あなたの懸念と同じだと思いますが、これまでワクチンに関して、全死亡の観点で検討することがなかったのだとしたら、ワクチンが考えられていたほど実際に安全だと、どうして確信が持てるのでしょうか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

大きな課題は、この事態の後、何が起こるのかを見極めることです。そしてもちろん、コロナウイルス感染症の後、死亡が増加する理由は数多くあります。その理由のひとつとして、ロックダウンという新たな負債があることは知られています。ロックダウンの後、人々は、あらゆる感染症に罹患しやすくなりました。私たちの免疫システムは、感染による刺激を受けないようにはできてはいないということです。

その刺激が必要なのです。あなたも私も、おそらくたった今も、認識していなくても、何らかの感染、病原体に対応しています。私達の免疫系は、常に刺激されることで良い状態にあって、それで、本当に危険な病原体が現われた時に対処する。ですから、ロックダウンによっても死亡は増加しますし、メンタルヘルスの問題でも増加します。

様々な要因があり、死亡の増加の一部はそれで説明できるでしょうが、本当に問題なのは、ワクチンがそれに関連していると証明することも否定することもできないということです。ワクチンを一気に、非常に多くの人々に接種した場合は、証明が本当に難しくなります。ワクチン接種者と非接種者の全死亡を比較しようとすると、結果に影響する、ワクチン接種に関連するありとあらゆる種類の要因があるのです。

このような大規模ワクチン接種キャンペーンの後に行われる観察研究は、あらゆる種類のバイアスに曝されます。そのため、解釈が非常に難しくなります。ですから真の、大きな問題と課題は、公衆衛生当局がワクチンを実施中の段階で、このような試験をしてこなかったことなのです。実施してしまった後では調査は非常に難しくなります。

 

[フィリップ・マクミラン]

さて、そろそろ終わりに近づいてきましたが、クリスティン、アフリカについてあなたがどう思っているのかに興味があります。私は、ワクチンをまったく実施しなかった場合にどうなっていたかを考える場合のモデルとしてアフリカを考えています。つまり、接種していなかった場合に、今も死亡が続いているのだろうか、ということです。自然感染による免疫は非常に強力なことを思えば、パンデミックは既に終わっていたのではないでしょうか。

あなたが現場で見ていることや、交流する人からの情報ではどうなのでしょうか。アフリカでは現在も新型コロナ感染症が問題となっているのでしょうか。それとももう終わっているのでしょうか?

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

そうです。ほぼ完全に終わっています。予想されたような、こんな高い死亡も起こりませんでした。少なくとも人口データでは、新型コロナパンデミックの最中でも、前年と比べて死亡はそれほど多くありませんでした。ロックダウンをしたにも関わらず、新型コロナ感染症があったにも関わらず、実際、高くなかったのです。新型コロナ感染症が高齢者にとっては、今でも命にかかわる疾患であることは変わりません。

ですが、ヨーロッパでも同じようにすればよかった、そうすれば、同じ結果になったと考えることは難しいでしょう。アフリカでは人口が若いということも理由ですし、腸に何らかの疾患を持っている人が多いことが、実は保護的に働いた可能性もあります。

これについては私は最近はあまり調べていないのですが、少なくとも寄生虫感染によって起こる免疫抑制、Th2レベルの変化がCOVIDの重症化リスクを下げるという報告があります。それに、感染症が多いところでは、一般に、免疫系の警戒システムが高まっている、ということもあります。

ですから、アフリカで上手くいったからといって、ヨーロッパでも同じようにやっていれば良かったと言えるか、というと、私にはわかりません。私はヨーロッパでも同じように、何というか、放任、していればよかったと主張したことはありません。

私の考えの中心は、やはり、2021年にBMJに書いたように、これを小児疾患と考えて、非常にリスクが高い人だけを守ればよい、ということです。この対談の始めにあなたがとても上手くまとめてくれたように、どういう人が新型コロナ感染症の重症化リスクがとても高いのかは、十分わかっていました。そのような人は保護し、他の人は通常通りの生活をして、感染して、乗り越えればよかったのです。

そちらの方向性の方が、実際に行われたことよりも、もっと賢明な解決方法であることを示すものはたくさんありました。とはいえ、私の住んでいたデンマークは最も制限が少なかった国の一つですし、そういう意味で、私の国の保健当局を厳しく批判したいとは思っていません。

実際、分からないことだらけの中、彼らはかなりいい仕事をしたと思います。

 

[フィリップ・マクミラン]

クリスティン、だからこそ、私はあなたが重要な存在だと思っているのです。今、私達が直面している状況は、公衆衛生当局が、何ら失敗を認めようとしないまま、前に進もうとしているという状況だということ。それが一つ。そして、市民がそれに気づいていることを、彼らが好ましく思っていないことです。

そのために、全面的に信頼が失われています。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

その通りです。


[フィリップ・マクミラン]

ですから、あなたのような声が重要なのです。つまり、自ら進んで現状に異議を唱えてきた方の声が重要なのです。まだシステムにも期待できる部分があると、人々に気づかせることができるのです。前進するための方策を探している科学者もいます。彼らは必ずしも産業界の影響を受けている訳ではありませんが、真に最善の解決策を見つけようとしています。

このようなことは、人々にとって、現時点で確認できる非常に重要なことです。そこで、お聞きしたいのですが、もし、あなたが今の仕事から離れて、WHOを担うことになったとしたら、どうでしょうか。あなたが今、先頭に立っているとしたら、信頼を取り戻すために何をしますか。何が必要だと思いますか。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

私なら、あなたが提案したことと全く同じことをすると思います。それと、南アフリカで和解の時に行なわれたことをやるかもしれません。つまり、間違っていたことを認めるよう努めなくてはならないと思います。明らかに間違っていたことをあげるなら、ワクチン接種を義務づけたこと、ワクチンが感染伝播を抑制する効果が非常に高いとの前提で、全ての人にワクチン接種を強要したこと、自然な免疫を無視したこと、どんな疾患に対しても何らかの自然な免疫反応が生じることを無視したこと。

市民からの信頼に値する、信頼を取り戻すためには、公衆衛生当局の対応の原因となった、このような大きく間違った前提を認めて、訂正することが必要です。ですから、私は、公衆衛生当局の対応の根拠となった、これらの全ての考えの、何が正しく、何が誤っていたのかを議論し、評価するプロセスを望みます。そして私達も、わからないことがたくさんあった中で、非常に困難な立場にあったことを認めるのです。

私が声を上げるのは、誰かを絞首刑にしたり、投獄したいからではなありません。人々を責めたてたいとも思っていません。デンマークで指導的な立場にあった人々の多くを私は個人的に知っていますし、私の個人的な友人もいます。彼らは公衆衛生と人々の利益のために、最善を尽くしました。

間違いもありました。それは明らかです。ですが、私達は彼らを許すことができると思います。彼らが間違いを認めることができれば、許すことも、ずっと容易になるでしょう。ですから、公衆衛生当局は、まず自ら精査することから始めなくてはならないと思います。

そして、これは次のパンデミックに対しても良い考えであることは明らかです。うまくいったことだけでなく、うまくいかなかったことについても、本当にオープンにし、好奇心を持つべきです。

 

[フィリップ・マクミラン]

ありがとうございます。これ以上のまとめはないと思います。私達が皆さんに呼び掛けたいことはまさにこれです。たくさんの人が今も傷ついています。私の知る範囲でも、被害を受けているのに、ワクチンとの関連が認められていない人がたくさんいます。それらすべてをまとめて、癒やし、前進する必要があります。

あなたが話した主なことで私が理解したのは、昔ながらのワクチンの中には、そのワクチンが狙っている疾患だけでなく、それ以上の驚くべき健康上の利益をもたらすものがある、ということです。確か、麻疹ワクチン、BCGワクチン、それから…。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

それから、もう今では手に入れられませんが、昔の天然痘ワクチンです。そして、経口ポリオワクチンについても研究しました。それはアフリカで使われています。

 

[フィリップ・マクミラン]

そうですね。この4つは弱毒生ワクチンで、大きな利益があるようです。ですが、他のタイプのワクチンについては、何が起るか研究する必要があります。さらに詳しく研究する必要があるかどうか調べる必要があります。これが最も正直で正確な答えだと思います。

そして、信頼を再構築するチャンスがあるのは、そのような答えだと思います。

 

[クリスティン・ステイベル・ベン]

デンマークの保健当局の規制は最も緩いものであったことは称賛しています。ただ一つだけは責任をとってほしいと思っています。それはワクチン接種で被害を受けた人への対応です。あなたもワクチン接種後の有害反応で苦しむ人について触れましたが、デンマークでもそのような人は全く無視されています。これは当局やワクチンプログラムへの信頼という点で恐ろしいことです。

あれほど強くワクチンを勧めたのに、幸いなことにごく稀にとは言え、ワクチン接種後に深刻な有害反応に苦しむ人がいるという事実に、保健当局は向き合う準備が出来ていません。そして明らかに、深刻な有害反応について、私達は十分な知識がなく、探しながら進むしかありません。そして、先ほど触れた通り、ワクチン接種実施後に、調査することは困難なのです。ですが、明らかに、ワクチン接種後に複雑な複数の臓器疾患を発症した人々がいます。しかし、彼らは認められていません。何の支援も受けていないのです。

その病気の原因を突き止めるための、何の研究も行なわれていません。共通点は何なのか、バイオマーカーは何なのか。彼らの病気を治療するため、さらに将来的には、どういう人がワクチン接種後にこのような深刻な重い有害反応を起こしやすいのかを予測するための研究です。これは重大な怠慢です。

そして、あなたの質問、どうやって信頼を再構築するか、ということは、最も重要なことの一つです。

 

[フィリップ・マクミラン]

素晴らしいです。クリスティン、本当にありがとうございます。視聴者の皆さんにも感謝申し上げます。クリスティン、エンディングまでもうしばらくおつきあいください。そして、次の機会まで。ご視聴いただいた皆さん、ありがとうございました。良い夜をお過ごしください。

 

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