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はじめに ☆婚活恨(裏)話☆真実を散りばめたストーリー

あらすじ

人生の大きなイベントでもある結婚。
それは他人と共存するという新しい生活の第一歩。
しかし、そんな輝かしいステージに立つ人々にも心の闇がある。
多くの人の人生をひも解くと、穏やかで幸せなことばかりではなかった。
誰もが人には言えない悩みや想いを抱えている。
結婚相談は人生相談。結婚相談所のカウンセラーに実際に寄せられた相談を、各章に散りばめて書き綴ったフィクション。
20代から50代を生きる女性達の物語が今、微妙に絡み合っていく。
結婚の裏側にあるネガティブな感情を描きながら、現代社会の問題や課題と向き合う。     鈴村ココ



 ある平日の昼下がり、見知らぬ番号から電話がかかってきた。

「もしもし、結婚相談でお電話したのですが」

 その女性は既婚者だった。多くの人が、「結婚相談とは明るい未来を夢見てするものだ」と思っているだろう。しかし、過去に私のところに相談に来てくれた人達は、それほど単純ではない事情を抱えた人が少なくなかった。

 多分、親子でもなく、仲の良い友人でもなく、他人だからこそ話せることってあると思う。しいて言えば、遠縁の親戚のお姉さん(オバちゃん?)に話すような感覚で、私に打ち明けてくれたこと。
「そっか、そうだったんだ……」
私は、結婚相談は人生相談だと思っている。

 世の中の多くの人は、なるべく平和に生きたいと思うのではないだろうか。そして、家族は仲の良いフリをする。
でも、そんな仲良しごっこをしていても、いざというとき、本当に困った自分に手を差し伸べてくれる人っているのだろうか? 
家族がいたら安心なのだろうか? 
その家族は、自分を助けてくれるのだろうか? 
それとも、自分がその家族を助けなければならないのだろうか?

「もうすぐ、主人が死ぬんです。病気なんです。
それで、不謹慎ではあるのですが、主人が死んだら私、再婚したいんです。死んでからですと、しばらく慌ただしくなると思うので、今のうちに結婚相談所についても調べておこうかと。
そうすれば、すぐに動けると思うので。本当に不謹慎でごめんなさい」

 これを聞いて、ひどい女性だと思うだろうか?
「女性はやっぱり現実的だな」と感心するだろうか? 
そもそも、これを不快に思う人はどれくらいいるだろうか?

 誰がどんなふうに思っても構わない。
だって、誰も彼女のことを知らないのだから。

 ただ、私の知っている彼女は、良識があって、優しく健気で、外見も中身も美しい女性だったということ。

 結婚してすぐ、嫁としてその家に仕え、ご両親の介護を始めた。数年後には、ご主人の病気がわかった。そのころはご主人もまだ元気だったが、将来が不安で子どもは諦めた。そのうち、ご主人の体調も悪化してきた。
 幸い、ご両親が現役の頃に残してくれた遺産があり、家族の介護をしている間も、つつましい生活をしている分には、不自由しなかった。しかし、ご両親が亡くなったあと、義姉をはじめ親戚中から、「嫁が財産を使い果たした」と誹謗中傷を受けた。
 彼女は、「遺産も何もいりません」と言って、ご主人が旅立ったあと、家を出た。

私はいつだって彼女の味方だった。

 私はここで「結婚」をテーマとし、さまざまな人間模様を描写する。私が過去に相談に乗った内容を、各章に散りばめて書いたフィクションである。

 人生の大きなイベントでもある「結婚」。それは他人と共存するという新しい生活の第一歩。しかし、そんな輝かしいステージに立つ人々にも心の闇はある。多くの人生をひもとくと、結婚は、その人にとって決して楽しいものばかりではなかった。結局、自分以外の人と生きていく人生なんて、所詮、思い通りにならないことか、どうにもならないことが大半なのである。

 近頃は、「婚活必勝法」とか「一年以内に結婚する方法」なる本が売れている。結婚相談所のカウンセラーをしている私にも、これまでに何度か「『運命のパートナーに出会うために』のような本を書いてみないか」とオファーがあった。私は、そのような内容を書こうと思えば書けただろうし、正直、出版社もテーマに沿った本ならば、ある程度売れる見込みがあったのだと思う。
 しかし、私はそこそこ売れるシナリオ本を書くよりも、むしろ売れなくてもいいから、人間のディープなところに焦点をあてて書きたい、伝えたいと思った。私達(カウンセラー)と相談者が経験してきたこと、乗り越えたことを多方面から、もっとリアルに、もっと人間臭く、もっと素直に正直に書いてみたかった。

 だから、各章で幸せとは真逆のことを語るこのnoteは、見向きもされないかもしれない。逆に「結婚なんてしないほうがいいかも」というネガティブメッセージの多いこの記事が、もし多くの共感を呼ぶのであれば……それは結婚相談所に来る人が減ることを意味する。
 どちらにしても、私にとってはリスキーなものになりそうだ。


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