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アリアンロッドRPGの謎を追う

前回はアリアンロッドRPGのいいところとあんまりよくないところを書きました。

今回はあんまりよくないところを掘り下げてみようと思います。なんでそっちを掘るんですか?

(なお、「だからアリアンロッドRPGはダメ」という話ではなく、「こうやって五年間楽しんでいました」というような話です)


基本ルールの謎

そんなところに謎があっては困るのですが、つまり困っています

(本当に困っているので、真実を知っている方がいればコメントなどでお知らせください。救われる命があります

死亡

戦闘不能状態のキャラクターが、フリーアクションで「とどめの一撃」を宣言したメインプロセス中に1点以上のHPダメージを受けると、その戦闘不能のキャラクターは死亡します。

なんの変哲もないキャラクターロストを定義したルールに見えますが、ともあれ「死亡」とは何かを見てみましょう。すると「死亡したキャラクターはアフタープレイでゲームから除外される」とあります。この短い文章で2つほど気になる点が出てきました。順に見ていきましょう。

まずは「『ゲームから除外される』とは何をすれば良いのか?」という点が気になります。これはルールブックに答えがありません。困りましたが、逆に言えばルール用語ではないので、「ゲームから除外する」であれば何をやってもルールからは逸脱しません。そのレールはちゃんと敷いて欲しかったです

もう一つは「死亡してもアフタープレイまで何も起こらないということなのか?」という点です。ルールブックへ印刷されたままに読むとそういうことになります。アフタープレイはシナリオの終了後の話なので、死亡した戦闘中はおろかそれ以降も、シナリオが続く限りは死亡したキャラクターへの特別な処理を行うタイミングは存在しません。死亡したキャラクターの戦闘不能を回復して戦列に復帰させることもルール上は可能です

そんなことがあるのか?

ルール上はあります。ようこそアリアンロッドRPGへ。

奇襲攻撃

アリアンロッドRPGには不意打ちをしたりされたりする奇襲攻撃というルールが存在します。必要なルールですね。

奇襲攻撃が成立すると、奇襲した側は「キャラクターひとりにつき一回ずつメインプロセスを行える」とルールにあります。このメインプロセスというものは、戦闘のような行動する順番や回数が重要となるシーンで用いられるルールである「ラウンド進行」の中に出てくるルールです。

ラウンド進行で管理されるシーンでは名前通りラウンドという単位でシーンが進行していきます。ざっくり言えば行動値の順にキャラクターが順々に動いていって、全員が終わったらラウンドが終了して次のラウンドへ移行するサイクルを繰り返します。奇襲攻撃はざっくり言えばこのラウンド進行を奇襲した側だけ行うような仕組みです。

ラウンド進行をざっくりではなくもう少し詳しく説明すると、ラウンドはセットアッププロセスから始まり、それが終わるとイニシアティブプロセスに入ります。そこでは行動済みでないキャラクターのうち一番行動値が高いキャラクターがイニシアティブキャラクターとなり、そのキャラクターがメインプロセスを行います。メインプロセスを行ったキャラクターは行動済みとなり、再びイニシアティブプロセスに入ります。これを繰り返してイニシアティブプロセスにおいて全てのキャラクターが行動済みであった場合にはクリンナッププロセスに入り、ラウンドが終了します

このラウンドの進行をよく読むと、「イニシアティブプロセス」によってラウンドが制御されていることが分かります。さて、ここで奇襲攻撃に戻りましょう。奇襲攻撃が成立すると「キャラクターひとりにつき一回ずつメインプロセスを行える」とあります。そう、イニシアティブプロセスによって制御されないメインプロセスが発生しています。何か変なことが起きることは容易に想像できますね。

まず直接的には、奇襲攻撃にはセットアッププロセスとクリンナッププロセスがありません。特に問題になるのがクリンナッププロセスがないことです。クリンナッププロセスはラウンドの終了を処理するプロセスであり、多くの処理が発生します。これを起点に様々な問題が噴出します

例えば、バッドステータスの毒によるHPロスはクリンナッププロセスに発生します。奇襲攻撃によるメインプロセスで与えた毒によるHPロスは、ルールをそのまま読むと奇襲攻撃が一通り終わった後には発生しません。さらにラウンド終了まで持続する効果を終了させるのもクリンナッププロセスで行います。つまり、奇襲攻撃によるメインプロセスでラウンド終了まで持続する効果が発生した場合、ルールをそのまま読むと奇襲攻撃が終わった後の最初の戦闘ラウンドの終了まで持続することになります。めちゃくちゃですね

なお、実際のセッションで起きた奇襲攻撃で毒を与えるなどした場合にはGMに確認しましょう。アリアンロッドRPGは「ゴールデンルール」(カードゲームのマジック:ザ・ギャザリングの大会におけるヘッドジャッジのように、GMにそのセッション内でのルール裁定の全権を付与するルール)を採用しているTRPGなので、GMはセッション中に発生したなんかよくわからんことに対して白黒を付けられる唯一の存在です。適宜拝んでお告げを頂きましょう。

封鎖

アリアンロッドRPGの戦闘は時間軸はラウンドで制御されますが、空間軸は「エンゲージ」と呼ばれる「キャラクターとキャラクターが同じ場所にいる」概念を使って制御します。敵対キャラクターとエンゲージしている場合には、そのエンゲージから離れるために「離脱」という移動を行う必要があり、さらにそのエンゲージが「封鎖」されていると対決判定が要求されます。具体的には「エンゲージから離脱を行うキャラクターをアクション側、それを妨害する敵キャラクターをリアクション側とした【行動値】同士の対決判定を行う」ことになります。

さて、では、次の問題は、どのようなキャラクターがエンゲージからの離脱を妨害できるのかですが、空気を読んで常識的に考えればエンゲージしている敵対キャラクターということになりますが、そのようなことはルールブックのどこにも書いてありません。空気を読んで常識的に考えればそのようになるので普通は問題になりませんが、10m先を封鎖するような魔術*1もあり、謎は深まっていきます。

ちなみにアリアンロッドRPGは「ゴールデンルール」を採用しているTRPGなので、GMが「できます」と言いさえすればなんでもできるため、GMが「できます」と言えばエンゲージの隣から離脱を妨害するようなこともできます。

スキルに対するリアクション

アリアンロッドRPGのスキルには、使うと宣言さえすれば効果を発揮する(自動成功)スキルと、使用に際して判定を行う必要があるスキルがあります。判定が必要なスキルにはさらに、効果欄に「対象の【能力値】と対決を行う」と書かれているスキル書かれていないスキルがあります。対決を行うスキルはその対決に勝利してはじめてスキルの効果が発揮されますが、そうでないスキルは判定が成功すれば、つまりファンブルしなければ効果を発揮します。

ここまで読むと「『対決を行う』と書かれていないスキルは基本的に必中である」というように感じますが実はそうではありません。スキルの効果を受けたくないキャラクターはスキルを使用する際の判定をアクション側としてリアクションを行うことができ、その対決に勝利すればスキルの効果を受けずに済みます。「じゃあ『対決を行う』ってテキストはなんだったんですか??」という気持ちになりはしますが一旦はルールを読み進めてみましょう。すると、命中判定や魔術判定と言った特殊な判定(逆に能力値を使った判定は基本判定と呼ばれます)に対するリアクションが列挙されています。

「『対決を行う』と書いてないのは特殊な判定だけですね」
「特殊な判定だけで良かったね~」

……となれば本当に良かったのですが、スキルの判定が基本判定で「対決を行う」と書かれていないスキルは存在します*2。そのようなスキルの効果を受けたくないと思った場合に、リアクションとしてどのような判定を行えば良いのかはルールブックからはわかりません。困ってしまいますね。

ちなみにアリアンロッドRPGは「ゴールデンルール」を採用しているTRPGなので、GMが「こうです」と言いさえすればなんでもそうなるため、GMが「そのリアクションは~判定です」と言えばその判定でリアクションを行うことになります。やったー。

エネミー識別

アリアンロッドRPGはエネミーとの戦闘をメインにしたシステムなので、そのエネミーの情報が重要となります。そのエネミーの情報を知っているかどうかの判定が当然に存在し、エネミー識別判定と定義されています。この判定に成功すると開示されるエネミーの情報は「エネミーの名称、分類、レベル、属性、物理防御力と魔法防御力のどちからが高いか、取得しているエネミースキルなど」と記述されています。「など」とあるのでもっと広く情報を出してもルールからは逸脱しなさそうではあります。そのレールはもっとちゃんと敷いて欲しかったです

アフタープレイ

アフタープレイで行う処理の中に「ダメージの消去とフェイトの回復」という項目があります。大きく分けて「ダメージはなくなる」と「フェイトはシナリオ開始時の値に戻る」ということが書かれています。

MPはどうなるんですか?

HPの方も、「ダメージが消えるので結果的にHPが元に戻るなんていう処理で本当に良いのか?」、「HPロスや回復はどうなるのか」と言った謎が出てきます。もしかするとHPなどの増減があるパラメータの初期化を行うルールではない可能性もあります。謎は深まっていきますね。

フェイトの最大値

フェイトはHPやMPと同様に増減がある数値パラメータなので、常識的に考えれば次のような「最大値」を使った仕組みを持っているはずです。

  • 最大値と現在値がある。

  • フェイトを使用すれば現在値が減り、回復すれば現在値が増えるが、最大値以上には回復しない。

  • シナリオ開始時などの初期化を行う際には最大値まで回復する。

では実際のアリアンロッドRPGではどうなっているかというと、まずシナリオ開始時にフェイト(やHP、MP)を初期化する処理があるとは書かれていません。ですが、前項のアフタープレイで紹介した通り、フェイトはアフタープレイで「シナリオ開始時の値に戻る」ことになります。何やら面妖な書き方をしていますね。一応はこれで次のシナリオでもキャラクターシートに書かれているフェイトの値からスタートできます。

問題となるのはアフタープレイから次のシナリオのプリプレイまでで行うことができるキャラクターの成長です。これによってフェイトの最大値が伸びる可能性があります。キャラクターの成長のルールを確認すると、フェイトの上昇を選択した場合には「フェイトを[(キャラクターレベル÷10)+1]点上昇させることができる」とあります。素朴に曖昧な書き方をしていますね。一応これで「フェイトの最大値」という概念を使わずにフェイトというリソースの初期化を行うことができています。こんな「バグってるけど別のバグで偶然にも数字が一致した」みたいな仕組みで大丈夫なのでしょうか(なお、フェイトを回復する手段はあるので、最大値の仕組みがないとシナリオ開始時よりも多いフェイトへ回復することができます)。

ちなみに最新の研究*3では、キャラクターシートの書き方の中で「フェイトの最大値を記入する」という記述があることがわかり、フェイトには最大値があり、キャラクターシートのフェイト欄に書かれる数字がフェイトの最大値であることが判明しています。フェイトの最大値は本当にあったんだ!

アイテムの使用回数制限

アリアンロッドRPGには、ドラゴンクエストシリーズのはじゃのつるぎのように、装備するだけでなく使用して特殊な効果を発揮するアイテムがあります。そのようなアイテムの中には「シナリオ1回」のような使用回数の制限がついているものがあります。この使用回数の制限は、素朴に考えるとアイテム毎にカウントされそうですが、そうなってくると使いたいアイテムをたくさん持ってきて、使ったら取り替えていくようなこともできます。

できていいのでしょうか

この答えはルールブックにはありませんが、リプレイにはあります。エスピオナージというリプレイの中で、アリアンロッドRPGの作者である菊池たけしさんが、使い終わったシナリオ1回の制限があるアイテムを同じアイテムに交換しています。少なくともアリアンロッドRPGを作った人は、使いたいアイテムをたくさん持ってきて、使ったら取り替えていくようなことは「できる」と考えています。

動かないスキル

せっかく取得したスキルなんですから動いて欲しいですよね。書いてある通りに動かそうとすると動かないスキルがたまにあります。困りますね。

《ラストアクション》

戦闘不能になったタイミングで使用し、メインプロセスを一回行うことができるスキルです。力尽きようとも最後に爪痕を残そうと言うスキルですね。

ところで、戦闘不能状態のキャラクターは「戦闘不能が回復されるまではスキルの使用や一切のアクションを行うことができない」とルールブックに書かれています。ラストアクションによって行えるメインプロセスは戦闘不能になった後に行うことになるので、そのメインプロセスではキャラクターは戦闘不能状態でありスキルの使用や一切のアクションを行うことができないことになります。困りましたね。

《ブルータルジェイル》

イニシアティブプロセスで使用して、狂戦士化状態であれば自分のエンゲージを封鎖するスキルです。闘気で相手を委縮させて逃がさないというようなスキルですね。

さて、エンゲージが封鎖されるとどうなるかというと、その封鎖されたエンゲージから離脱する際に「エンゲージから離脱を行うキャラクターをアクション側、それを妨害する敵キャラクターをリアクション側とした【行動値】同士の対決判定を行う」ことになります。

ところで、狂戦士化状態のキャラクターはあらゆるリアクションを行うことができません。困りましたね。

今日覚えて帰って欲しいこと

基本ルールのよくわからないことやスキル単独で上手く動かないというありのままでバグってるものだけで結構な分量になってしまいましたが、今日覚えて帰って欲しいことは一つです。

アリアンロッドRPGには「ゴールデンルール」があるので、セッション中に発生したよくわからないことには、GMに白黒をハッキリ付けてもらいましょう
(逆に、セッションの外に出ると権能を失うので、『以前のセッションではこうだった』などのようなことを主張して別のセッションのGMを困らせるようなことはやめましょう)

それさえ覚えておけばもう立派なアリアンロッドRPGプレイヤーです。アリアンロッドRPG、いいTRPGだよ。

脚注

*1 イリュージョニストの《ラビリンスイメージ》
*2 セージの《ウィークポイント》やヒーラーの一部スキル
*3 日付を見たら2020/09/05で、結構前の話でした。

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