「無敗営業」から自身の業務の振り返りと改善点を考える

選択テーマ①:営業手法
参考文献 無敗営業 (著者 高橋 浩一)

筆者の主張
営業側とお客側には、情報のギャップによる「ズレ」が生じるため、「ズレ」が生じるということを認識した上で、情報のギャップを解消することが求められるということ。

※営業側とお客側に生じる情報のギャップとは
営業側が抱えているのは「会社の方針や目標」
お客側が抱えているのは「悩みや課題」
→営業側はお客側の背景について情報が不足している。
→目標を達成するための商品の紹介や、価格交渉ではお客側の満足度は高まらない。価格も重要な要素であるが、それ以上にお客側が求めていることは、①自分の悩みや課題を分かってくれることや、理解しようとしてくれること ②自分の悩みや課題が解消されるか、費用対効果高いかどうかということ。ズレを解消した提案でないと、お客側は商品の押し付けと感じたり、自分には必要ないと感じる。そのため、お客側を理解するためのコミュニケーションをとり、情報のギャップを解消し、商品の営業をすることで、お客側は「費用対効果への納得感」が生まれ、信頼の獲得につながる。

現在の業務の振り返りおよび改善策
お客側を理解するためのコミュニケーションがとれていない。例えば、見積もりの依頼があった際に、見積もりを数パターン用意して説明するだけになってしまっている。今後は見積もりの依頼が来た際に、見積もりの依頼理由や、現状の悩み等の細かな情報を聞くようにする。

上述した情報のギャップを解消するために重要なこと
「案件を分類する」
営業側とお客側の間にある情報ギャップを解消し、成約数を増やすために、案件を「楽勝」「接戦」「惨敗」の3パターンに分けて考えることが重要。

「楽勝」(長い付き合いで自社のファンであるお客)

「接戦」(対応次第で契約獲得につながる見込みがあるお客)

「惨敗」(自社への契約に乗り気でない。他社と長い付き合いがあるお客)

まずは案件を上記の3つに区分し、「接戦」の案件に注力する。接戦案件で、お客側との間に生じるギャップを解消する力を身につけることで、結果として契約数の増加につながる。

「接戦状況を問う質問」
上記の3つの案件の状況を確認するために、「検討に時間を要するかどうか」の質問をすることが重要である。

→返事が「はい」であれば、楽勝もしくは惨敗案件。「はい」という返事がない場合は、接戦案件。お客側は主に2つのパターンで悩んでいる。

①「自社または他社」
→競合の社名、他社の提案状況、当社の暫定順位を聞いておく必要がある。

②「今やる必要があるか」
→今やるべき理由について説明する必要がある。

お客側の悩み上記①または②のどちらであるかを把握し、BANTCHについておさえることが重要。

BANTCH
Budget(予算)
Authority(決裁者)
Needs(ニーズの抜け漏れや優先順位)
Timing(検討や導入のスケジュール)
Competitor(競合)
Human Resources (お客側の人員体制)

現在の業務の振り返りおよび改善策
チラシ配布やアンケート回収の取り組みを行う基準をなんとなくの協力度で選んでいた。各企業毎の契約者数を調べ、接戦企業を一度整理する。その上で、面談対応をした際に、相手が悩んでいる場合、上記①または②のどちらで悩んでいるかを確認する。また、面談者の予算や保険の見直しは、面談者または配偶者なのか等を確認するようにする。

「決定の場面を問う質問」
上記の接戦案件が契約成立または不成立になった際に、相手に決定の瞬間や場面を随時問い、成功事例と失敗事例の理由を蓄積することが重要。決定場面に関する情報を蓄積することで、有効な営業の展開手法について把握することにつながる。

現状の業務の振り返りおよび改善策
契約成立or不成立が決まった場面を聞くことができていない。理由が分からず、自分で仮説を立て、契約者対応の改善を図っていた。今後は一人ひとりに決定の場面について確認する。

「裏にある背景を問う質問」
お客側との情報ギャップを解消するために、下記のような質問手法を駆使することが有効となる。

枕詞
「もし仮に〜という点がクリアされたら」→前提の変更。

(例)
自社の提案は他社よりかなり価格が高いものの品質に関して自信がある状況で、お客側の認識や感想が聞き出せていない場合
「もし仮にご予算の枠というものがなかったら、弊社の提案については、どのような感想をお持ちですか」

深堀り質問
上記の枕詞を用いた質問により、お客側の悩みや課題、本音を引き出せた際に使用する。引き出せた内容が抽象的である場合や、お客自身が考えがまとまっていないときにより有効となる。

「具体的には?」「なぜでしょうか?」等の深掘り質問をすることで、より有力な情報を得られることにつながる。

特定質問
上記の深掘り質問をしていくことで、ピンポイントで聞きたい内容が出てきたときに、特定質問をすると効果的である。漠然とした質問では、求める回答が得られない場合が多くなる。

(例)
「御社の課題は何ですか」×
「御社の課題について、特にここ1ヶ月議論されているものとしては、どのような課題があるのでしょうか」○

現状の業務の振り返りおよび改善策
枕詞、深掘り質問、特定質問ができていない。企業の提案後に意見をいただいた際、金額が高くなるのは厳しいと言われ、終話してしまった。今後枕詞を駆使したり、深掘り質問をして、抱える悩みを把握する。

「質問力」
上記の「接戦状況を問う質問」「決定の場面を問う質問」「裏にある背景を問う質問」だけでなく、「質問力」を活用した商談の進め方をおさえることで、ヒアリングが浅くならず「ズレない営業」につながる。

「質問力」を活用した商談の進め方の
基礎編は下記添付画像の通りである。

また、「質問力」を活用した商談の進め方の応用編も駆使できるようになると、課題をともに解決するパートナーとしてみなしてもらえることが実現する。

応用編で特に重要なのは「気づかせ質問」と「つなぎ質問」である。

「気づかせ質問」
深掘りした悩みや課題が「放ってはおけない、重要度の高い問題である」と認識してもらうために重要となる。ポイントは、お客とのやり取りを「現在」の時間軸から「未来」へむけさせることである。未来を想像してもらい、そのあるべき姿から逆算した現在の状態を考えていただくことで、潜在的な課題が顕在化する。

「つなぎ質問」
気づかせ質問で事の重大さに気づいたお客に、自社の提案で解決できたらどんなインパクトがあるかを尋ね、お客自身の言葉でインパクトを語ってもらうことが有効。

現状の振り返りおよび改善策
相手の課題に対して未来の時間軸の話ができていない。今後相談対応をした中で課題を抱えたお客がいた際は、未来についても考えてもらうよう話を展開し、そのインパクトを話してもらうようにする。

「価値訴求力」
質問ばかりしていても、お客側は不快に思う場合もあるため、質問した相手に「答えよう」と思わせる価値訴求力を養う必要がある。人によって感じる価値は異なるが、価値を四象限に分けて考えることが望ましい。

難易度が低く、まず実践すべき部分は、労務提供・適量コミュニケーション、好感・共感である。

労務提供・適量コミュニケーションでは、お客の負担が軽くなるような情報を提供すること。まずはこのような情報の共有を行うことが、信頼関係を構築する第一歩となる。

その上で、あわせて意識したいのが好感・共感である。コミュニケーションを図る際に、ジョハリの窓を意識し、自己開示をすることで、関係性を深めることができる。

現状の業務の振り返りおよび改善策
自己開示をしたコミュニケーションは、できていると感じた。お客の負担が軽くなる情報の提供ができていない。訪問できていない企業に伺う際は、事前に業務が楽になる情報や、手続きに関する内容が載っている資料を持参するようにする。

「提案ロジック構築力」
お客側が迷うような接戦案件で「当社を選ぶ理由」を伝える必要があるため、提案ロジック構築力が求められる。論理的な提案を行うために特に重要となるのが、①要件整理 ②対立ロジックチャートの活用である。

①要件整理

要件整理の表を作成する上で、お客が抱えている悩みや課題を「キーワード化」することがポイントとなる。悩みや課題をキーワードにして整理することで、お客は要件が整理されると感じる。キーワードを洗い出したら、抜けや漏れがないかの確認、具体的にキーワードがどういうことであるかの確認、どの要件が重要度が高いか優先順位の確認を行う。このように要件を整理し、お客とすり合わせを行うことで、提案する前のズレを未然に防ぐことができ、契約につながる。

②対立ロジックチャートの活用

①の要件整理で認識ズレをなくした上で、対立ロジックチャートを活用することで、お客の課題に沿った提案をすることができる。

現状の業務の振り返りおよび改善策
相談を受けた際に、相手が話した内容をメモをすることにとどまっていた。今後は相手の話を聞き出す際に、①網羅性 ②具体性 ③優先度の観点を意識し、ヒアリングを行う。また、提案が難航しそうな際は、対立ロジックチャートを活用していく。

「提案行動力」
日々の業務の時間は限られているため、上述したような営業活動の時間を多く抽出するためには、お客とともに段取りをスムーズに進めていくことも重要となる。例えば、提案日の数週間前に準備に取りかかったとしても、その間にお客の状況が変わると、準備した提案内容がお客が求めるものとは異なってしまう。結果さらに時間を割くことになるため、資料を何回かに分けて作成し、都度お客との確認のコミュニケーションをとることや、社内を巻き込むこみ、自分の時間を捻出することも重要となる。

現状の業務の振り返りおよび改善策
資料作成、面談の準備について社内を巻き込んだ取り組みはできるようになってきた。一方でお客とこまめなコミュニケーションをとり、都度すり合わせを行うことができていない。今後はお客ともに段取りをしていくことを意識し、前もって取り組みしたい内容やスケジュール等こまめに連絡をとるようにする。