柿

反社排除は可能か

企業にとって頭の痛い問題の一つが反社排除です。とくにB2Cのように不特定多数の個人などが取引相手になると重大。証券会社各社は、長い年月、苦闘を続け、いまや日本で最高レベルの反社排除システムを有しています。証券界は大手の場合には元々相当に充実した体制を持っていましたが、今や業界を挙げて、また状況によっては公的情報にもアクセスしながら反社排除にまい進しています。

では事業会社などが個社で立ち向かうためにはどうしたらよいのか。

昨今、この夏話題になった、所属芸人が図らずも(と伝えられています)反社勢力と絡んでしまった、芸能会社の反社排除システムが話題になっています。なぜか?

個社としてはこれ以上は無理だよなあ、というレベルまで実施していたからなのです。具体的には以下の通りです。

新規取引先は、第一段階として、全件を二種類の犯歴照会データベースにあてる。ここで真っ白でなかったものは、第二次として別のシステムに照会をかけるとともに、こうした分野のベテランスタッフたちが知見に基づくチェックを行う。なおも疑問が払しょくされないと別の調査機関に調査依頼をする、という2段階~3段階の仕組みです。

手間はもちろん、コストも相当なものでしょう。ここまでしても、手のひらから漏れるケースもある。ではどうしたら良いのか?

さらに最近悩ましいのが、「反グレ」と呼ばれる存在。元々反社とイコールだった暴力団ではないし、その密接交際者でもない。組長のようなリーダーもいない。昔でいう、よたもの、とかチンピラでしょうか。「俺おれ詐欺」の加害者などが典型的。その数が増大しているそうですし、先日NHKで特集を放映していましたが、困ったものです。

問題は、反グレでも事件を起こして逮捕でもされない限り、犯歴データには乗ってこないことにあります。警察ですら把握しきれていないといいいますから、民間会社では手も足もでません。

データベースを作ろうにも、たんに挙動不審だからとか、へんな人だから、危なそうだから、程度では彼らの人権にかかわるし、調べようにも個人情報保護の壁もある。

全然別の意味ですが、リクナビ問題も頭に浮かんでしまいます。企業として、現状ではお手上げとしか言えないのではないでしょうか。

企業のリスク管理としては、「現状における」「最高レベルの」反社排除の仕組みを持ち、それを「最善に」「運用している」ことが重要。こうすることで、従前からの反社勢力排除責任については免責されるべきです。

やはり、課題は反グレ対策。そろそろ官民挙げて本格的対応を図っていくべきではないでしょうか。

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