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【自由研究】2023/3/19:第5節 岡山×甲府

第5節・ヴァンフォーレ甲府戦のレビュー記事です。
皆様の考察の一助としていただければ幸いです。

前節・金沢戦の勝利を受け、ここからいよいよ波に乗って行くぞ!と選手もサポーターも息巻く中で迎えた試合であったと思いますが、結果だけ見ると悔しいものとなりました。

試合結果に関すること

ゲーム寸評

岡山は試合開始直後にミスから失点を喫しました(0-1)。これをきっかけに、前半だけで合計5つのゴールが目の前で飛び交うという殴り合いの展開となりました。しかし、いずれのゴールもスイッチを入れたのは岡山(相手のゴールについても…)ということになっている(なってしまっている)とは言えるでしょう。

先制された岡山は比較的早い時間帯に#5柳 育崇のゴールで追いつき(1-1)、「やられたらやり返す」とファイティングポーズを見せつけてサポーターを勇気づけました。しかし追いついた直後に再びミスをきっかけとして与えたセットプレーから失点(1-2)、追いかける展開に逆戻りしてしまいます。

それでも!岡山は「やられてやり返してまたやられたら、またやり返す!」といわんばかり、今度はエースストライカー・#18櫻川 ソロモンがストロングを生かして再び同点に追いつくゴールを押し込み(2-2)、再びサポーターは沸きました。

今年のファジは違うぜ!やられてもやり返せる!さぁここから倍返しを…と言ってた矢先、またまたミスをきっかけに与えたセットプレーから失点してしまいました(2-3)。

結果的にはこの前半の振る舞いが勝敗を分けることとなりました。後半は岡山が殴り、甲府がガード(ときどき殴る)という展開となり、甲府の仕掛けるカウンター攻撃は岡山がしっかりと防いだものの、岡山が甲府ゴールをこじ開けることはできず。

1点差を追いつくことは叶わず、「倍返し」には至らず。岡山はホームで今季初黒星を喫することとなったのでした。

試合内容に関して

試合は2-3で負けました。ただ、勝負にも負けたのか、、、?と言われると、そこまでではない気がしています。

たしかに、いずれの失点にもミスが絡みました。FAGIGATEの有料記事を読んでいくと、選手間のちょっとした「噛み合わなかったところ」が少しあって、今節は如実に、いちばん悪い形で顕れてしまったということはできるでしょう。

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これだけミスから失点してしまうと、やはり勝つのはなかなか難しくなってしまう。それは間違いない。ただ、ミスしたから、再発が怖いから、いまの取り組みをやめるべき・安全な方向に変えるべき、というふうにはならないであろうと思います。安全策だけで「J2の頂」を目指すなんて、到底できないと思うので。

ミスを咎めつづけるのはサポーターの役目とはちょっと違う(ミスした選手が前を向けるよう励ますのならサポーターの役目)と思っております。今回出てしまったミスは選手たちがきっと修正してくれる、と信じて次戦を待ちたいと思います。ということで本レビューであんまり取り上げることはしません。

それよりも、「やられたらやり返す」攻撃のパフォーマンスは悪くなかったのではないかと思います。

甲府はあまりボールを持たず、厳しいプレスでボールを奪って一気呵成のカウンターというのが効果的に機能していました。そのような戦い方をしてくる相手に対して、岡山は短いパス交換だけでなく、#23ヨルディ バイスなどから裏へのロングボールなどもふんだんに使って相手守備の切り崩しを図っていました。

その中で前半のうちに2点は取り返し、後半にも惜しいシーンを連発しました。あと一歩のところで跳ね返され続けましたが、「やられたらやり返す」というリバウンドメンタリティはピッチ上で体現しようとできていました。その点は決して悪くなかった試合だったと思っています。

気になる彼 〜#41 田部井 涼〜


今回は、後半途中出場を重ねつつ徐々にその才覚を現しつつある、#41田部井 涼選手の動きを少し分析してみました。

今節は#6輪笠 祐士に代わり65分から途中出場。1点ビハインドの中で戦った25分間、終盤に大きな見せ場もありました。

(※分析に関しては筆者調べ・筆者見解のものであり、公式なものではないです)

主なプレーエリア

まずは田部井選手の活動範囲について。

田部井選手、プレーエリア

輪笠の立ち位置を引き継ぐ形で、基本的なポジションは中盤。センターサークル付近を基本の立ち位置としながら、ボールの動きに合わせて左右に動いてはパス受けに顔を出す。

※IN:受けたパス、OUT:出したパス

パス受けエリア・パス渡しエリアの図を見ても、中盤の左右でボール授受している回数が多くなっています。

甲府のプレースタイルも考慮する必要はありますが、田部井選手自身がボールホルダに食いつく・奪いに行くという動きはあまり見られていません。中盤においての彼は、相手選手のスペースに入ってパスを受けたり、周囲の選手を使ったりというアクションが多いようです。

そういう点では司令塔タイプと言えるのでしょうか。

中盤での振る舞い

以下、田部井選手の出したパス方向、田部井選手へのパスの出し手、田部井選手からのパスの受け手の関連性を図にしてみました。

▲田部井選手 パス出し方向
▲田部井選手へのパス出し手
▲田部井選手からのパス受け手

中盤の選手とあって各方向へパス交換の矢印が出ています。最も多かったパス出し方向は左で、交換相手として最も多く名前が出ているのが#43鈴木 喜丈でした。中央(センターサークル付近)でよく二人のパス交換がみられました。

田部井と鈴木が近い距離にいることが多かったのですが、これはおそらく「ヨシタケロール」によるものであろうと思われます。田部井と鈴木によって、一時的に2ボランチ風の立ち位置になるというもの。

▲田部井 ー 鈴木 ー 高木のコンビネーション(例)

田部井の脇で鈴木がボールを受けて、そのまま前へ走っていったり、鈴木がさらに#2高木 友也へつないで左サイドから攻め込んでいったり。左は主に高木と鈴木のコンビネーションで切り崩しにかかろうというシーンが多く見えました。

後半の岡山のプレーエリアについては、左サイドに濃い目のタイルがついています。鈴木・高木のアクションも、これにひとつ関わっているかもしれません。

▲ファジアーノ岡山 プレーエリア(後半) ※画像引用:Football LAB
https://www.football-lab.jp/okay/report/?year=2023&month=03&date=19

アタッキングサードでの仕事に期待が集まる

投入直後は中盤でのパス受け・パス出しというタスクをこなす時間が多かった彼ですが、徐々に立ち位置を上げてアタッキングサードに迫ることも多くなっていきました。その過程で、彼自身のいいところも徐々に出てくるようになってきたと思います。

71分に最初の見せ場が訪れました。前段としてバイスが前線にロングボールを送り、#48坂本 一彩が落としたボールを鈴木が回収というプレーがありました。その鈴木から田部井へボールが送られています。

田部井は鈴木から受けたボールを浮き球でソロモンに送って、ソロモンがそれを収め、二次攻撃につなげていく…というもの。

▲71:11。鈴木の横パス(①)をフリーで受けた田部井がふわりと浮かせた(②)パスはソロモンに収まる。ソロモンが2~3枚引き連れた状態にして、空いた大外の高木にパス(③)

最終的に高木がクロスを上げ直してゴールに迫らんとする攻撃になりました。ゴールにはなりませんでしたが、厚みのある攻撃をひとつ演出しました。

#16河野 諒祐がベンチに下がった75分以降は、田部井がセットプレーのキッカーを務めるようになり、さらに存在感を増します。82分に担当したフリーキックでは、柳の頭に合わせて瞬間ゴール期待値を跳ね上げました。

▲82:09~。田部井のフリーキック。左脚で柔らかく上げた浮き球のパスへ、柳が合わせることに成功。しかしヘディングシュートは相手GKの正面

柳のヘディングシュートは相手GKに阻まれ、ここも惜しくも得点ならず。

そして85分、田部井にとってこの試合最大のチャンス演出シーンが訪れました。これは動画でご覧いただくのが良いでしょう(下記の埋め込み動画は、ちょうどよいところからスタートするようにしています⬇️)

ようはシュートシーンですが
・前向いてボール拾って
・突っ込んできた相手守備を一枚冷静にかわして
・左足一閃
・糸を引くようなシュートが枠内を捉える

ひとつひとつの所作が完璧でした。瞬間、「これは入った」と誰もが疑いませんでした。彼の左脚から放たれたシュートは、それだけ美しく正確なシュートであったからです。

…しかし、これもまた、相手GKが腕一本でコースを変え、枠から外されてしまいました。同点ならず、、、
惜しいっ!

ピッチでタクトを振るう、司令塔タイプ

輪笠が守備にも体を張るアンカータイプなら、田部井はどっちかというと司令塔タイプなのかな?と思っています。

前所属の横浜FCでは、稀代のファンタジスタ・中村 俊輔のプレーを間近に見ながら研鑽を重ねられる環境にありました。同じ左利きですし、なんとなくプレーにも中村 俊輔感がある。

ファジで例えるならば、、、千明 聖典、上田 康太、矢島 慎也とかが重なるでしょうか?タイプとしては、2015シーズン頃の千明・渡邉コンビの千明、あるいは2016シーズン頃の矢島・渡邉コンビの矢島、という位置付けがしっくりきそうな。それぞれ、ピッチ上でタクトを振るうタイプではないでしょうか。ナンバー10。

前を向いてボールを持つことができれば、一味も二味も違いを出せそうな、良い仕事ができそうな選手であるように見えます。アンカーでも良いですが、トップ下での仕事も面白いかもしれない。

他方、今節は彼自身が激しく相手ボールホルダからボールを奪うというシーンはあまり見られませんでしたが、岡山としてはハードな守備が求められるチームカラーでもある。彼に厳しいディフェンスができるようになると、岡山では活躍の幅が広がるかもしれない。

いずれにせよ、彼の持ち味を出すために、彼自身としてどういう形でボールにアプローチしていくのか。また、チームとしては彼にどのような形でボールを預けられるか。このへんがどのようにプロデュースされて行くのか、今後に注目です。

次節へ向けて


前述の通り、今節は敗れはしたが決して内容が悪いわけではなかった。そこまで下を向く必要もないと感じているし、あんまり下を向いてる暇はありません。

次節はファジアーノ岡山史に残る最強()の鬼門、千葉県はフクダ電子アリーナ(正式名称:千葉市蘇我球技場)でのジェフユナイテッド千葉戦となります。岡山は14年間のJ2生活において、このスタジアムではリーグ戦で一度も勝ったことがない

そして、次の試合ではここまで5試合2得点、主に攻撃面で、すでに大黒柱ふうの活躍を見せつつあるエース・櫻川 ソロモンが規約上出場できない(彼は千葉から期限付き移籍中)。

岡山の振る舞いとして否が応でも注目せざるを得ないのは、彼の場所に誰を入れてくるのかルカオなのか、ハン イグォンなのか、福元 友哉なのか、大穴でチアゴ アウベスがあったりするのか。そもそも、誰も入れない(つまり全く異なる戦い方をしてくる)のか。

「ソロモンがいないと困る!」なんて戦い方はクラブとしてもあり得ないと思っているはずなので、どんな振る舞いをしてくるのかは注目どころ。

また、佐野 航大であったり河井 陽介であったり、復帰してくるメンバーが出てきている中で、スカッドや戦術にどのような変化があるのか。

諸々合わせて、次節も興味深い一戦になることでしょう。

(※補足)
ちなみにリーグ戦では1回も勝ったことないけど、天皇杯では勝ってるから(2019)。増田繁人、福元友哉、武田拓真がゴール押し込んでるから。

なので、このスピリッツで行きましょう。
百万の大群、恐るるに足らず、恐るるべきは、我ら弱き民、一人ひとりの心なり』(高杉 晋作)

最後に、GK#21山田 大樹のインタビュー(※有料記事)を載せておきます。彼にとってはまちがいなく試練の時だった甲府戦。でも、ミスがあっても批判されても、それを乗り越えていこうとしている若武者のコメントです。きっとまだまだ、強くなる。

(了)

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