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【自由研究】2023/2/26:第2節 岡山×清水

日本人が知っておくべき
新・三大 備前岡山に春を告ぐもの
一、西大寺の会陽
一、後楽園の菰焼き
一、ファジアーノ岡山のホーム開幕戦

岡山に春を告げる!!!

備前平野に春を告ぐイベントがあちらこちらで開催される中、フットボールゲームも岡山に帰ってきました。

1万5千大観衆、声出し応援全面解禁、M-1王者凱旋、相手は昨季J1、昨季J1得点王、W杯日本代表GK……さまざまな要件が入り混じる中で迎えた、2023シーズンのホーム開幕戦を振り返ります。

押し込まれたけど屈しない ~前半~


清水はさすがに昨季J1、個々のポテンシャルもさることながらプレーも正確であり、一瞬の判断に淀みはなく、選手の距離感もほどよく、攻守の切り替えも素早く、なかなか岡山のプレーに自由を与えてくれませんでした。ポゼッションもカウンターも不自由なく繰り出しては、岡山を自陣内に追い込んでいきました。

前半は自陣での防衛が長くなった岡山。それでも、相手の圧力の間隙を縫っては果敢にチャレンジする姿を見せました。#8ステファン ムークによる決定機を2度ほど作り、ゴールに迫って行きましたが、ゴールネットを揺らすまでには至らず。

ラインを下げられ、押し込まれ気味に

下の図は、第1節・第2節の平均ポジション(前半終了時)比較。DAZNの中継映像から引用して筆者が書き写したものになります。

(岡山)第1節・第2節前半終了時平均ポジション比較
(左:第1節、右:第2節)

スタジアムで見ている分にも、前半の岡山は清水に押し込まれる時間帯が多くありました。実際の平均ポジションも、前節に比べ今節は、やはり下げられ気味であることがわかります。

鈴木の平均ポジションも低かった

鈴木喜丈の平均ポジション比較(黄色の丸)

前節「ヨシタケロール」と名付けた特徴的な動きで、岡山のビルドアップに貢献していた#43鈴木喜丈も、今節の前半時点ではあまり高い位置を取れずにいることもわかります。

考えられるのは
・単純に押し込まれたことによって守勢に回っていた
・鈴木が上がることで空く背後(つまり左SB)のスペースを使われることがあった

この辺りでしょうか。

ここでは後者について少し事例を取り上げてみます。岡山の鈴木に対峙する清水の選手は主に#45北川選手でしたが、同選手が持ち味のスピードやドリブルで鈴木の背後へ進入し、チャンス(岡山にとってのピンチ)を演出していました。

▲22分ごろ。前がかりになった鈴木の背後のスペースに、清水の#3ホナウド選手から浮き球の良いパスが入り、#45北川選手が走り込む…という一連の流れになります。

▲27分ごろ。ここでも同様に、前に出かかった鈴木の背後を使われます。自軍陣内に降りていた#29ディサロから、これまた浮き球でよいパスが入り、北川選手がスピードに乗って一気に岡山陣内突入、シュートを打たれます(枠外)。

岡山は右サイドを主に攻撃していく時間帯が多かったですが、一方で反対の左サイドは「アイソレーション(孤立)」としての#19木村太哉(キムタカ)が外に張り出すようになっていました(このキムタカの活躍については後述)。左の外に張った木村と、1列前に上がった鈴木の双方から、絶妙に影響が及ばないところへボールを通されることがよくありました。

こういうこともあって、今節の鈴木は左に気を遣うことが多かったのかな?と連想いたしました。ただ、裏を取られても走って追いついたり、体を寄せて進撃を止めたり、奪って攻撃に転じたりして、ゴールを割らせることはありませんでした。

スタイルは変えない岡山

清水の強い圧力がかかっても、岡山はロングボールでの陣地回復は無闇に選ばず、前進するときは細かくボールをつなぎ、連動して人が上がる…というのを、前節と同じく徹底していたようでした。

前半は右サイドに人数をかけ、狭いスペースを突きながら前進を試みていました。一方、左サイドにも前述のとおり「アイソレーション」としての木村が張り出し、何かあったらドリブルでぶち抜くぞという姿勢を打ち出していました。

ただ、前半は途中で相手にパスカットされたり、プレスをかけられてコースがずれたりと、なかなか「滑らか」とは行きませんでした。
岡山としては、この試合前半の主戦場であった右サイドの#14田中雄大が前半15分に負傷し(35分まで懸命にプレーしてくれたが途中で交代となった)、状態が万全でなかったことも少し影響したかもしれません。

左右から押し返す ~後半~


後半も、地力の強さを活かして圧力をかけてきたのは清水の方だったかもしれない。
じっさい、後半のハイライト動画を見ると、ほとんど清水の攻撃シーンばかりとなっていた。これだけ観ると、なんだか岡山は清水に押し込まれまくっているな?と勘違いされてしまいそう。

しかし、筆者の主観(試合を見ていた皆さまも?)では、「これはおかしい」後半の岡山は、なかなかにやり返していたはずですよ!?
ってことで、岡山がやり返していたシーンを振り返ってみます。

キムタカ、Cスタを疾(はし)る

この試合の後半といえば、やはり#19木村太哉(きむら たかや、キムタカ)の大活躍は外すことはできません。この日は、ドリブル・チャンスクリエイトの回数がチームトップと、面目躍如の大活躍。

筆者はだいたい、DAZNで動画見ながら「おっ」と思ったシーン・時間・選手をメモしているのですが、この日の後半はこんな感じになった。キムタカの仕掛けがこれだけ印象に残ったということであります(後半のメモだけ挙げていますが、前半のキムタカも大変よかった。試合通じてよかった)。↓

筆者の観戦ログ。怒涛のキムタカ祭りに

しかしこれだけ好プレーを連発していても、ハイライト動画にないシーンが多い。仕方がないので、筆者が特に「いいな」と思ったシーンを作図し、読者の皆さまにお届け致したいと思います。拙い作図ではございますが、考察の参考になればと思います。

〜〜キムタカ・いいねシーン集〜〜

48:20~

▲48:20。#23バイスから、いったん大外の#16河野へボールが出る(①)と、それよりやや内側をキムタカが走る。河野は間髪入れずに前方へパスを出す(②)と、このパスが相手選手に当たってコースが変わり、相手ゴールに向けてランしていたキムタカの丁度いい位置へ。そのままスピードに乗って相手ペナルティエリア内へ進入(③)。シュートは打てず。

60:07~

▲60:07~。(①)は、キムタカが走って相手のパスをカットしたところ。そこから中央レーンに向かって少しボールを運ぶと、「ヨシタケロール」で上がってきた#43鈴木を使う(②)。鈴木はこれまたワンタッチで前方へパス(③)。相手ペナルティエリア内の#18ソロモンが電柱役となって、周囲のイグォン、ムークらも絡んでゴールを狙わんとした。(相手守備が粘り強くシュートならず)

74:53~①

▲74:53は、48:20と逆で、起点が河野、パス出しがキムタカ。バイスから(①)のパスを受けた河野はキムタカへ(②)、キムタカが再び河野へ(③)というパス交換。
(③)のパスを受けた河野は斜めに相手ペナルティエリアへドリブルし(④)、クロス(⑤)。

(↓へ続きます)

74:53~②

河野のクロスは流れたが左の#2高木がこれを回収。すこし浅い位置に戻って(⑥)、今度は中央の#6輪笠へ(⑦)。輪笠がふわりとクロスを上げると(⑧)、相手ゴール前の#18ソロモンがこれを受け、強引にシュートを放った。
(※このシーンはハイライト動画にもあったはず!)

……だいたいこのような感じで、ハイライトにはないけど、キムタカを中心とした右サイドからの取り組み自体は何度も行われていることがわかります。

左も負けじと!!!!

とにかくキムタカは自慢のドリブルをはじめ、スプリントにパス出しにボール奪取に八面六臂の活躍を見せており、岡山の攻撃を右サイドからけん引していました。

しかし、後半よかったのは右サイドだけではない。左からだって、負けじと良い攻撃を見せていたように思う。左サイドからの攻撃で中核となっていたのは、新加入の#2高木友也と、#43鈴木喜丈。

ここでもざっくりと、筆者が「いいね」を押したくなったシーンを取り上げる。

〜〜左サイド・いいねシーン集〜〜

66:20~

▲66:20。バイスからのパス(①)を受けた高木が、同じサイドで削りに来た清水#28吉田選手に競り勝ってボールをキープ。鈴木がその内側を駆け上がって高木からパスを受け(②)、少し運んで(③)、ソロモンへくさびとなるパスを打ち込む。

81:12~

▲81:12は、バイスからのフリーキック(①)が岡山ボールのスローインとなったところから始まる。スロワーの高木に寄ってくる相手選手の背後を、鈴木が猛然とスプリント。高木は迷わず鈴木へスローイン(②)、ボールを受けた鈴木がそのままドリブルしてゴールを狙った(③)。高木―鈴木の連携もさることながら、サイドバックの鈴木がここまで上がっているというシーン。

96:59~

▲試合終了間際の土壇場96:59は、途中出場の#44仙波大志が強く当たってボールを奪ったところから(①)。高いインテンシティでボールを奪った仙波が、一気呵成に相手ゴールめがけて走る(②)。高木が左サイドを並走、仙波からパスを受ける(③)と、これまた間髪入れずクロスを上げた(④)。

高木の持ち味たる、きわめて良質なクロスであった!いけ〜‼︎と、岡山サポーターが叫ぶ中、清水のGK権田選手がこのボールの行く手を阻む…!キーっ!!!!

互いに攻め立てたがゴールネットを揺らすまでには至らず。スコアレスのまま、タイムアップの笛が鳴った。

考察 〜岡山の攻撃は絶対におもしろい〜


ここまで、昨季J1の強豪・清水との激戦を振り返りました。後半のチャンスシーンを図に起こしていく過程で、「やっぱり岡山の攻撃っておもしろいぞ」という思いを抱かずにはいられませんでした。

何が面白いかというと、「自分たちで」チャンスを作ろうという明確な意図が伝わってくるあたりでしょうか。

昨シーズンはどちらかというと「前に当ててこぼれたところを狙う」とか「前で奪ってからカウンター」というのが多かった。ハマれば迫力満点の攻撃となったのですが、前に当てられなかったり奪えなかったりすると守勢に回ることが多かったのも確かでした。今シーズンは自分らがボールを持てれば、そこからどうにかしてチャンスを構築できそうな雰囲気があります。

今節はサイド攻撃が鮮やかでした。左サイドでは高木・鈴木、右サイドではキムタカ・河野。彼らが良いコンビネーションを見せて、「ワンツー」で小気味よく相手を出し抜いていく手法が良く見られました。

出し手はボールを出したら敵陣めがけて走り、受け手はすぐに出し手の行先へパスを返すという具合。相手の背後を走り抜けたり、テンポよくワンタッチでパスを出したり、意外なところからシュートを浴びせたり。見ていて「おっ、良いな!」と思えましたし、作図するのも楽しかった。

これにムーク、ソロモン、イグォンらが加わり、輪笠、バイス、柳らが後方からパスを割り振り、前線から中盤・最終ラインまでが攻撃をデザインする。今季の岡山の戦い方はこんな感じなのだろうな!と思いました。あとは決定力だ!!

当然、リスクを負うプレーも増えると思いますし、失敗からピンチを招くこともあるでしょう。「奪われたらどうするんだ!」「モタモタしないで早く前に行け!」と、観ていてじれったい思いをされる方もいるかも知れない。

しかし、今季のスタイルを考えれば、リスクを回避するだけじゃなく向かっていく姿勢も必要。ということは、そこで我らサポーターが後押しできるところもあるかもしれない。本記事をお読みいただけた方々にはどうか、選手たちが狭いところや厳しいプレスに臆せず立ち向かう姿を、心温かく応援していただければと思っております。

天上界からの刺客と2試合戦い終えて、次節はアウェー水戸戦。ここからが本当の魔境J2、そんな予感がいたします。

ぜひぜひ、応援いただければと思います。

(了)

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