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記憶から歴史へ~オーラルヒストリーの世界/ヨーロッパの自伝文化

ポール・トンプソンというイギリスの社会学者が書いた〔記憶から歴史へ〜オーラルヒストリーの世界〕という書籍があります。

かなり分厚い本なので読むに時間がかかりますが、私はこの本をとても大切にしています。

何故なら、ここには、私が〔口述による自伝制作事業〕を推進する上で必要な知識やノウハウなどが、随所に散りばめられているからです。

ヨーロッパでは、昔から人ひとりが生きてきた証として、〔自伝〕や〔自叙伝〕、〔回想録〕を著すことを必須としてきました。

功成り名を遂げた人ばかりでなく、ごく普通の人たち、あらゆる階級の人たち、お金があるとか豊かな生活をしてきたかを問わず、ひとりひとりの人生経験を書き綴ってきました。

例えばウクライナ。

ウクライナの男性は、一生に4つ条件を満たしてはじめて甲斐性のある男だと評価されるといいます。

この4つの条件とは?

①子どもをつくること
②家を建てること
③庭に木を植えること
④一冊の本を上梓すること

この内、④が一番の難問で、男たる者、これを成し遂げなくては一生の完結にならない。

理由は、帝政ロシア時代、学校の授業でウクライナ語は教えられずロシア語一辺倒で、その上厳しい検問があったために、ウクライナ人によるウクライナ語の記録、即ち〔自伝〕を残して歴史に刻むべしと言うことなのです。

こうしたこと以外、宗教観の違いが大いにあるでしょう。

ヨーロッパでは、ほとんどの人がキリスト教を信仰していて、神への告白というものをとても大事にしているからです。

即ち、〔自伝〕とは、自分の生き様をあからさまに神に告げることに他ならない。それが、“自伝は西洋の文化的所産”と言われる所以ですね。

もっとも、ヨーロッパにおいても、語ることはできても書くことができない人たちが大勢います。

ヨーロッパの国々では、それぞれにグループを作って、語り手と共に聴き手が必ず存在し、〔自伝〕や〔回想録〕を制作していくのです。

このことを〔オーラルヒストリー〕と言い、また話の聴き手を〔オーラルヒストリアン〕と呼んでいます。〔オーラルヒストリアン〕とは、いわば聴くプロであるとともに、歴史家でもあるのですね。

シンプソンはこう言います。

「オーラルヒストリアンは、どこでもインタビューに行く。専門的なことをよく知っているお年寄りの足元に座るのだ。

あらゆる人たちから聞き書かれたものは、後世に生きる人たちに計り知れない価値を与えていく。その時老年者たちは、尊厳や誇りを獲得するのである。

オーラルヒストリーの衝撃的な進歩は、回想がセラピーの役割を果たすことに人々が気が付いたことだ」と。

ポール・トンプソンの考えは、改めて、今私たちが進めている口述自伝制作事業〔ライフヒストリー良知〕の〔ミッション〕や〔ビジョン〕、〔バリュー〕に関する意味を裏付けてくれているのです。

現在、〔顧客開拓プログラム〕を作成しています。その中に、顧客紹介者に対するインセンティブの項目があります。

その詳細について、近日中にアップしますので、よろしくお願いします。

〔自伝〕を、“日本の文化的所産”にするために。

ー続くー

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