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昔を懐かしむ傾向の個人差/社会におけるなつかしさの意義

〔なつかしさ〕について研究を進めていく上で、「人は、昔をなつかしむ傾向がどのくらい強いのだろうか」という疑問にぶち当たりました。

あれやこれや本を紐解き、ネットでくまなく調べると、ありました。「日本心理学会」という学会がそれに少し関連する内容を発表しています。

これについて、学会はアンケート調査を行っており、代表的な次の3項目について、5段階で回答者が評定しています。

(1)古き良き時代に憧れる。
(2)今より昔の方が自分は幸せであった。
(3)私はときどき人生をやり直せたらと思う。

(1)は文化的ななつかしさに対する好みであり、(2)と(3)は自伝的ななつかしさであり、過去に戻りたいという願望を示しています。

この結果、男性は(1)を回答する比率が(3)よりも高く、(2)は一番低かった。一方、女性は、(1)と(3)と回答する比率は同程度で、男性と同じく(2)が一番低くなっていた。

つまり、男性は、古き良き時代に憧れる傾向はあっても、女性はときどき人生をやり直したいと思う気持ちがあっても、今が昔より不幸せだと考えているわけではないことが、明らかになりました。

年齢別にみたところ、男性は50歳代の頃、女性は40歳代の頃に過去を振り返ると、最もなつかしさを感じる傾向が高いようですよ。

「日本心理学会」は、これらをはじめ、なつかしさに関する様々な調査結果を踏まえて、次のように書き記していますね。

◆◆

なつかしさが、私たちの生活において果たす適応的な機能について述べよう。

個人的ななつかしさは、心的タイムトラベルとして、過去の世界を旅をして、現実の辛い気分を忘れたり、過去の辛い記憶をポジティブに変化させ、幸せな気分や自尊心、或いは自己肯定感を高める効果がある。

また、人生の意味付けを行うことによって、「死への脅威」を緩和するという制御機能がある。

さらに、なつかしさには、孤独感を低減し、社会的サポート感を高めてくれる作用がある。

そして、なつかしさのきっかけになる共同的な回想場面は、幸せな気分を共有し、時間間隔を埋め、絆を作ることができる。

これは社会・文化的なつかしさとも関連している。

過去の良きものや伝統のあるものを保存しておくことは、その文化を共有する人たちの、なつかしさ感情を引き起こす手がかりとなり、人々を結びつけることになるのである。

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これらは、まさしく口述自伝制作事業〘ライフヒストリー良知〙の目指すビジョン、そのものですね。

🟥ライフヒストリー良知ホームページ
https://life-history.jp/

🟥ライフヒストリー良知メディアサイト
https://media.life-history.jp

ー続くー

【小さな恋のメロディ】

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