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なつかしさ/脳科学/手続きの記憶/プライミング記憶

これまで、人の〘長期記憶〙には、〔エピソード記憶〙と〔意味記憶〙があるといいましたね。この二つを併せて〘陳述記憶〙とも呼んでいます。

一方で、〘非陳述記憶〙、或いは〘潜在記憶〙と呼ばれる記憶に、〔手続きの記憶〕や〔プライミング記憶〕、また〔習慣記憶〕や〔非連合記憶〕があります。このうち、〔手続きの記憶〕と〔プライミング記憶〕についてお話します。

例えば、私たちは服を着たり脱いだりしますね。これは生まれたばかりの赤ちゃんの頃には出来なかったことですから、今まで生きてきた時期のどこかで、いつの間にか、その方法を「記憶」したことになります。

そして今では、特に意識することなく服を着たり脱いだりできます。スポーツもそうですね。初めから上手くできる人などいません。何度か失敗を繰り返しているうちに自然に上達してくるのです。

ところで、私は大学1年生まで卓球部に所属し、常に上位を目指して一生懸命練習に励んでいました。ただ、社会に出てからは、卓球に接する機会がほとんどなく、ごくたまに旅行で温泉に行った際、〔温泉卓球〕を楽しむぐらいで今日に至っています。

先月、コロナ禍を経て、4年ぶりに出身高校の卓球部のOB会があり、現役の学生との交流試合に参加しました。ラケットを握るのは実に5年ぶり。そこで、何と、現役1年生と試合をして勝ったのです。これには自分自身、ほんとびっくりしましたよ。

つまり、卓球の技術を身体で覚えていたのです。まさに〔昔取った杵柄〕。この「身体で覚える」というのが、実際には「脳が記憶している」ことで、これが〔手続きの記憶〕ですね。

この記憶は、歩いたり、箸を使ったり、パソコンのキーボードを叩いたり、普段、私たちが何気なく行っている行動にとって、たいへん重要な働きをしているのです。

〔エピソード記憶〕や〔意味記憶〕が「What is」として説明できるのに対して、〔手続きの記憶〕は「How to」の記憶だと言ってもいいでしょう。

そして、〘潜在記憶〙のうちのもうひとつが〔プライミング記憶〕。別名〔入れ知恵記憶〕とも呼ばれています。

この〔プライミング記憶〕が発見されたのは、1980年代のことですから比較的新しい。

人間の脳は何かを記憶しようとするとき、関連し合うもの同士を、網の目のように結びつけるようとする機能を持っています。

私たちが、口述自伝を制作する際、顧客に対し、過去のなつかしい記憶を思い出して頂くとき、当社のホームページに掲載されている数多くの年表や史実を示し、問いかけています。

例えば、その当時の政治や経済、社会情勢、大きな事件、流行した言葉や歌、ヒットした映画やテレビ番組、ベストセラーになった本、活躍したスポーツ選手などについて、話をしながら聞き書きを進めていきます。

これは、まさに顧客の〔プライミング記憶〕を呼び起こして頂くためなのです。

つまり、〔プライミング記憶〕とは、関連あるものがお互いに近寄ることで、その人の記憶が蘇り、情報が整理されていくのですよ。

ー続くー

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【なつかしい映画、小さな恋のメロディ】


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