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松尾芭蕉について考える_230416

 滋賀県にある琵琶湖大橋は鉄筋コンクリートでできた近代的な橋で、僕には情緒を感じられなかった。浮御堂辺りからこの橋が見えると、経済的な便利さのためだけに造られた景勝地とは不釣り合いな無機質な土木構造物であるように感じられた。

 しかしその橋が芭蕉の存在と繋がりがあることを知った。すると瀬田の唐橋や嵐山の渡月橋のような情緒あるデザインではなくとも、琵琶湖大橋独自の魅力を感じられるようになった。橋の上と、浮御堂境内に置かれた芭蕉の句「比良三上 雪さしわたせ 鷺の橋」の意味は、「鷺よ。比良山と三上山の間に雪のように白い橋をかけておくれ。そうすればより一層美しくなるだろう」といった意味だろう。近江に住んでいた芭蕉が堅田の浮御堂あたりで詠んだ句だろうか。

 琵琶湖大橋建設時、当時の県知事は俳人でもあったため芭蕉のこの句を知っていた。そしてある時、立派な仕事をしましたねと誉められた際「この橋の着想は芭蕉にある」と言ったそうである。着想がこの句にあるということは、いわば琵琶湖大橋は「美しい鷺の橋」である。この橋を見る時、芭蕉の句と当時の県知事の心境を想うと、ただの巨大で便利な橋ではなく魂の宿った橋となるように感じる。

琵琶湖大橋から見た静かな近江

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