引用日記⑯

 「団栗(どんぐり)」の結末で、寅彦はドングリを拾う無邪気な遺児を見て、「始めと終わりの悲惨であった母の運命だけは、この子に繰り返させたくないものだ」と述懐する。「終わり」は理解できるが、「始めの悲惨」については不明とされていた。山田さんの推測通りなら、その意味が了解される。

 寅彦は夏子を忘れられなかった。

 「団栗」はじめ、いくつかの随筆にさりげなく登場させている。随筆を書くときは「吉村冬彦」というペンネームを使った。吉村は寺田家の先祖の名字であり、冬彦は「夏子」のイメージから、といわれる。

寺田寅彦と妻夏子 - トラベル「愛の旅人」(朝日新聞)http://www.asahi.com/travel/traveler/TKY200801110159.html


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