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薔薇と菫

Ⅰ, 薔薇

今となっては、僕の人生に薔薇が必要だった。
時に優しい棘で人生に刺激を与えてくれる。今の僕がこうしていられるのは、限りなく僕の生きてきた道に一本の薔薇の花があったから。

愛とは何か。
それは全てを許容する振る舞いに現れるのではないか。
いつだって、限りない海のような心で受け入れてくれたんだ。

美とは何か。
ぼくにとって、美しいとは言葉で表すことができないものだ。
美しいという言葉は数えきれないほどの情景を網羅する。
しかし、美しいと思うその心はあなたによって培われたものに他ならないんだ。僕にとっての海、あなたという存在が心の中で生き続けている。

いついかなるときでも、あなたに見せてあげたかったと思う景色に左手の指輪が同行するよ。
僕の果てを見てくれるかい。

僕に尽くしてくれた、その全てを返せる自信はないんだ。
だが、僕にできることであれば。全てを支えたい。
あなたが創り上げた一人の人間だから。

僕の美徳が薔薇の物差しが基準で精製された気がしているんだ。

Ⅱ,菫

見えている景色には、果実は見えない。
でも道標に薄赤色の菫があるんだ。
それが僕にとっての他ならない希望。
この菫が僕の人生を実り在るものにしてくれるだろうか。

どこを見渡しても、菫が消えてくれないんだ。

振り返れば、赤い薔薇を与えられても、色を失わせることしかできない人生だった。

愛を求められれば拒絶し、多くの滴を滲ませてきたんだ。
不良品で、華を蝕む蛾なんだ。きっと。

絶望の果てに落ちて気付いた。
無性愛者だなんて、笑える話。

明るい道だと思えた。今よりもずっと。
こんな害虫を肯定してくれる言葉がそこにあったから。

眠と死が友達なら、うまく付き合える気がしているんだ。
眠の中でしか愛というものに触れられないから。

でも、そこに菫があるなら、信じて進みたいと思わせられるんだ。

先に果実が実っていたら、いいな。
立ち止まることはあるけれど、それでも前の菫に足を向けよう。

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