フロイド・メイウェザーを呼ぶのに必要な金ー世界最上級のスポーツビジネス

総合格闘技RIZINにて、全勝の新鋭にして日本最強の呼び声高い那須川天心選手が、ボクシング世界5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー選手と対戦。残念ながら、1ラウンドに3度のダウンを取られる一方的な展開を見て、セコンドが棄権を申し出たためメイウェザー選手の勝利となった。

普段60kg前後で試合をする那須川選手と、一番重い階級がスーパーウェルター級(69.9kg以下)だったメイウェザー選手とでは体重差がかなりある。
那須川選手が8オンスのグローブに対して、メイウェザー選手が10オンスのグローブを着けても余りある体格差に加えて、ボクシングルールでやれば一方的な展開になるのは至極当然。軽くではあるが左ストレートを当てた那須川選手の健闘を讃えねばならないくらい戦力に差のあるエキシビションマッチだった。

さて、フロイド・メイウェザー選手といえば、"MONEY"のニックネームが付くほど金に執着する性格だが、それは莫大な金を引き寄せるだけの強さと実績を持ち合わせているだけに他ならない。
結果として、メイウェザー選手のファイトマネーは年々高くなって行き、最後にアメリカで行ったボクシングの世界戦(2015年5月、マニー・パッキャオ戦)では約400億円とも言われる超高額のファイトマ
ネーを獲得した。

わずか1試合で、サッカーのスーパースターであるクリスチャーノ・ロナウド選手の年俸(約120億円)を3倍以上を稼ぎ出した事になる。
その試合がマニー・パッキャオ選手(フィリピンの国会議員にして世界6階級制覇王者)という世界的強豪との頂上決定戦であったとは言え、もはや金額が大きすぎて言葉が継げなくなる。ちなみに、パッキャオ選手のファイトマネーは約360億円だと言われる。

上記のように、1試合で数百億円を稼ぐスーパースターのメイウェザー選手を呼ぶのにいくらかかるのだろうか。

メイウェザー選手はすでにボクシングを引退してプロモーター事業をしている実業家ではあるが、ファイトマネー次第では試合に応じる事は、アメリカの総合格闘技UFC王者のコナー・マクレガー(2017年8月26日)戦でも証明されている。
この時のファイトマネーはメイウェザー選手が約330億円、マクレガー選手が110億円だったと言われている。

メイウェザー選手のようなスーパースターを呼ぶ場合、支払うのは莫大なファイトマネーだけではない。交通費はもちろん、試合までの宿泊費を本人に加えて、セコンドや取り巻き達の分まで負担しなければならない。
これは海外から選手を呼べば誰でも同様に発生する費用だが、それがメイウェザー選手では諸々桁違いの金額となる。

試合の契約内容が分からないため、ここからは筆者の想像による試算となる。

・メイウェザー選手のファイトマネー→30億円
本人はInstagramで「9分間のスパーリングで9万ドル(約10億円)儲かると言われたら、あなたならどうする」と投稿。ただし、本人の性格から恐らくかなり少なめに言っていると想定。

・メイウェザー選手とセコンド及び取り巻き達の交通費→3,000万円
・同宿泊費及び滞在費→1,000万円x滞在日数
メイウェザー選手は自家用ジェットで29日に来日、
燃料代とジェット機停泊料は決して安くはなく、宿泊は間違いなくスイートルームであることを考えれば、上記では安すぎるかもしれない。

試合では触れていなかったが、レフェリーを務めたケニー・ベイレス氏はアメリカで最も実績のあるレフェリー(つまり世界一のレフェリー)であり、同氏や関係者を呼ぶ費用も決して安くはない(ベイレス氏を呼ぶ事を契約に盛り込んでいると思われる)。
諸々合計したら、少なくとも50億円は必要になる事が想定される。

実業家にして金の亡者メイウェザー選手にとり、階級が下のキックボクサーとボクシングルールで対戦する「極めておいしい」条件下に加えて、大田区総合体育館にて30日に行われたボクシングの世界タイトル戦での視察(将来的に自分のプロモーションに引き入れる腹積もり)も兼ねていると考えれば、ビジネスとしてはこの上なく上等である。

メイウェザー選手のボクサーとしての全盛期と偉業を知る私にとって、たとえボクシングルールとはいえ総合格闘技のイベントには出場して欲しくないのだが、スポーツビジネスという世界で巨額を動かすためには最も利に叶う存在がメイウェザー選手であると言える。

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