ゴーン元日産自動車会長の逮捕によって日本の刑事司法制度は変わるか?

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38528340U8A201C1000000/

本日の日経電子版に興味深い記事が出ていたので、紹介がてらコメントしたい。

日本の刑事司法制度への海外の誤解うんぬんはさておき、残念ながら前時代的かつ硬直的な刑事司法制度であることは否定できない。

国連の規約人権委員会(批准している国際人権条約に反する法規がないか、4年程度に一度報告書を提出し、その内容を審査する場所)では、知る限り30年以上にわたって批判されている。

取調べに弁護士が立ち会えない事はもちろん、いわゆる「人質司法」と呼ばれる、容疑を認めない限り延々と勾留される司法制度、執行当日まで知らされない死刑制度etc.…内容は多岐にわたる。

法務省官僚(大半は検察官か裁判官経験者)は通り一辺の回答を報告書に書き連ねるのだが、その度委員会から多数の訂正と改善を求められる。
日本政府は委員会で何を言われようが法改正する気はさらさらないので、4年程度のインターバルを経て次の委員会で前回とほぼ同じ箇所を厳しく(前回から全く改善がないから)批判される。

最近の委員会では、前回の指摘箇所から変わらない「日本政府にとってはお馴染み」の報告書に業を煮やしたイスラエルの委員が「こんなものを審査するのは時間の無駄だ」と言い残して退席してしまう一幕があった。

今回のゴーン元社長の逮捕により、とりわけフランスから日本の刑事司法制度の劣悪さが度々批判されていて、この外圧が制度改革の契機となるかと期待する向きもあるようだが、悲しいかな前述の規約人権委員会での歴史を見ても分かる通り、日本政府にとっては「いつもの事」に過ぎない。

その証拠に、先月下旬には法務省の某高級官僚が度重なる刑事司法制度への批判に対して「我が国には我が国のやり方がある」と反論。反論というより逆ギレに近く、独裁体制の指導者と大差が無い事に悲しくなる。仮にも我が国は先進国なのだが……

ゴーン元社長の件で刑事司法制度が改まる可能性は極めて乏しいが、刑事政策の研究者としては批判が集中し続けたら取調べへの弁護士立会いが認められるかもしれない(ただし遠い将来)。

そもそも、取調べの弁護士立ち会いを認めていない国が司法取引なんて認めてはいけない(そして司法取引とは呼べない)のだが、それはまた別の機会に。

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