来年のダイヤ改正を考察

先日、JRグループ旅客6社とJR貨物が2021年3月に実施するダイヤ改正(九州はダイヤ見直し)の概要が発表され、それに続き、一部の私鉄と第三セクター鉄道もダイヤ改正あるいはダイヤ見直しの概要を発表した。2020年改正発表時とは大きく様変わりし、「コロナ禍」と「減収減益」を大きく反映している。

減便


この改正で特に顕著だったのが、特急、普通列車などの規模縮小だ。北海道ではほぼ全道の特急や札幌と新千歳空港を結ぶ「快速エアポート」で減便や臨時化、東日本では成田エクスプレスの一部運行区間短縮、四国では一部の列車が減便、九州では新幹線や特急を中心に減便や臨時化、西日本では「サンダーバード」や「くろしお」などの特急で臨時化が、湖西線、嵯峨野線、ゆめ咲線などでは普通列車の減便が実施される。
「コロナ禍」で長距離の移動が減り、テレワークや時差通勤の定着がここに反映されているものと思われる。また、嵯峨野線に関しては観光、インバウンドの大幅減が影響していると思われる。

終電繰り上げ


JRグループのうち、西日本と東日本は先駆けて最終列車の繰り上げの概要を発表、繰り上げ時分も明らかになっている。そして、四国と九州もダイヤ改正発表と同時に最終列車を繰り上げると発表した。加えて、福岡を本拠地にする西鉄こと西日本鉄道、都内と茨城を結ぶつくばエクスプレスも最終列車を繰り上げ、小田急に至っては最終繰り上げに加え始発の繰り下げも行う。ちなみに、京阪電車も2021年1月改正で最終列車を繰り上げると発表している。
西日本は「働き方改革」を目的に、去年から最終列車の繰り上げを検討していて、当初の発表通りに2021年改正で実施することとなった。元々、保線作業員の人手不足が叫ばれていた中で、行動様式の変化や行政から飲食店に対する時短休業要請、「夜の街」関連の感染拡大などの複合要素で西日本以外の多くの鉄道事業者が最終列車繰り上げに踏み切ることとなった。全国ニュースで大々的に報道されるなど今改正では1番の注目の的となって、賛否両論巻き起こっている。

通勤特急の充実


長距離の昼行特急が縮小傾向の中、西日本は京阪神の朝晩の通勤向け特急の利便性を向上させることとなった。まず、滋賀〜京都、大阪方面では「びわこエクスプレス(米原、草津〜大阪)」の停車駅に南草津が追加、「はるか(※)(草津、京都〜関西空港)」も停車駅に南草津が追加され、山科にもこれまでの3号に加えて、全列車が停車する。
一方、「らくらくはりま(姫路〜大阪)」の停車駅には新たに大久保駅(兵庫県明石市)が追加され、発着駅が大阪から新大阪へと延長される。
そして、新大阪と福知山、豊岡方面を結ぶ「こうのとり」は夜間の下り3本が西宮名塩に停車する。
普通列車や快速列車に比べると「密」を避けられ、通勤する上で安心要素になるだろう。また、大久保駅はこれまで普通列車しか停まらない駅だったものの、ニュータウンや住宅が多く、大きな需要が期待され、混雑回避にも繋がる。同じように南草津駅も新快速が停車するなどで隣の草津駅をも超えるほど利用が増え、需要が見込める。また、「密」を避けるべく、通勤手段を自転車や自家用車に乗り換える人が増えていることもあって、離れた利用客を戻したいという意図も考えられる。

※…入国制限や需要減少により、大多数が未だに運休し、全体の約3分の1しか運転していない。この改正で以前、琵琶湖線米原駅に乗り入れていた2往復の便は一応復活となる見込みだが、米原〜野洲間は廃止されることとなる。

オンラインで潤う貨物


貨物の改正は逆に増発が目立つ。オンラインショッピングいわゆる「eコマース」の利用拡大で取り扱い量が増え、大量輸送が可能なコンテナ貨物を増強させるというもの。また、機関車やフォークリフトも改正に合わせ製造する。
外出しにくい今、オンラインでの買い物は最早当たり前になってると言っても過言ではないご時世。そんな増加する需要に大量輸送で応えるコンテナ貨物列車は非常に大きなメリットがある。環境への配慮や長距離トラックドライバーの人手不足も相まって、貨物列車は今大きな波に乗っていることでしょう。

注目の新列車


この改正でも、毎年のように注目される新設列車、新型車両がある。
東日本では特急「湘南」が東京、新宿〜小田原に設定される。朝夜に運行されている「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」の3つを合併の上、特急に発展的格上げする列車だ。全列車が特急「踊り子」用のE257系2000番台が使用される。全車指定席とし、その空席に座れる「未指定券」も合わせて発売開始の予定。
同じく東日本では千葉県房総方面でE131系電車が運用を開始、同時にワンマン運転も開始する。

大復活!!


一方で西日本では新型車両ではないものの、休車していた271系電車がほぼ1年ぶりに復帰を果たす。
元はインバウンドが旺盛なときに合わせて「はるか」を全て9両で運転すべく製造されたもの。「ハローキティ」のラッピングまで施し満を持してのデビューだった。しかし、感染拡大による入国制限や国内線の利用減少の煽りを受け、デビューからわずか数週間で全列車9→6両に減らされ、休車になる。いわば「自宅待機」を余儀なくされたのだ。
それから、時間が経ち今改正では、朝の2往復限定で9両運転を復活することとなった。通勤時間帯の需要を取り込むためと思われる。271系にとってはようやく戦線復帰となり、もし、この電車に心があるとしたら飛んで喜んでいることでしょう。登場時の目的とは違うものの、通勤客を安全に快適に走り抜けてくれることを願う。

まとめ


2021年JRグループダイヤ改正のポイントや個人的な注目をまとめてみた。コロナ禍によって、全国の鉄道事業者が減収減益で厳しい状況に立たされている。JRグループでは貨物、東海以外はいずれも最終列車の繰り上げや減便を発表した。特に最終列車繰り上げは多方面に影響を与えることもあって、全国ニュースで大々的に報道され、世間の注目が向けられた。
ネガティブな話題の一方で今年も新型車両の話題や貨物列車の増発、紹介できなかった新型車両の運用拡大やICOCAのエリアが近畿北部、和歌山、北陸で拡大するなど明るい話題も事欠かない。
今後3月初旬までには全ダイヤが確定し、2021年3月13日に新ダイヤがスタートする。
果たして、この改正でどうなるか見守っていきたい。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。