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2つの「短い」を見に。

たくさんの列車に乗ってきて多数の記事も綴った今回の列車旅。この他さらに「短い」というキーワードで2つの鉄道を見てきた。そんな来訪記を綴る。

幻のモノレールと夢の跡

姫路で降りて、山陽電車に1駅乗って手柄駅へ。そこから汗だく猛ダッシュで向かったのが手柄山。ここにある幻の電車がいる。それが

姫路市交通局が運営していた「姫路モノレール」。ここ手柄山から大将軍駅を経て姫路駅までの1.6キロという短い区間を走っていた。大阪や東京などと同じ跨る形(跨座こざ式)のモノレールだ。

今の跨るモノレールはこのようにいくつものゴムタイヤをレールに挟んで走るタイプが大方を占めている。これらを「アルヴェーグ式」と呼ぶ。

一方で、姫路モノレールはタイヤではなく鉄製車輪を履き、コンクリートに取り付けたレールで走らせるという構造。「ロッキード式」と呼ばれ、姫路の他、小田急の向ヶ丘遊園むこうがおかゆうえんモノレール(神奈川県川崎市)でも採用された。

1966年に開通した頃は「姫路大博覧会」の会場アクセスとして賑わったものの、利用は激減。大きな赤字でやっていけなくなり、開業からわずか8年後の1974年に休止、1979年に廃止。日本では類を見ない短命の鉄道となったのが「幻」と称される所以なのだ。加えて、「ロッキード式」自体も向ヶ丘遊園モノレールで致命傷とも言える損傷が見つかったことで修理を諦め、全廃するに至った。

しかし、廃止後も手柄山駅には車両やホームが長らく解体されずに放置された。それでも状態が良かったのと、これらを大切に保存しようという動きなどで「交流ステーション」として再生。一般公開され、久々に日の目を見ることになった。

レトロな雰囲気が漂い姫路銘菓『御座候ござそうろう』を始めとする広告や時刻表などの看板類はそのまんま。車内で放映されたビデオには当時のモノレールの映像も映され、多彩な表情を見せる乗客やコテコテの播州弁で喋る車掌さんが非常にリアルだ。

手柄山を後にして乗る電車までの少しばかり、廃線跡を散策することに。

JRと交差する部分は高架工事の邪魔になったからか撤去されているなどしているが、これだけ残っている。実際撤去とか解体には莫大なお金がかかるもの。だから、危険な廃墟が無くならないわけだ。

この場所には途中駅であった大将軍駅が残っていた。カーブを描いた高層アパートの中腹に突入するように駅がある独特の構造をしていた。廃止になっても長らく建物自体が活用されてきたらしいが、現在は解体され、更地になっている。

そして、姫路駅跡地付近にも橋脚などの遺構が残っている。この辺りはかつてモノレールのガード下だった昭和の佇まい。スナックや居酒屋などが立ち並ぶ趣ある通りだ。再開発がなされず、そのまま残されていると思われる。

紀州鉄道

2日目に和歌山へ行って乗りたかったのがこの紀州鉄道。きのくに線御坊ごぼう駅から分岐し、西御坊駅までの2.7キロを走る。総営業距離は一時期「日本一短い鉄道」という称号を持っていた。しかし2002年、千葉県に芝山鉄道が開通すると、2.2キロしかないこちらに称号を明け渡した。ただ、後者は第三セクターであるため、中小私鉄というくくりでは日本一を維持し続ける。

御坊駅の「すみっこ」に止まるKR200形。僕が以前訪れた信楽高原鐵道(SKR)から譲渡された車両。形式は前任の「SKR」から「S」のみを抜いている。緑ベースは赤とクリームのツートンに変わり、御坊市のキャラクターがあしらわれている。

車内は地元の税務署とコラボで税にまつわる作文が飾られている。

13時28分、御坊駅を発車。最初の15㎞/h制限の急カーブを曲がって田んぼ道をのんびり進んでいく。

発車から4分で学門駅に到着。受験生にご利益のある駅として知られ、学門駅の入場券は大人気だ。このときは乗車も降車もおらず、扉すら開けずにものの数秒で発車。そして、発車から1分も経たずに紀伊御坊駅に到着。ここで下車する。

駅構内には同じく信楽からやってきたKR300形、「レールバス」ことキテツ1形(休車)、レトロバスのような窓が特徴的で大分から紀州鉄道にやってきて、長年活躍したディーゼル車まで様々あるちょっとしたミュージアム。そして、紀伊御坊駅の駅名板キーホルダーを購入すると、特急の時間が迫ってきて、大急ぎで御坊駅まで戻る。ギリギリのタイミングで特急に飛び乗った。なんとも列車と徒歩で真逆な一連のぶらりだった。

これら「短い」鉄道を「バタバタ」しながら巡った今回。それでも、歴史散策で残る遺構を発見できたり、自分と同郷の列車に和歌山の地で乗れたのも嬉しかった。いずれも音楽無しだったのとたまたま「短い」「バタバタ」という2つのワードで結べたのでこういう記事にした。また良い思い出だ。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。