北海道新聞記者・建造物侵入事件への感想

かつて、公安事件華やかなりし頃、建造物侵入罪とか器物損壊罪は、公安事件で頻発していて、当局が左翼、労働組合を「弾圧」するのによく使われていた。
それらに関わる判例の多くは公安事件に関わるもの。それが、今や、公安事件が皆無になって、そういう事件で鋭く、激しく争われることはなくなってきている。
とはいえ、気に入らない相手を引っ掛けるのには、これらの犯罪、特に建造物侵入罪は使いやすい。入ってはいけないところに入った、というわかりやすさで現行犯逮捕もしやすい。
それだけに、取材対象から嫌われているマスコミは、そういう引っ掛けに引っ掛からないように、十分に注意しなければならない。警察なら、この程度のことで逮捕はしないが、私人逮捕が一旦行われると、警察もなかったことにはできず、身柄の引き渡しを受け、弁解録取など、逮捕に伴う手続を行わなければならない。
ただ、本件の場合、弁解録取した時点で、身元は明らかで逃亡の恐れもなく、すぐに釈放して在宅に切り替えるのが妥当だった。そこは北海道警のチョンボだと思う。
そういう事件で、検察も、勾留まではつけないし、ほとんど起訴はしない。しかし、私人逮捕で48時間、留置されれば、それなりに打撃にはなるし、マスコミ嫌いは多いから、同情の声も集まりにくい。北海道新聞の件は、正にそういう状態になっている。
北海道新聞の調査報告の記事を読むと、現場が混乱し、取材対象との関係もかなり悪化していて、新人記者を入り込ませる状態にあったとは考えられない。上司の重大な判断ミスであり、自社記事でわざわざ実名報道したのも重大な判断ミスだろう。
北海道新聞を責めるだけでなく、ここから教訓を導き出して、再発を防止する必要があると感じる。

サポートしていただいた場合、書籍購入費用(毎月、最低3万円は本や雑誌を買います)の一部として使わせていただきます!