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すぐ目の前にあるガダルカナル

旭川の護国神社にはこれまで何度か参拝したが、敷地内にある一木支隊鎮魂碑には、うかつにも詣でたことがなく、今回、出張の機会に初めて参拝した。
NHKスペシャル「ガダルカナル 悲劇の指揮官」で、一木支隊壊滅の真相が日本全国に知らしめられたのは、良かったと思う。従来の戦記物では、ガダルカナル戦の問題が強く指摘される中で、一木支隊は、米軍の大勢力を見誤り無謀な突撃で壊滅した愚かな将兵たちという扱いだった。しかし、実態はそうではなく、米軍の兵力を上が見誤り、漫然と攻撃を指示し、あるはずだった海軍の協力も得られず、通信も途絶する中、孤軍と化した上での、撤退という選択肢もない中での壊滅だった。作戦の失敗の犠牲者と言えるだろう。
今の日本では抑止力、防衛力の強化が叫ばれている。それも大切だが、正しい戦略戦術で臨まないと、精強な軍事力も宝の持ち腐れになる。ガダルカナル戦当時、連合艦隊はまだ健在だったし、陸軍は終戦時でさえ中国に百万単位の兵力を抱え、本土決戦を準備していた。ガダルカナルでは、兵力を逐次投入し陸海軍の連携を欠いたことで、結局、放棄せざるを得なかった。戦略戦術の失敗であり、その中に一木支隊の悲劇もあった。
翻って、今の日本で、厳しい安全保障環境に、確固たる戦略戦術で臨める状況にあるのだろうか。円安、物価高にすら的確な対応ができない愚かな政治。防衛費増額を絶叫しながら、防衛力整備の具体的な計画も樹立できない愚かな政治。日米同盟を自画自賛しつつ、同盟強化が同時に米国と対立する諸国との溝を深め日本を追い込んでしまうことに思いが致せない愚かな政治。
我々の誰もが、いつ一木支隊のような運命をたどるか知れない。ガダルカナルは、遠い過去の遠いところにあるのではなく、我々のすぐ目の前にある。
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n1d67891c03bd

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