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今後の住宅市場で増加する高齢者単身世帯

2020年度 福岡県における「新福岡県住生活基本計画策定検討委員会:住宅市場活用部会」で、住宅政策検討委員として新しい経験をさせて頂いた。そこで共有された、福岡県から見た最近の住宅に関するデータから感じることを紹介したい。

まず、福岡県の新築住宅が建て続けられた蓄積といえる住宅ストック総数を見ると 2018年は 223.9万戸、そのうち民間賃貸住宅数は78.7万戸で住宅総数の35.1%となっており、全国平均28.5%よりずいぶん多い。また、福岡県の1988年から2018年までのストック戸数の変化を見ると、住宅ストック総数は1988年が 149万戸に対し 2018年 223.9万戸に対し、民間賃貸住宅数は 1988年が 42.2万戸に対し 2018年 78.7万戸であった。この間の30年間でみると住宅ストック総数の増加率1.5倍に対し、民間賃貸住宅数は1.8倍も増加していることになる。

次に、福岡県の貸家における新築建設の近年のピークは2006年で、その数3.3万戸と圧倒的に多く、新築住宅総数 6万戸の半分ほどだった。ところが、2019年は 新築住宅総数 3.9万戸、貸家新築建設 1.8万戸とともに約半分に減少している。

ここでの課題は二つあり、一つは福岡県空き家数32.9万戸のうち18万戸(54.9%)が賃貸住宅である。もう一つは、1990年以前の建物(築30年以上)割合が35%もあり、今後の経年物件増加を見据えた建物性能を維持するための技術開発、安心な生活環境を確保するための管理業務と法整備、そして老朽化とそれにともなう空室という向かい風を凌駕するだけの経営コンセプトを賃貸オーナーが模索する必要がある。

一方、福岡県人口はこの20年間約500万人を維持しつつも、〔世帯数/高齢化率(65歳以上)〕は、2005年〔198万世帯/19%〕、2020年〔224万世帯/28%〕。人口が470万人へと減少する2040年は〔216万世帯/33%〕と、人口減少・世帯数減少・高齢化が顕著になると予測されている。

ここで視点を「単身世帯」に向けると、2040年まで微増しながら90万世帯を維持し続ける。しかも65歳以上単身世帯数に注目すると、2005年17万世帯、2020年31万世帯、2040年38万世帯(単身者全世帯の43%)と、高齢単身世帯数は増え続けるという。

人口変動はほぼ予測に近くなると言われるが、需給バランス崩壊の悲観的予測が多い昨今の賃貸マーケットの中では、特徴的なポジティブデータが見えておもしろい。

人口増加・世帯数増加を背景にやみくもな投資がなされてきた賃貸住宅業界は、今後の日本人の暮らしを明確にイメージした経営が求められている。

(家主と地主 2020 12月号 連載記事より)


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