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ユタ州の中国語新聞でのリンヤンコラムコラム『八卦掌とは』

 2024年4月号の「東方報」でのリンヤンコラム。今回は八卦掌について書きました:『八卦掌とは』。日本語に翻訳したものをここで載せます。

 今年、中国中央テレビの春節の夕べ、ここユタ州での中国人春節の夕べ、そのどちらにも八卦掌が登場しました。名前は同じ八卦掌ですが、その性格と風格はまったく別のものです。

 中央テレビの番組では、八卦掌の特徴的な動きを取り入れ、ダンサーによって繰り広げられる、見る人を楽しませるための「舞踏劇」になっていました。 (下は、その表演)

 ユタでのものは、日常的な稽古を抜粋して再現しています。見ての通り簡単な動きで、ダンサーでなくてもたやすく学ぶことができます。そこに現れているのは、真正な伝統武術の姿です。(下は、その表演)

 太極拳に比べ、八卦掌の認知度はまだまだ低いです。ユタでの春節の夕べの演技が終わった後、出演した私たちのメンバーから聞ました。彼は、何人もの友人からいわれたそうです、「おめでとう。あなたたちの『太極拳』の演技は、本当にすばらしかった」と。皆さんの理解の手助けになればと思い、今回は八卦掌と尹氏八卦掌について紹介させていただきます。

 「渾圓の一気 天涯まで走り 八卦の神功 是れ我が家なり」清朝の咸豊年間、一代の宗師・董海川が生まれ、北京で八卦掌を伝授しました。その武芸が優れていたため、名声が大いに上がり、弟子は数千人に達しました。その高弟・尹福は八卦掌の精髄を極め、かつて清朝皇宮の武術師範を務めました。尹氏八卦掌は「牛舌掌」を掌の形とし、「冷弾脆快硬」をその特徴としています。映画「一代宗師」に登場する宮羽田のモデルは、尹福先生の高弟の一人です。

 ここまでの部分は、ユタ州尹氏八卦掌グループで学んでいる李涛さんが、春節の夕べに参加するに当たって書いてくれた説明文です。尹氏八卦掌の来歴と特徴を大変うまくまとめています。

 このコラムの前期の連載でも、中国武術は清朝でそのピークに達した、と書きました。三大内家拳は、形意拳→太極拳→八卦掌の順に相次いで誕生しました。私の師匠はいいました:最後に出現した八卦掌は、形意拳と太極拳の特徴を総合し、集大成する意義を持っている、と。またある人はいいます、八卦掌は習得するのがもっとも難しい拳法である、と。

 董海川の教え方はその相手によって異なり、決まった形式がありませんでした。このことが、後に多くの流派を生み出すことになりました。その中で尹福は、董海川を最初に師と仰いだ一番弟子でした。ですから、尹氏八卦掌は多くの八卦掌の中でも重要な地位を占めています。董海川は清の王族である粛親王府に使えていましたが、尹福の地位はそれより高い皇宮の武術師範でした。このことから、尹氏八卦掌は「帝王拳」あるいは宮廷武術と呼ばれます。尹福に紫禁城の任務を紹介したのは、私の師匠・王敷の外祖父に当たる典医・駱興元でした。私たち流派の伝承と尹氏家族との特別な関係が、おわかりいただけると思います。

 八卦掌は一人で練習することもできますし、二人で、さらには多人数で練習することもできます。以前私たちがユタの春節の夕べに出演した時は、二人でした。今回は老若八名がそろって出演し、剛柔を兼ね備えた力で、中国伝統武術の力強さを示しました。もし会場の広さが許せば、さらに多くの人が参加して「走圏」を体験し、雰囲気をさらに盛り上げることもできるでしょう。このような多様性と包容力が八卦掌の特徴でもあるのです。

 八卦掌の魅力が多くの人に認識され、皆さんを夢中にさせるであろうことを、私は確信しています。ユタの皆さん、八卦掌を理解し、学びたいと思われる方は、ぜひご連絡ください。お待ちしています。


『東方報』の原文


 
 



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