ミーターの大冒険 第七部 太陽系 第2話 ダニールの壮大なトリック
164第2話ダニールの壮大なトリック
ミーターの大冒険
第七部
太陽系
第2話
ダニールの壮大なトリック
あらすじ
ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。
人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。
R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。
はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?
ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。
その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。
ニフの起源と核戦争の事実であった。
イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。
ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。
残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。
イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。
それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。
アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。
ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。
ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。
ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。
さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。
そしていよいよ待望した太陽系に突入して行く。
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イルミナ それがそうだったら、都合がいいですね。アルカディアのご期待の大きな二つを一緒に応えられるんですから。それって一石二鳥って言うんですよね。
ミーター イルミナ、そんな軽い表現で、銀河復興の大役を言っちゃよくない。仮にも、その一石が「一流星」と言うのは当たっているけど二鳥というのは少し不謹慎じゃないのか。
イルミナ そうですね。ごめんなさい。また軽はずみでした。それでも都合がいいと思ったものですから。
ミーター そこだよ、イルミナ。キミって、必ず
ずれた表現する時に限って、なぜか究極のまとに嵌まる。言うなれば、事態を要らぬ方向から力を抜いた態度で接すると、物事の核心を衝く。ヤッパリ、その能力、例の「フィードフォワード症候群」というんじゃないかい。
イルミナ お褒め頂いて恐縮です。
ミーター そのことなんだが、一石三鳥という可能性もある。
一見、我らの使命、アルカディアの悲願の達成を目指して我らは必死に励んで来た。ところが、どうであろう、一方の不死の従僕も向こうから我々を引き付けて来た、とも言えるんじゃないのか?
いわゆる、答えというものは、答え自身の方で、答えられることを望んでいるのじゃないかい。
イルミナ そうですね。それって引力って言うんですよ。きっとそうに違いありません。それで、一石三鳥の三番目は不死の従僕に会うことですよね。
ミーター イルミナ、よくぞ言ってくれた。もしかしたら、一石四鳥かも知れないぞ。
イルミナ 一石三鳥の三番目が不死の従僕さんに会うことでしたら、一石四鳥の四番目はなんでしょうか?
ミーター うん、それなんだがなあ、我ら今までここに到達するまで、ずっと謎解きっぱなしだったと思わないかい。
いわば、銀河の歴史の結束点を抉じ開けてきたっていう感じだ。地球の位置や歴史的事実などをな。
そこで思い出したことは、ハニスさんからのメッセージだよ。
イルミナ なんでしたっけ?
ミーター 我らのあとでくる別動隊のメンバーに歴史学者がいるってことさ。たしか、ジャノヴ...
イルミナ ジャノヴ・ペラロットでしたわ。
ミーター そう、そう。ジャノヴ・ペラロット。
全銀河の歴史を掘り出す人物。
我らが不死さんに会ったら、もう不死さんとジャノヴ・ペラロットに、銀河歴史の問題は全部丸投げできるっていうこと。これで五つあるなかの四番目の使命をまず最初にクリアできるってわけ。
(おさらいしよう。アルカディアの六つの悲願
地球を探す
地球の放射能除染
不死の従僕に会う
銀河歴史の記憶消滅の再起動
4つのグループの結束
以上5つのプロセスで銀河を再復興できる)
この太陽系にこれからユックリと侵入して行く。そしたらどっかで不死さんと遭遇できるに違いない。
まずネプチューンの軌道内に入るんだ。それから内側をユックリと。
地球は太陽から三番目に近い軌道を回っているはずだ。そこに行き着けば、当然、ターゲットを見つけたんだから、一個目の使命はクリアだ。
三個目の使命は、不死さんに会うこと。
イルミナ それでは三個目と一個目は同時に達成できるっていうのね。
それで、ミーターさんの推理って、どうして不死の従僕は太陽系にいるっていう確信がもてたのですか?おおよその察しはつきますけど。
ミーター わかってんだったら、聞くな!
でも、教えて損なことはないから、折角だから教えてしんぜよう。
まず、不死さんの手法だよ。俺の謎解きとなる前提ともなるダニールさんの流儀だよ。
いわゆる「漸次的手法」だ。彼だって魔法を使うわけではない。ロボット固有の論理的思考を駆使する。
あのデニアドールの思考に接着できたおまえのフィードフォワード症候群だよ。おまえの機能にヒューミン(不死の従僕)は感応した。そして数多くの事実群から最適なものを抽出して流し込んだ。
またデマーゼル(不死の従僕)的トリックもふんだんに使う。
イルミナ 変幻自在の不死さんですこと。
ミーター 時間差を使った。それも途方もない時間差だ。ガイアのトリックを覚えているな。航海日誌とファー・スター2世号のデータの違いからガイアの存在がわかった。
コンポレロン人の無関心からかえって地球の実在がわかるように誘導した。
今度は、アルファの位置だよ。
メルポメイアは弱体化しつつあったスペーサー世界の覇権を握るためにアルファを殲滅しようとした。その焦りが、かえって我が身に跳ね返ってきた。アルファ人を全滅させるために開発したこけ兵器の自爆で自滅に陥ってしまった。
そう仕組んだのは誰だと思う?
イルミナ 不死の従僕さんっていうのね。
ミーター 最初にアルファ人は、アルファ・ケンタウリのA星のある惑星に地球から移住していた。そして不死さんは、メルポメイアの陰謀の実際投下の前にそれに気がつき、アルファ人を今のプロクシマ・ケンタウリの惑星に再度移住させた。メルポメイアはそれに気がつかないで、アルファ人がいない惑星を汚染させた、っていうトリックだよ。
イルミナ どうしてミーターさんはダニール(不死の従僕)さんがそういうことをしたとわかったのですか?メルポメイア人はその兵器を投下する前にその惑星に人間の姿を確認して上で投下したんではないのですか?
ミーター たしかに人間の姿はあった。
イルミナ それじゃ、どうやって?
ミーター ロボットをアルファ人に変装させておいたんだ。それが投下される寸前、ロボットたちは俊敏な動きで地表から回避したっていうトリックだよ。
イルミナ あらまあ!でもどうしてミーターさんは、それがトリックだとわかったんですか?
ミーター 不死さんは、以前に同じ手を使ったんだ。
イルミナ 同じ手ですって!
ミーター アルカディアの時代、ターミナスの時の政府はターミナスの繁栄を脅かす敵として第2ファウンデーションを殲滅しようと企んだ。ターミナスに潜入していた第2ファウンデーションのエージェントを捕まえて処刑までした。
それを察知したダニールさんは、念のためトランターにいた第2ファウンデーション員をコンポレロンにかくまい、ターミナスのエージェントたちの身代わりとして配下のロボットたちに変装させた。それでエージェントたちはからくも難を逃れたんだ。
この事件のトリックを何度もダニールさんは使った。それを銀河帝国が誕生するずっと以前、スペーサーのいた時代にダニールは実行した、というわけさ。
イルミナ なるほどね。相当回りくどいけど納得だわ!コンポレロン人の無関心と今度は大々的演技のアルファ撲滅事件ね。今度はド派手に太陽系の入り口はここだぞという大アピールね。なるほど!
Photo 銀河を反射する南米ボリビアのウユニ湖
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