別に速さを求めているわけではないのだよ

日英とも論理配列がほぼ固まってから3ヶ月くらい経つけど、速さで言ったら未だにQWERTYのほうが倍速い。

先日の論理配列まとめ記事に、やけに上から目線のコメントが付いた。
このコメントを書くためだけに作った捨てアカウントのようだ。
まあ暇な人も居たもんだで済ませてもよかったのだけど、最近長い文章を書くのをサボっていたので、記事のネタにしてみる。

書いてあることはあくまで私にとってはこう、という話なので、それは留意いただきたい。

実は薙刀式のベテラン(毎分300文字程度)よりも
JISかな入力で特訓した人の方が早いんですよね……。

Shiftや同時打鍵を多用する3段日本語配列は
速度と正確性の両立が難しいので生涯を共にするのはオススメしません。
薙刀式の歴が長い方でも8-10%は誤打しているという話も聞きますし。

自作の3段キーボードで日本語入力するとしたら
日英両立配列でローマ字入力するという当初の発想の方が良いのではないでしょうか。

元のコメントはまとめ記事を読んでくださる方の邪魔になるので削除した。

ん?ちょっと待て分速300字?
それは変換後?ローマ字換算のkpm?単純な打鍵回数?
変換後と仮定して、5分で1500文字って日本一レベルなんですがそれは。。。

まあ、うん。JISかなが速いから何なの?

私は別にタイピストではないし、文筆家でもない。
論理配列を変更するモチベーションは速さにはないし、速い配列が必ずしも良い配列だとも考えていない。

有名なタイピングコンテストでは事実上QWERTYかJISかな配列しか使えないわけで、速さだけを考えればQWERTY/JISかなが最速ということになる。
だけど本当にQWERTYやJISかなが良い配列なら、こんなにもたくさんの代替配列が出てくるわけがない。

それに入力速度だけを求めるならわざわざキーボードを使う必要すらなく、今なら音声入力という手がある。これなら分速400字だ。便利な世の中になったね。
思考の速度で入力できるデバイスは残念ながらまだ登場していないが。

だいたい、速さを求めているなら、50wpmを超えて60wpmに届きそうだったQWERTYでそのまま練習を重ねていた。
練習していれば今頃は100wpmも見えていたかもしれな…いやそれは無理か。
とにかく、それでも私はQWERTYと訣別した。

なぜ、慣れて速いQWERTYを今更捨てて論理配列を変更するのか。

楽だからだ。楽しいからだ。
MTGAPのインロールが、薙刀式の連接が、使っていて心地いいから使うのだ。
速さも正確さも、そんなもの使っていればそのうちついてくるおまけでしかない。

…まとめに載せた記事を読めば、私がどんな目的で論理配列を変更しているのか、少なくとも私がキー配列に速さを求めているわけではないことくらいわかると思うのだけど。

そもそもなぜタイピングを速さだけで評価しようとするのだろう。

手書きの原稿があって、それをタイプで清書していた時代なら、タイプが速いことはそれだけで価値があっただろう。
しかし現代は、下書きどころかそのためのメモからキーボードを使う時代。
考えながらタイプするなら、速さよりも言葉を文字にしやすいことのほうが大切ではないか。
薙刀式は物語を書くために編み出された配列だ。原稿をいかに速く書きうつすかを競う競技タイピングは、そもそも薙刀式の舞台ではない。

速くないから、正確でないから長く使うには向かないというのも理解しかねる考え方だ。
4行使って大きく動き回るJISかなや、特定の指に負担が集中するQWERTYのほうが、長期間の利用には向かないと思うのだけれど。

代替配列に手を出すきっかけで一番多いの、QWERTYで手指を痛めたからでしょ?

どうもこの人は薙刀式を腐したいようだけれど、薙刀式が指にも頭にも負担の少ない配列であることは使ってみればわかる。
もちろん合う合わないはあるにせよ、お仕着せの配列よりは確実に人間に優しい。
MTGAPもそうだ。人間にとって自然なインロールという動きで頻出の連接が入力できることがその魅力であって、速さを求めて採用したわけではない。

薙刀式は本当に楽なのか

ぜんっぜん楽です。すくなくとも今のところは。

日本語に限って考えよう。
薙刀式の考案者、大岡氏は打鍵効率に言及している。和文一音(1モーラ)あたり何キーの打鍵が必要かという割合だ。
たしかローマ字は1.7程度、JISかなは1.2、薙刀式は1.3くらい。
薙刀式はJISかなより8%、ローマ字は薙刀式より30%も多くのキーを打たないといけない。
これだけ見ればJISかなは薙刀式より楽なように見えるが、ことはそう単純な話ではない。

多くの代替配列の設計には、指の移動距離が考慮されている。
全てのキーがホームポジションから縦横1キーまでの範囲に収まっている薙刀式と、数字行まで使うJISかなの違いはここにある。
打鍵効率=打鍵コストではないのだ。

同じ1動作1文字のかな配列なら、指を遠くまで伸ばさないといけないJISかなよりも同時押しでカバーする薙刀式のほうが、全体として指の移動量は少なくなる。

寡聞にしてかな入力の比較ができるKLAのようなサイトは知らないのだけど、わざわざデータをとらなくても、4行も使う配列が3行より少ない移動で済むことはないだろう。

日英両用配列については、打鍵効率だけで話は終わる。
QWERTYだろうが大西配列だろうがConcordiaだろうが、ローマ字である以上、和文一音あたり1.7キー使うのは変わらない。
そこを改善するためのローマ字拡張という考え方もあるが、それでも3割減は難しいだろう。

文章を考えながら入力する場面においては、多少ミスタイプが増えたところでどうせ打ち直しが発生する。
コメントにあるように8~10%ミスタイプするのが真実だとしても、ローマ字に対する優位はまだ20%もある。3割を超えるようなら、それは単純に慣れていないだけだ。
JISかなに比べて移動コストも単純計算で3割少ないので、10%ミスタイプが増えるからといって何だというのだろう。

余談だけど、巷でよく聞く「かな入力はローマ字の半分の打鍵」というのは間違いで、せいぜい2/3くらいのようだ。

もっと速くて正確で楽なキーボード入力は、あるにはある

ステノを習得すれば、音声入力と同じ速度で入力できる。
和文ならソクタイプ。

習得するまでが大変だけどね。

速さなんてものはその程度なんだよな。
速く書きたいなら速く書くための道具を使えばいいだけだ。
ステノがまだ使えない私は音声入力を使う。

自分が使う道具くらい自分で選ぶわ

とにかくさ。
なんで見ず知らずの捨て垢に、俺が使う道具を指図されなきゃならんのだ。
しかもキーボードやタイピングに幾ばくかでも造詣があるかさえ怪しい。
あまつさえその根拠は伝聞情報だけだと?
こっちは自分でいろいろ使って試行錯誤してんだよ。
おととい来やがれってんだ。

配列沼は楽しいよ!!

この記事では薙刀式を至高とするような書き方になってしまったけれど、別に他の配列がすべてダメだと考えているわけじゃない。英文用の配列も然り。

MTGAPも薙刀式も、合わない人にはとことん合わないだろう。
たまたま、私にとって使いやすく楽な配列だったというだけだ。

それでも使っていく中で、この文字はこの場所がいい、このフレーズはこの動きがいいというクセみたいなものが出てくる。
ベースとなる設計の上に、自分専用のチューニングを施して、配列を育てていく。

キーボードの配列は究極に個人的なもので、画一的な基準で測れるような単純なものではない。
誰かにとってベストな配列が自分にとってもベストであるとは限らない。
物理配列も論理配列も、人の数だけ解があるはずだ。

気になった配列を片っ端から試すことで、自分がキーボードに何を求めているのかわかってくる。
左右交互打鍵を好む人はよく打鍵のリズムということを言ったりする。私には結局よくわからなかったけれど、なるほどそういう配列の作り方もあるんだな、と思った。

そういうのは突き詰めるともう書き癖のようなもので、理屈や数字で語れるものではないんだよな。
正解は自分にしかわからない。

配列沼はそういう意味で孤独な沼だと思う。
しかしだからこそ、キーボードを自作することの醍醐味が詰まった沼でもあると思う。

速さだけでは測れないキーボード入力の面白さが、配列沼にはある。

せっかく自由な自作キーボードの世界に足を踏み入れたのなら、一度は配列沼にも入ってみてほしい。
爪先だけでもいいからさ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?